第27話:本選び
昼食が終わり俺達は四人で図書室に向かった。前はヒュプと二人だったのだが、人数が倍に増えている。このままいくと来週あたりは八人になっているのだろうか。それだけは避けたいと願う。
図書室へ着くと、ヒュプとウェスタが走り込んでいった。普通の子供であるのなら注意するのだが、人目に映らない神様なので、注意はしない。代わりにシバルが口を開いた。
「お二人とも走っちゃ駄目ですよ。それに静かにしないといけませんよ、ここは図書室ですからね」
二人にシバルの声が届いたかどうかは定かではないが、こいつが二人に注意を促すのは意外だった。年よりの決まりきった台詞なのか、それとも図書室に何か思い入れがあるのか。俺がそんなことを考えていると、シバルがカウンターを指差して言葉した。
「あれ? あの子は先ほどあなたが先生の質問を答えられなかったがために当てられた、可哀そうな女の子じゃないですか」
「お前が邪魔しなければ、俺は質問に答えてたぞ」
図書委員が俺に気づき頭を下げる。なんて謙虚なんだ、是非ともシバルに見習わせなければいけない。俺の心を読んだのか、シバルが口を開く。
「謙虚な方ですね、あなたも見習わないといけませんね」
「俺かよ……」
俺達はしばらく個人で行動することにした。ヒュプとウェスタは児童本のあたりに行き、シバルは小難しそうな本が並んでいる辺りで暇をつぶしている。俺はというと本を読むわけがないので椅子に座って休んでいた。
呆けている俺の所にウェスタとヒュプが走り駆けてきた。二人とも決まったようだ、ちゃんと一冊ずつ選んだ本を手に持っている。ヒュプが俺に本をわたして言う。
「これ!」
「おう、これでいいんだな」
「ウェスタはこれ!」
ウェスタも続けて本を差し出す。俺は二冊の本を受け取り了承する。
「はいはい、了解だ」
後はシバルであるが、どこに行ったのだろうか? 俺達が図書室を歩き回っていると、ばったりとシバルに出くわした。シバルは気まずそうに笑いながら口を開く。
「いやぁ〜、いろいろと迷いましてね。あれもいい、これもいい、って思っていたら、気が付くと両手いっぱいに本が積み重なりまして、それを戻すのに苦労して苦労して……」
長くなりそうな話を俺がズバリと両断する。
「で、どれにするか決まったのか?」
「はい、これにすることにしました」
シバルの差し出す本に目を向けた。それは生涯俺が読むことのないだろう、難解な書物である。俺は本を受け取り、カウンターへと進みでる。今に俺は雑用係になるだろう、これは予知ではなく、確定された未来だ。
妙な組み合わせの本を借りたので変な顔をされるのではないかと思ったが、図書委員は平然と貸出チェックを済まし、俺に本を手渡した。
「期限は一週間です。それまでに返却してくださいね」
お決まりの台詞のようだ、俺は頷き言葉する。
「あぁ、わかってる」
「あの……柊さんですよね? お隣の席の」
お決まりでない台詞が図書委員から発せられた。俺は動揺しながら首を縦に振る。
「え? あぁ、そうみたいだな」
「あの………」
図書委員が恥ずかしげに顔を落とす、そこにシバルが乱入する。
「告白ですか? 青春じゃないですか〜」
一瞬にして俺の顔が赤くなる。俺はシバルに眼を飛ばして睨みつける。俺の横ではウェスタとヒュプが本を欲しそうに忙しなく動いていた。俺は図書委員から顔をそらして問いかける。
「何だ? 俺に何か用か?」
図書委員が小さな声で話し出す。
「あの…ちょっと……その………放課後……少しお時間………よろしいですか?」
「へ?」と俺。
「あの…人のいな……いえ、その………屋上とかで……」
「はぁ」
「放課後の屋上ですか、告白スポットですね。ついにあなたにも彼女ができることに、人生ってわからないものですね〜」
俺はシバルの頭を上から殴りつける。瞬間的な動きには通り抜けの能力も反応しきれないらしい、シバルが頭を押さえながら地面にへたりこんだ。ウェスタがシバルの頭を撫でている、ヒュプはシバルの顔を覗き込んでいた。そんな中で俺が言葉する。
「え……放課後………屋上で?」
「あ、無理にとはいいませんよ……その……もし時間があれば…」
「あ……はい………了解です」
思わず敬語を使ってしまう。時間が停止しそうな空間でヒュプが声を出す。
「本ほしい」
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