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第20話:ペットは死神
 驚いたのはウェスタの力だ。俺が玄関を掃除している所に、ウェスタが駆けてきて「お掃除、終わったよ」と言いだした。冗談だと思い、部屋を見回したら見事に掃除がされていた。流石清掃の神である。俺がウェスタの清掃場面を見ることもなく綺麗に部屋が片付いたのだ。
 
 俺がウェスタの清掃能力に驚いていると、ヒュプが駆けてきて口を開いた。

「ボクも」

 自分も頑張ったと言いたいのだろう。俺は二人の頭を撫でながら言う。

「二人ともよく頑張ったな。後は自分達を掃除しなきゃな、風呂にでも入ってこい。お疲れさん」
「タックンは?」

 ウェスタが俺を見上げて心配そうに言う。

「俺は後で入る。玄関の掃除がまだ未完成だ」
「ウェスタがお手伝いするの」
「ボクもー」

 二人が玄関を支配する。俺の行き場は奪われてしまったようだ。仕方がないので、俺は三人分の飲み物を用意することにした。独り言を口にしながら冷蔵庫を覗き見る。

「ヒュプは牛乳で、ウェスタはジュースか、俺は……茶でいいか」
「僕はアイスココアでお願いしますね。やっぱりお風呂上がりはアイスココアに限ります」
「そうか、アイスココアな………作るの面倒だな……」

 ではなくて……。即座に後ろを振りかえる。目線が下降し、黒フードの子どもが目に入る。こいつ誰だよ? 俺は思わず言葉する。

「お前、誰だよ! どっから入り込んだんだ?」
「玄関からお邪魔しました。あ、でも、扉は閉まってましたけどね。いやぁ〜、勝手にお邪魔するのは少々心苦しかったのですが、どうしてもお風呂を使わせていただきたかったので。こういう梅雨の季節って、お風呂に入らないと気が済まないんですよね。何だか気持ちが悪くて、夜の寝つきも悪くなりますし……」
「だから、お前は誰なんだよ?」
「あ、申遅れました、僕の名前はシバルと言います。死の守護神で、まぁ、俗に言う死神ってところでしょうか?」

 それを聞くと、俺は黒フードをつかみ上げて、玄関へと行き、扉を開けて外に投げ出した。

「今は不幸には間に合ってますんで、他を訪ねてください」

 それだけ言うと、扉を閉めて、鍵を閉める、もちろんチェーンも掛けてやる。ヒュプは首をかしげて俺を見る。

「誰?」
「新手の勧誘だ」
「勧誘って?」とウェスタ。
「何かを勧めてくる人」

 ヒュプが答える。俺はうなずきながらキッチンへと向かう。

「そういうことだ。飲み物を用意するから、終わったらキッチンに集合だぞ」
「はーい」

 二人が手を上げて返事する。俺はキッチンへと行き、三人分の飲み物を用意して椅子に座った。俺がのんびりしていると、例の黒フードがどこからともなく現れて言う。

「僕の分はないんですか〜、冷たいな〜」
「何でお前がいるんだよ?」
「だから、さっきも言ったでしょ? 僕は壁の通り抜けができるんですよ。それで、アイスココアはないんですか?」
「何で死神にわざわざアイスココアをいれてやらないといけないんだ?」
「呪い殺しますよ」

 俺は立ち上がり、アイスココアを用意する。それを見ながら、子ども死神が笑顔する。

「いやぁ〜、この言葉って説得力がありますよね。特に僕みたいな生死に関係ある神様が言うとさらに説得力が増しますよね。この言葉でどれほど救われたことか。前にもね、同じようなことがあったんですよ。かなり昔になりますけどね、あれはいつだったかなぁ〜」
「お前、少しは黙れないのか?」
「すみません、僕って黙れない口なんですよ」

 そこへウェスタとヒュプが駆けてきた、掃除は終わったようだ。二人は揃って口を開く。

「その人、誰?」
「シバルって名前らしい、死神をしているそうだ」

 シバルが口を開かないうちに話を終わらす。シバルは笑顔で二人に手を振る、その姿を見ていると子どもらしさが一欠けらもない。ウェスタとヒュプに風呂を勧め、二人が去っていくのを見届けた後、シバルに向いて質問だ。

「それで、死神が俺に何の用だ?」
「いえ、別に用ってほどでもないんですけど。ちょっと僕、今、寝床がなくて。部屋に泊めていただけたら嬉しいなぁ〜、みたいな?」
「みたいな? じゃないだろ。神様専用のホテルとかあると聞いたが」
「まぁ、それもいいんですけどね。僕はあまり好きじゃないんですよ、あの場所。何せ人が多いし、扱いは良くないし、妙に上下関係が激しくてね〜。神様も楽じゃないんですよ」
「そうか………で、何で俺の部屋なんだよ?」
「いや、まさか僕らのことが見える人がいるとは思いもよらなくて、つい……」
「ただのノリかよ。俺の部屋はすでに定員オーバーだ、他をあたってくれ」
「まぁ、待って下さいよ。どうせ、僕は壁の通り抜けができるから、追いだすことができないのは目に見えてるでしょ? それに三人だろうが四人だろうがそんなに変わらないですよ。ほら、ペットを飼う気分で置いておいてくれませんか」
「ペットが死神か」
「いいじゃないですか、最新のペットです」

 俺は否定も肯定もせずに、和室へ向かい寝転がる。もういい…なるようになれ。

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