第26話:昼食
どうにか時間をやり過ごし、昼食へと入る。ウェスタとヒュプは俺の隣でふざけ合っていて、シバルは俺の斜め右上に定着している、そこが一番落ち着くらしい。俺はというと机の上に突っ伏してしぼんでいた。半ば人生を諦めつつある俺にシバルが話しかけてくる。
「ほら、落ち込んでないで、お昼ご飯を食べましょうよ。僕が朝から一生懸命作ったお弁当がありますから、今日はお弁当を買いに行かなくてもいいですよ。皆のために全力を尽くして作りましたからね、とてもいい出来になりましたよ。これを食べて、元気を出して、残りの授業を乗り切りましょう!」
そう言うとシバルはどこからともなく弁当を取り出した、どこから取り出したのか問い詰める気力もない。俺は深くため息をつくと足に力を入れて立ち上がった。春日井が俺に話しかけてくる。
「タックン、弁当買いに行こうぜ!」
「俺はいい」
「え? ダイエット中?」
「いや、奇怪な出来事大量発生でお腹いっぱいだ」
「気にすんなって。美人な幽霊なんだからいいじゃん」
「全然よくない」
俺は扉へと足を向ける。春日井が俺の後ろで言う。
「どこいくの? 便所?」
「可哀そうな俺のことは放っておいてくれ」
「ちょ〜、タックン〜」
「ふられちゃったわね、春日井君」
大杉が春日井に話しかけていた、俺は二人の会話に入らずに屋上へと向かう。神様が三人もいるのに、こんなところで弁当なんて食えるわけがないだろ。俺は足を引きずりながら廊下を歩く。後ろからは呑気な神様一同が揃って笑い合っていた。
屋上へ到着すると、まずはシバルを縛りあげる。シャレではない、本気だ。ウェスタとヒュプが弁当を食べる中、俺はシバルに掴みかかりながら口を開く。
「お前のせいで俺の人生は台無しだ!」
「まぁ、落ち付いて下さいよ。そんなに熱くなると、頭に血が上りますよ」
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「ほらほら、怒ってないで、お弁当を食べましょうよ、ね?」
「話をそらすな! この死神野郎!」
俺がシバルを振り回していると、突然にシバルが俺の手から抜けてしまう。まるで空気のように俺の手はシバルを通過していた。
「必勝法です、こういう時に通り抜けって便利ですよね。絶対に相手からの物理攻撃を回避できるんですよ。この技は習得するのに結構時間が掛かりましてね、苦労したかいがありましたよ。僕の能力でベストスリーには入る便利さです」
俺は対抗するすべなく、地面へとへたり込む。それを見て、ウェスタが俺の口元にウインナーを持ってくる。
「はい、タックン。これあげる」
俺は押しつけられたウインナーを口に含み噛み砕く、次にヒュプがウェスタのマネをしようと俺の口元に卵焼きを持ってくる。俺はそれも食べて飲み込むと、ため息をつきながら弁当を手に取った。豪華な手作り弁当だ、今はその豪華ささえもむなしく感じる。俺が弁当を食べていると、ヒュプが話しかけてきた。
「本」
「本? あぁ、図書室のことか?」
ヒュプは一度頷くと、期待の目で俺を見る。図書室へ連れて行ってほしいようだ。ウェスタも話を聞いて面白そうだと思ったのか、俺の腕を揺らしてせがんできた。
「ウェスタも行く!」
「わかった、わかった。食べ終わったら図書室に行くか」
「わーい!」
ウェスタとヒュプが走りまわる、お決まりのパターンだ。シバルが腕を組みながら言葉する。
「本ですか、いいですね〜。僕も何か読みたいです。久しぶりの読書になりますね、何を読もうかなぁ〜」
貸出冊数が三冊までの図書室で、三人の神様が一冊ずつ本を借りたのなら、俺が本を借りるスペースはないようだ。俺は神様のためだけに図書室へと向かわなければいけないらしい。どちらにしろ本など借りないのだが妙に悔しいのは何故であろうか?
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