第29話:見える人
図書委員の名前を桜井優奈と呼ぶらしい。霊感の強い家系で生まれその中でも特に霊感が強かったのが本人だそうだ。霊感のある者でも見えない物が見える、それほどまでに力が強く、小さい頃からその力を認識していたという。
普段は何も見えないふりをしているが、小さい子どもなど害のない幽霊やその他もろもろに対しては手を振ったりして挨拶をするという。
前に俺がヒュプを図書室に連れて行った時に手を振っていたのは、俺にではなくヒュプに手を振っていたということだ。それを聞いて俺は納得した、同様に脚立の説明もヒュプに対してなのだろう。桜井が恥ずかしげに言う。
「まさか、柊さんも見える人だとは思わなくて、見えるって知った時は凄くうれしくて、話しかけようと思っていたのですが、柊さんってちょっとキツイ感じがして話しかけづらくて……」
「まずは顔を整形しないといけませんよね。後は言葉づかいを丁寧にして………」
「うるさい、黙ってろ、ジジイ」
俺はシバルの頭を軽く叩く。今は真面目な話なので本気で叩くわけにもいかない、こんな話の最中で倒れられたらこちらが困る。そして、俺が口を出す。
「それで桜井は昔からそういうのが見えるんだよな。じゃあ、神様ってのを見たのは初めてじゃないのか?」
「いえ、見えても話しかけたりはしないので、神様か幽霊か…そういう区別はわからないです」
「まぁ、変な物にとりつかれるのは嫌ですからね」とシバル。
「はい、シバルさんのおっしゃる通りです」
シバルの言葉に俺も納得して頷く。そりゃあ自ら悪霊にとりつかれたい奴なんていないだろう、俺も絶対に嫌だ。俺達が話をしている中にウェスタ達が駆け込んできた、ウェスタが口を開く。
「どうしたの?」
「この人もお前らが見えるそうだ」と俺。
「見える人!」
ヒュプが驚いている、ウェスタが嬉しそうに桜井を見る。
「見えるの? ウェスタ達が見えるの?」
「こんにちは、ウェスタちゃんってお名前なのね。私の名前は桜井優奈っていうの」
「ユウナー?」
ヒュプが首を傾げる。流石の桜井もちび共には敬語を使わないようだ。ウェスタ達には普通の言葉の方が理解できるであろう、俺もそれでいいと思う。そして、ウェスタが口を開く。
「ユウナ! あなたのお名前はユウナなの!」
「ユウナ! ユウナ!」
ウェスタとヒュプは桜井の周りを走り回っている、自分達のことが見える人間に会えて嬉しいのだろう。突然にヒュプが停止して桜井に言う。
「ヒュプ、ボクはヒュプ」
「ヒュプ君ね。今日から私とお友達になってくれる?」
「なる!」
「ウェスタもお友達、ユウナとお友達」
「ありがとう、これからよろしくね」
「よろしくー」
「よろしくなの」
ウェスタとヒュプが飛び跳ねて喜んでいる。シバルが腕を組みながらおもむろに口にする。
「これは驚きですね。たったの二日で、僕らのことが見える人間、しかも二人に出会うなんて。これは偶然と言うよりも必然に近いかもしれませんね。運命って言うのでしょうか? こんなことが起きたのは初めてです。感動しましたよ、僕」
俺はシバルの言葉を珍しく真に受けていた。偶然なのか必然なのか、運命なのかそうでないのか、神札の力により神様が見えるようになった俺に引きつけられるようにして少しずつメンバーが増えていく。こうした出来事の最後には何が待ち受けているのだろう。俺は雲を眺めて言葉をなくす。
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