第22話:校庭に・・・
俺とウェスタとヒュプは三人揃って、いつものように布団で寝ることにした。シバルはというと、押し入れで寝るそうだ。こういう状況には慣れているらしく、押し入れを「幸せの箱」だとかほざきながら、襖の奥へと消えていった。
翌日、俺が目を覚ますと、部屋の中にクッキングな香りが漂っていた。またウェスタがとんでもない料理を作っているのかと思ったが、そうではないらしい。ウェスタはヒュプの隣でスヤスヤと寝息を立てている。香だけを嗅ぐと、腹が減りそうなくらい良い匂いだ。
何となく想像ができた上で、俺は立ち上がり、キッチンへと向かう。俺を出迎えたのは万年平社員のシバルである。
「おはようございます! やっぱり朝はおいしい朝食から始めないと力が出ませんからね、僕が真心を込めて作りました。久しぶりの料理だから腕が鳴りましたね。これでも僕は料理とか得意なんですよ。驚きましたか? まぁ、これだけ長く生きていれば自炊くらいはできないと困るんですよ。って言っても、別に神様は食べ物なんて食べなくても死なないんですけどね。でもやっぱり、美味しい物は食べたいですから………」
俺はシバルの朝の挨拶を無視して、席に座り、お箸を手に取る。机の上には素晴らしく旨そうな料理が並んでいた。俺は感心しながらも本人には礼を言わずに食事をする、礼を言わなかったのはシバルが嫌いだからというわけではなく、未だに一人で話し続けていたからだ。
食事を終えると、立ちあがり、登校の準備をする。
「おはよう、ご馳走さん、美味かった、行ってきます」
俺は朝の挨拶を一言で述べると、靴をはいて外に出た。後ろからはシバルの声が聞こえてくる。
「行ってらっしゃ〜い、帰りに食品を買ってきてくださいね」
駅へと向かい、電車に乗る。しばらくして、電車を降り、少し歩くと学校が見えてくる。こうやって学校を見ている限り、普段となんら変わりない。しかし、現実は俺の家に神様が三人も居座っているのだ。俺は喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、非常に迷うところである。
教室に入ると、平凡な日常を過ごす春日井が俺の背中を突き飛ばす。
「お・は・よぅ、タックン!」
「おう」
「神様からの贈り物はどうだった?」
「はぁ?」
俺は眉をしかめて春日井を見る、春日井は人差し指を天井に向けながら口を開く。
「だから〜、休日だよ、休日。大雨で休みになったじゃんか」
「あぁ、プールに行ってた」
「室内プール? 何で俺を誘ってくれないの?」
「俺の部屋で見事なまでに雨漏りしてたんだが、お前も来たかったのか?」
「マジで! 行きたかったなぁ〜」
こいつはハプニングが大好きなのだ。俺の部屋で神様が三人も住んでいると言えばどういう反応をするのだろうか、たぶん冗談だと笑い飛ばすのだろう。俺と春日井が駄弁っているところに青木がやってくる。
「雨漏りですか? それは大変でしたね、せっかく休みになったのに台無しじゃないですか」
「まったくだ」
俺が青木に同意する。それに対して春日井が異論を唱える。
「雨漏りって言ったら、お茶碗とかコップとか置いて、音楽合唱をするんだろ? そういうのを聞きながら、気持ちよく寝れそうなのに」
「じゃあ、お前は湿った空気の中で濡れた布団に入って寝れるのか?」
「そりゃ無理だ」
春日井は自分の意見をほっぽり出して首を振った。丁度チャイムが鳴り響く、一時間目が始まったのだ。俺達は席に着き、授業の用意をする。先生が教室に入ってきて授業が始まる。
しばらくして、先生が黒板に向いている間に、俺の机の上に丸めた紙くずが飛んできた。飛ばし主は大杉だ。俺は首を傾げながら、紙くずを広げる。そこに書かれていた言葉は以下の通りである。
『はーい、柊君、元気? あなたって案外人気者だったのね、意外だわ。何のことか気になるのなら、校庭に目を向ければすぐにわかるわよ。これ読み終わったら、捨てといてね、じゃあね』
俺はゆっくりと校庭に目を向ける、目に映る光景は残酷極まりないものだ。校庭には手を振るウェスタとヒュプ、そして笑顔のシバルである。がそれだけではない、校庭に大きな文字で書かれた言葉、それは。
『大好き、タックン! (柊拓海君)』
俺は大声を上げそうになるのを押さえて、机の上で頭を抱える。ウェスタやヒュプが漢字を書けるとは思えない。要するに犯人は一人しかいない、シバルだ。あの死神め、俺を社会的に抹殺するつもりだ、次に会ったら息の根を止めてやる。
俺はシバルに対しての憎悪を必死に抑え込み、黒板に目を向けた。
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