第31話:お食事
家に帰ると、シバルの料理ショーが開始された。俺とちび共は歓喜を上げながら、シバルの料理の腕に見とれている。驚きのテクニックだ。料理人を間近で見たらこういうものなのだろう。それほどまでにシバルは料理が上手である。
ウェスタは椅子の上に乗り、ヒュプは俺が肩車をしている。シバルはというとこいつは宙に浮けるのだ、何でもありである。ヒュプを肩車しながら、俺は思わず言葉する。
「お前、死神を止めて、料理の神様になったほうがいいんじゃないのか?」
「そういうことができればいいんですけどね。神様の能力って生まれつき決まってるんですよ。もしもそれができるのなら、僕も死神なんてさっさと止めて、別の神様してますよ」
「凄く美味しそう、お腹空いたよ」とウェスタ。
「まだ? ねぇ、まだ?」
ヒュプがシバルを急きたてる。あまりにも美味しそうな料理が出来つつあるので、我慢できないらしい。俺も腹の音が鳴りやまない。よだれを垂らす三人に料理長が命令する。
「皆さん、お皿を用意してください。なるべく大きいのでお願いします」
もちろん俺達はそれに従い、お皿を用意する。こうして俺達はシバルの手伝いをしながら、徐々に夕食をこしらえていった。
どんどんゴージャスになる夕食に耐えきれず、ヒュプやウェスタはつまみ食いをしている。俺は二人を止めようとするが交互につまみ食いをするため、どうしても止められない。
シバルは笑いながら俺達の様子を見ていた。もちろん手は動いたままだ、常に料理を作り続けるその腕はまさに神の手そのものである。
レストランのような夕食が机の上に並べられる。少しボリュウムが少ないのはウェスタとヒュプによるつまみ食いが原因だ。
ウェスタにおいてはまだ口を動かしている。これでは、いただきますの前にお腹いっぱいになるだろう。それでもつまみ食いを止めないのはそれほどまでに美味しいということだ。
全員席に着き手を合わせる。直後に料理の取り合いだ。好きなものからどんどん取っていくウェスタとヒュプに注意しながら、俺も好きな物から平らげる。
シバルは俺達を眺めながらゆっくりと食事をしていた。思った以上に小食のようだ、俺達のように野生には返らない。老人だからであろうか、いや食事の代わりに良く喋るからかもしれない。シバルは一人で喋りながら食事をしている。もちろん、俺達はそれどころではない。目をぎらつかせて瞬時に料理を取り合っていた。
俺達は残り物なく綺麗に食べ終わると満足げにシバルの会話に加わる。ウェスタがシバルに口を開く。
「シバ君のお料理美味しかった!」
いつの間にか、シバルに対してシバ君というわかりやすいあだ名を付けていた。まぁ、メジャーなところであろう。ウェスタの言葉にシバルが照れる。
「いやぁ〜、こういう料理を作るのは久しぶりなので少々躊躇しましたが、なかなかいい出来になりましたね。これなら合格点です。いろいろ旅したかいがあったなぁ〜。僕も初めの頃はね、料理の神様に『あんた才能ない』って言われてたんですけど、長々と同じような失敗をしているうちに少しずつですが料理が作れるようになっていったんですよね」
「おかわり」
ヒュプがシバルに手を伸ばす。俺はヒュプに目を向け一言述べる。
「おい、まだ食べるのか? あんなに食べてたのに」
「おかわり!」
ヒュプの手は下がらない、口調が強くなっている、本当に食べたいようだ。腹を壊しても俺は知らないぞ。ヒュプの強引なおねだりにシバルが考え込む。
「でしたら、デザートでも作りましょうか」
「お前、そんなことまで出来るのか?」
感心する俺にシバルが話し出す。
「はい、デザートは得意中の得意です!」
シバルにしては珍しく一言だけ述べて椅子から立ち上がり、冷蔵庫を開いて材料を取り出す。何を作るのかと思っていたら、しばらくして喫茶店に出てきそうなチョコレートパフェが飛び出してきた。
俺とちび共は大喜びにパフェを囲む。これはまた食べるのがもったいないほどに豪快だ。しかし、食べないわけがない。ちび共に関しては既にスプーンを用意してパフェを突いている。俺もそれに参加しながら、シバルに顔を向ける。
「凄いな、これなら商品化できるぞ」
「いえいえ、滅相もない。チョコレートパフェに関しては僕の好物なだけですから。いえ、これがまたね、いろいろとおいしさを追求するのが大変で、何を入れたら重すぎず食べやすく飽きないチョコパフェができるのかって、一年近く試行錯誤しまして……」
シバルの独言を聞き流しながら、パフェを口にする。ちび共は満足したのか、和室に走り込んでいった、トランプでもして遊ぶつもりだろう。不意にシバルが口にする。
「あれ? 僕の分のチョコパフェは?」
「全部食った」
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