ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
番外編〈その36〉
 俺がちび共に叩きのめされた日の夜。コーヒーを飲みながら、ニートが何かを思い出す。携帯電話を取り出して、口を開く。

「そうそう、土産動画があるぞ。見たいか?」
「おお、是非とも見せてくれ」

 ニートが俺に携帯を手渡す。俺はニートから携帯を受け取り、再生ボタンをクリックだ。動画が動き出す。どこからともなくニートの声が聞こえてくる。

「あー、こちら緊急病院。現在、入院患者の様子をお伝えします」

 画面が動く。不意に画面に映るのは、抱きマクラを抱えながら気持ちよさそうに眠る大人シバルである。ニートの声が続く。

「はい、シバル君です。熟睡中であります。で、こちらが……」

 次に映ったのは、テディーベアのような可愛らしい熊のぬいぐるみ……に見える犬。プードルだったっけ? 小型犬である。それを抱えるのは未来。もの凄く楽しそうな顔をしている。どう考えても今から悪戯をやらかすつもりだ。

 ニートの声が聞こえてくる。

「トイ・プードルのクリちゃんです。では、未来さん、お願いします」

 未来が犬を放つ。犬はクルクルと未来の周りを駆け回った後、シバルにダイブだ。シバルの顔をペロペロ舐めて、喜びをアピールである。寝ていたシバルは仰天だ。半分パニックになりながら、騒ぎ出す。

「うわぁっ!? 何ですか!? 止めてください! やめっ……やっ……あぁ~」

 シバルが起き上る。辺りをキョロキョロ見回して、自分の足もとに目を向ける。そこには可愛らしい熊のぬいぐるみ。シバルの顔が一瞬停止する。
 『!?』みたいな顔をして、瞬きだ。そして、犬が喜びあまって、吠え始めた。

「ワンワンワンワン!」
「わー!?」

 シバルが発狂しながら、立ちあがろうとする。しかし、犬が足の上に乗っているため、立ちあがれない。シバルが泣きそうな顔で犬を追い払おうとする。そうすることで、犬が余計に喜びだす。遊んでもらっていると思っているのだろう。

 やっとのことで犬を追い払い、シバルが天井まで駆けのぼる。むろん、天井で頭をぶつけ。片手で頭を抑えながら、片手で天井を抑える。大人シバルが目を潤ましながら、怒りを発する。

「何なんですか!? 何ですか!? これ、何なんですか?」

 シバル、パニックである。ニートの声が聞こえてくる。

「落ち着け。これは犬のように吠える熊だ」
「ワンって鳴きました! ワンって鳴いたら、犬です!」
「大丈夫だよ。犬じゃなくて、熊だから」
「犬です! 犬は嫌いです!」

 未来の声に続き、シバルが言う。シバルは目を擦っている。泣いているのか? そして、シバルがぐずり出す。

「酷いです。何なんですか、あなた達は? 僕はただ昼寝していただけなのに、こんなことするなんて酷いです」
「柊達にお前が元気なことを伝えようという、未来の提案だ」
「せっかくだから、面白みのある動画にしようと思ってね。なかなかいいのができたよ」

 ニートの後に、未来が述べる。続いて、シバルが口を開く。

「嫌です! 駄目です! こんな格好の悪い所を見られるなんて!」
「そう思うのなら、降りてきて動画を削除したら?」
「犬がいます! それを向こうへやって下さい!」

 未来の言葉に、シバルが怒鳴る。泣きそうな声で騒いでいる。ニートが未来に口を開く。

「じゃあ、俺は先に行くからな。確か、向こうにメモリーがいたよな? あいつに話せば道を開いてくれるのか?」
「うん、そう。俺はもう少しシバ君をからかってから行くよ。じゃあ、シバ君、クリちゃんと一緒に遊ぼうね」
「嫌です! 動画を消して下さい! ニートさん、それを消して下さい! じゃないと、後で復讐しますよ!」
「すまん、最近の俺は耳が悪いから聞こえなかった」

 プツンッと暗闇だ。動画が終わった。俺はどうコメントすればいいのか? ニートがコーヒーを啜りながら、口を開く。

「面白かっただろ?」
「いや、どちらかと言えば哀れだった……」
「そうか?」

 ニートが首を傾げる。こいつも案外にやんちゃなのか? それにしても、病人に対してえらく冷たい病院だ。不意にニートに問いかける。

「おい、ニート。お前はどうしてシバルに会えるんだ?」
「どうしてって……道を開いてもらったからな。歩いて行って、会えました」
「シバル以外にも道を開ける奴がいるのか? それは神様か?」
「何だよ、面白い動画見せてやったのに。シリアスな展開に持って行こうとするなんて。まるで俺を見ているようだ。泣けてくるぞ、本当。つまらない奴だなぁ~」
「笑うのは全員が揃ってからだ。それで、どうなんだ?」

 俺の真剣さに、ニートが呆れる。ため息をついて、口を開く。

「お前、頭使えよ。未来が言っていただろ?『橋』がどうたらこうたらって。だから、『橋』の人達に頼めば開いてくれるんだ」
「だれが橋なんだ?」

 ニートが面白くなさそうな目で俺を見る。何でそんな顔をするんだよ? 口を尖らせながら、吐くように言葉する。

「どうして俺が調べ考えたことをお前に述べなければいけないんだ? 世の中の原点は情報だぞ。情報こそがすべてだ。少しは努力して情報を集めろ。俺は未来に怒られながらも、いろいろと研究してるのに……」
「俺達は友達だろ?」
「どうだか……。まぁ、いい。『橋』くらいは教えてやる。まずはシバルだ。これは知ってるよな?」
「そうなのか?」
「お前はバカか?」
「あぁ、バカだ。だから、わかりやすく説明してくれ」

 言ってから思い出す。そういえば、怖い三姉妹が言っていた。シバルのことを『橋』とかなんとか……。何のことかよくわからないが、成る程シバルは『橋』なのか。続いて、ニートが口を開く。

「で、未来だろ……」
「そうなのか!? じゃあ、未来に頼めばシバルに会えるのか!? でも、未来は会えないと言っていたぞ!」
「お前、黙って聞けよ! もう、なえなえだ。俺はもうなえた。お前は自分で努力しろ」

 ニートが立ち去って行く。え? 嘘!? 俺はニートに駆け寄り、頼みこむ。しかし、ニートは何も答えてくれない。寝ころびながら、テレビを見だす。
 俺がギャーギャー喚いていると、ヒュプが俺の足を掴む。あ、眠気が……。遠くからアニメのヒーローの雄叫びが聞こえてきた。

「ちび神」が面白ければ、投票お願いします。



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。