第266話:イチゴ狩り〈その5〉
呆けながら皆の様子を眺める。俺はもう諦めた。何せ子ども組がどんどん俺にプレゼントしてくれるのだ。わざわざ自分からお菓子を探す気になんてなれやしない。
人気のないお菓子ばかりが山積みにされ、俺はそれを食っていく。わんこそばならぬ、わんこ菓子か?
しかし、そろそろ限界だ。先程はフルーツも食べていたため、もう満タンである。不意に桜井がやってきて、俺に向いて話し出す。
「柊さんは何を食べているのですか?」
「煎餅だ。桜井は……ドーナツか?」
「はい、色々な種類の小さなドーナツが入っていました。とても美味しいですよ。柊さんもお一ついかがですか?」
「あぁ、ありがとう」
桜井からドーナツを受け取る。既に満腹であるが、好きな子から頂いた物は別腹だ。ドーナツを口に含んでみる。今の気分にピッタリだ。次はスナック菓子がいい。誰か持ってきてくれ! 願いながら、桜井とお話だ。
俺達がお喋りをしていると、ちょこちょことシバルがやってくる。俺の前に立ち、プーと口から風船を膨らませる。風船ガムでも食べているようだ。
パチンッとガムが弾けて、シバルが泣きそうな顔をする。口にガムをくっつけたまま、俺のズボンに顔を埋める。むろん、俺は発狂だ。
「こら! 止めろ!」
シバルから遠ざかる。が、遅かった。俺のズボンにガムがべったり、シバルの顔にガムがべったり。うにょ~んと伸びて、橋を作っている。そこへ駆けてきたのがヒュプである。ガム橋に突っ込み、地面に着地だ。そして手を挙げ騒ぎ出す。
「一位!」
何がだ!? これは運動会じゃないんだぞ! お前まで汚れてどうする気か!? 桜井がティッシュを取り出し拭いてくれる。しかし、綺麗には取れない。まぁ、ガムなのだから仕方ないか。
ふと前を向くと、真剣に何かを凝視している青木を発見だ。青木の目の先にはお菓子袋。じ~っと見ていたら、不意に袋が動いた。何事か!?
ガサゴソ動く袋に目を向け、青木は眉をしかめている。恐ろしいので問いかけない。俺は見て見ぬ振りをして、置いてあるお菓子を口に含む。
のんびりと時間が経過し、ついに事件が訪れた。青木のいた方面から、突然に何かが飛んでくる。地面に着地したそれに目を向ける。
これはもしや……カップニャイスという奴か? 紙カップの中に猫が二匹、ダブルである。バニラ味とバニラ味、せめて片方違う味にしろよ。
カップニャイスの出現に、子ども組の目の色が変わる。図鑑を集めなければ! ヒュプがニャイスに飛びかかる。ニャイスは軽やかに回避し、お菓子のなる木の間を移動だ。
今度はウェスタがジャンプする。ニャイスを捕まえることはできなかった。ピーちゃんがニャイスの前に出て、通せんぼだ。ニャイスが他の方面へ移動する。シバルはあたふたしながらも、何かを取り出そうと必死だ。多分、図鑑であろう。
シバルが図鑑を取り出す間、他の子どもが走り回る。不意にウェスタがお菓子のなる木を押し倒す。こら、止めろ! 周りを見るが、未来はいない。また出かけているようだ。どうしよう!?
どんどん破壊されるお菓子のなる木。必死になりながら、ニャイスを捕まえようとする子ども達。それに対し、必死になりながら、子ども達を押さえようとする俺達。ドタバタドタバタ走り回る。
あ、ヤバい! お菓子のなる木を一本折ってしまった。しかし、周りを見ると、どこもかしこもボロボロである。春日井の掛け声に、桜井の悲鳴。ニートの怒鳴り声に、子ども組の騒ぐ声。
やっとのことでシバルが図鑑を取り出した。俺が取り上げ、ニャイスに向かって開いてやる。今日の俺は勇者だ。と思っていたら、本からニャイスが飛び出していく。どうしてだ!? ニートの叫び声が聞こえてくる。
「逆だ逆! 本を上下逆にしろ!」
「ほいな!」
俺が言って、本をひっくり返す。すると今度は、ニャイス達を吸い込みだした。ニャイスを全部吸い込んで、やっと世界に落ち着きが広がる。それにしても、えらいことになった。 辺り一面は争いの果て、荒れ地と化している。
沈黙する俺達の元に、上機嫌の未来が帰ってくる。何も知らない未来が俺達に口を開く。
「どう? お菓子は沢山収穫できた?」
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