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第239話:神光祭〈タテ編〉
 空中部門で何とか優勝。得意分野でこれほど苦戦するのだから、苦手分野はかなり厳しいな。そう思って歩いていたら、面白そうな試合を発見。一括部門。試合をする人達が一度にステージに立ち、全員が敵で戦い合う試合だ。

 フィールドは凄く広い。物は何もないから、隠れたりはできないけれど。何だか楽しそう。僕は登録を終わらせて、試合を見学する。初めはごった返していた戦いが徐々に落ち着きを取り戻す。

 残ったのは、五人程度。ここからまたごたごたが始まる。こういった戦いでは一時的にチームを組む人達が多い。戦いやすい上に、神力を無駄に消費しなくて済む。でも、味方も信用してはいけない。だって、優勝できるのは一人だから。

 熱戦の後、四人になり。一人が味方の不意打ちを食らって、離脱する。残り三人になり、厳しい戦いが始まる。

 試合を見ていて、一つ思うことがある。何だか凄く重そうな戦いだな。味方すらも信用できないって、ちょっとつらいかも……。試合選びを間違えたかなと思っていたら、決着がつく。

 仕舞ったなぁ~。もっとよく考えてから、行動すればよかった。今からキャンセルはできそうにないし。僕はちょっと億劫な気分になりながら、ステージに上がる。
 恨んだり、恨まれたりするのは嫌だから。味方は作らない事にしよう。一人で戦うのは厳しいけれど、その方がきっと気が楽だろう。心の中で誓って、戦闘の準備だ。

 そして、試合が開始される。まず、第一にするべきことは避けること。とにかく攻撃を避けることに専念する。余裕がない僕にはそれが精一杯だし。攻撃をしないで避けているだけの方が狙われにくい。それに、相手が僕の能力を分析できないという利点もある。

 足は地面につけて、空中には飛ばない。目立つことはしない。ひっそりと皆の戦いを見ているだけだ。何とか残り五人になるまで持ちこたえることができた。まったく攻撃はしていないし、隅で避けているだけだけど。どうにかなるものだね。

 強いのが一人の女性。すっごく強い。武器は神力で作った鎖みたいだ。相手の動きを封じて、絞めつけている。しかも、あの鎖……神力を抑え込む力があるらしい。なんて性質が悪いんだろ。捕まったらお仕舞いだ。

 そして見たことのある顔が一つ。『紅の流星群』を名乗っていた偽物。オルクスさんだ。何だかんだ言ってオルクスさんも普通に強い。今の僕の力で敵うだろうか? 以前よりは断然に強くなっているはずだけど。

 二人が大暴れして、残り三人。え~、嫌な組み合わせだな。僕は小さくなりながら、二人の様子を窺い見る。不意にオルクスさんが僕に気づく。

「あ、お前は前に闘技場にいた奴だな」
「その通りだよ。よく覚えていたね」

 驚きだ。オルクスさんが僕のことを覚えていたなんて。言っちゃ悪いけど、物覚えが悪そうだったから。絶対に忘れていると思っていた。そしてオルクスさんが僕に質問をする。

「おい、お前。例の偽物の居場所を知っているか?」
「偽物は君の方でしょ?」
「何を言ってやがる! 俺が真の『紅の流星群』だ!」

 オルクスさんが怒鳴り散らす。オルクスさんの一言で観客が騒ぎ出す。『紅の流星群』という言葉に反応したようだ。僕は思わず声を出す。

「本物と戦ったら、君なんて歯が立たないよ。僕はこの目で見たんだから。君が手も足も出なかった化け物を、軽く倒していたよ!」
「バカみたい。『紅の流星群』なんて、ボクのお兄ちゃんの手に掛かれば、瞬殺だよ」

 鎖の女性だ。何だか腹が立つな。シバル様が侮辱されたみたいで……。すぐにオルクスさんが女性を睨む。

「女は黙ってろ!」
「何、それ!? ボクを何だと思ってるの?」

 二人が睨み合う。僕は身を引いて、小さくなる。どちらも強そうだし、何だかいがみ合っている。僕は目立たない場所から、漁夫の利を狙おう。そう思っていたら、二人が争い出す。戦闘が始まった。

 僕はとりあえず見ているだけ。というか、この試合が始まってから一度も攻撃をしていない。皆が勝手に争って、皆が勝手に倒れて行く。何だか恐ろしい現実を目にして、逃げ出したい気分。

 オルクスさんが切り込んで、女性が鎖で防御する。二人の戦いは凄まじい。女性はオルクスさんの隙を探しているようだが、オルクスさんには隙がない。今のところ、隙を見せずに戦っている。この女性が強いことをきちんと理解しているようだ。

 不意にオルクスさんの剣が輝きだす。神力を溜めて、一撃を重くするつもりだろう。剣を薙ぎ払い、女性の鎖にひびが入る。瞬く間に砕け散り、女性がすぐさまオルクスさんから身を遠ざける。

 しかし、オルクスさんは逃げる余地を与えず、女性に詰め寄る。そのまま剣を振り落とそうとするところ、またもや僕がやっちゃった。神力で槍を作って、オルクスさんの攻撃を防ぐ。あらら、どうしよう? オルクスさんが怖い顔で僕に話しかける。

「おい、お前。何様の……」

 オルクスさんが話し終える前に、僕の後ろにいる女性がオルクスさんを狙って鎖を放つ。見事命中。オルクスさんが吹っ飛ばされて、ステージ外へと飛んで行く。ステージの外に落ちたら、その時点でゲームオーバーだ。

 オルクスさんが敗北し、僕が安堵してしまう。どうして気を抜いてしまったのだろう? 後ろにはまだ敵がいたのにな。頭を思いっきり殴られて、僕のバリアーが破壊される。しかも、素手で女性に頭を殴られてバリアーが破壊されるなんて、情けないにも程がある。

 僕が振り返ると、女性が怖い顔をして僕を睨んでいる。どうして皆してそんなに怖い顔をするんだろう。女性が僕に怒りをぶつける。

「余計なことをしないでよ。ボクは君の助けなんてなくても、あんな奴に負けることないんだから」
「ごめんね。思わず、身体が動いちゃったんだ」

 僕は笑って、軽く謝罪する。助けて怒られるなんて、気分のいいことではないけど。抗ったところで勝てる相手ではない。一目でわかる力量の差だ。女性が審判の前に行って口を開く。

「ボクの負けでいいよ。助けてもらった勝ちなんて、大した価値はないから」
「今のシャレ?」

 余計なことを言ったら、鎖が飛んできた。そのままステージ外に吹っ飛ばされる。手加減はしてくれているみたいだけど、バリアーがない上に攻撃されるのはかなりきつい。……少し休もう。何だかこの試合で疲れちゃったし。僕は起き上がり、採点表を貰いに行く。
 

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