第24話:ガトリングトーク
二時間目の授業が開始され、とりあえず気まずい雰囲気からは脱出した。しかし、これは一時しのぎにすぎない。既に皆の中には俺の異常な行動が定着してしまっているのだ。すべては死神シバルのせいである。
俺は怒りを噛みしめながら、シバルに小声で話しかける。
「おい、どうしてお前らがここにいるんだ?」
「いやぁ〜、あの子達がどうしてもあなたに会いたいと言うので」
シバルはウェスタ達に目を向けて言う。ウェスタ達はというと、先生が黒板に書く文字を眺めながら笑い合っている。何がそんなに面白いのかはわからない。俺は右斜め前にいるシバルを睨みつけて言葉する。
「そうか、じゃあ、さっきの落書きは何なんだ?」
「いやぁ〜、あの子達がどうしてもあなたに日頃の気持ちを伝えたいと言うので」
「どうしてあんな余計なことを……」
「いやぁ〜、面白かったので、つい………」
思わず立ち上がりそうになる衝動を抑えて、黒板の文字を書き写す。怒りにより文字が雑になる。後で読みなおして果たして理解できるのだろうか、きっと無理であろう。
俺は黙して授業を受けることにする。こいつと会話をしていたらいつか発狂するかもしれない。無言になる俺を余所にシバルが一人で話し出す。
「そうそう、僕もあなたに用事があったのですよ。今日朝食を作っていて思ったのですが、あのキッチンでは料理をする上で色々と足りないものがありまして、それを買ってきてもらおうと思い、今朝あなたに食品を買ってくるように頼んだのはよかったのですが、何を買ってきてほしいのか言うのを忘れていたので、それをあなたに伝えないといけないなと思い………」
シバルの一人でガトリングトーク開始だ。俺は必死になって先生の言葉を聞き取ろうとするがまったく聞こえない。この死神はペラペラと喋り続け先生の言葉を妨害する、工事現場の音よりも迷惑だ。俺はシバルに注意を促す。
「静にしてくれないか」
「すいませんね〜」
その時だ、ほとんど話を聞きとれていない俺に対して、先生が指差し当ててきた。
「そこ、答えて」
何を? 俺の頭は混乱する。答えようにも質問内容がわからない。うるさいシバルの声により先生の声が阻害されたのだ、答えたくても答えられない。沈黙する俺に先生が言う。
「何だ、話を聞いてなかったのか? じゃあ、隣の人、代わりに答えて」
すまん、お隣さん。心の中で謝罪だ。後でこの死神を血祭りにあげるから許してくれ。俺は小さくなりながら、誓いを立てる。そして、俺の隣から声がした。
「すみません、ちょっと質問が聞き取れなくて……」
「何だ、お前もか。じゃあ、その横」
先生が次の生徒を指差す。俺は隣に目を向ける。シバルの声で聞こえなかった俺に対し、隣は何もなしで聞き取れなかったということは、それほどまでにぼんやりしていたのだろうか。俺の目の先の人物、それはいつぞやの図書委員である。
まさか同じクラスでしかも隣の席だったとは、俺は自分と係わりのない人間に目を向けない性質なのでまったく気がつかなかった。
図書委員は顔を赤らめて小さくなっている、質問を聞き取れなかったことへの羞恥心であろう、俺も気持ちがよくわかる。次の生徒が答えを出す前にシバルが言った。
「答えは、『物として長ぜざるは無し』ですよ。どんな物でも成長しないものはない、いい言葉ですよね〜。僕も万年平社員ですが徐々に成長しているんでしょうね。見えないところで成長するって素晴らしいじゃないですか」
「答えを知ってたのなら、もっと早めに言えよな……」
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