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第166話:文化祭〈その2〉
「か〜すがいレンジャー、正義のみ〜かたぁ〜。レッド!」

 『ブルー!』なんて言うか! 舞台の上で大声を出しながら歌を歌う春日井の頭を俺が殴る。墓穴どころの話じゃない。初っ端から大間違いだ。しかし、観客には受けたようだ。笑い声が会場内に広がる。

 俺が春日井に小さく呟く。

「解説があるまで黙ってろ」
「つまんないのん」
「うるさい!」

 そして、解説が流れ出す。

『とある国に美しいお姫様がおりました。ある日、強大な力を持つ魔王がお姫様をさらって行きました。どうしてさらったのかわかりません。とにかくさらって行ったのです。お姫様を助けた勇者には、お姫様との結婚が約束されました。これを決めたのは王様であり、お姫様の人権はありません。可哀そうなお姫様を魔王が返しに来たらどうなるのでしょう? お姫様と魔王の結婚が約束されるのでしょうか? その辺りの設定もあやふやです』

 あれ? こんな話だったか? 俺が首を傾げていると、恐ろしい言葉が聞こえてくる。

『尚、解説はニートがお送りします』

 うぉい! お前、何やってるんだよ!? 発狂寸前になる俺を無視して、話が次へと進み出す。

 ニートの解説の後は、俺達の会話が始まる。春日井の台詞忘れにより、ほとんど俺が一人で喋っている状況が続く中、頭上のライトが狂い出す。
 スポットライトの位置から、未来が飛んできて舞台の裏から中へとやってくる。俺達のいる方とは反対側に現れ、ライトを見上げる。

 どうにかしたいが、今は本番なので手の付け様がないのだろう。じれったそうにしている。不意にジャンプし、宙を回転しながら、天井にある丈夫そうな鉄棒に捕まった。そのままくるりと回り、棒に座る。ゆっくりと前進して、ライトの様子を窺う。

 まさかこんなふざけた舞台の裏で、こんなビックリイベントが起きているとは誰も思わないだろう。こっちを舞台にしたほうが、格好がつくかもしれない。未来がライトを修繕していると、舞台が次の段階へと進みだす。

 勇者一同が魔物に襲われるシーンだ。俺達は安っぽい剣を大きく振るう。魔物の大群を倒していると、勇者の死角から魔物が飛び出てくる。

 ここで謎の人物が勇者を助けるのだが……何とタイミングよく未来が降ってきた。謎の人物ではあるが、予定とは大きく異なる。未来が蒼白しながら停止している。自分でも降りるつもりはなかったのだろう。落ちてしまったのだ。

 動けない未来に春日井が口を開く。

「これは、ご近所の電気屋さんじゃないか! どうしてここに? こんな所にいると危ないぜ」

 お前の頭の方が心配だ。なぜに電気屋さんなのか? 確かにライトは修復していたが、それは裏方での話だ。もう少しマシな言い訳を考えろよ! 俺が心の突っ込みをフルパワーで活用していると、未来が春日井に向いてゆっくりと返答する。

「で、電柱の工事を頼まれて……」

 こうして勇者一同に電気屋さんが加わったメンバーで魔王の城に向かう。電気屋さんは今にも泣きそうだ。どんよりオーラをかもし出している。

 山を越え、川を越え、盗賊に捕まり、いろいろしているうちに魔王の城へと辿り着く。魔王の城前に来て、勇者一同が腕を組む。どうやって城に入るのかを考えるためだ。

 真のストーリーでは、電気屋さんの代わりに魔王直属の部下が味方に付くのだが、現段階では既に的外れな話になっている。本気でどうしたらいいのかわからない。

 勇者と俺が困っていると、電気屋さんが閃く。

「一ついい案があるよ。電気の点検という理由で、魔王の城に乱入してみたらどう?」
「それいいね〜」
「まぁ、それくらいだよな」

 というわけで、俺達は魔王の城をノックして、そのまま中へ入り込む。すんなり入れた。案外に緊迫感のない魔王の城だ。城の奥へと進み、魔王と姫を発見する。勇者が魔王に指を差す。

「よく来たな、魔王! 待っていたぜ!」
「お前が来たんだろ!」

 俺が勇者を殴りつける。既に勇者の付き人ではない、勇者の突っ込み役だ。もう役柄が変わっている。次は魔王の台詞。

 シバルが青木の隣で口を動かしている。台詞を教えているのだろう。しかし、青木は話さない。緊張で上がっているのだ。シバルが青木の前に来て、大声を出す。それでも青木の反応はない。シバルのことが見えていないのか。

 不意にライトが全て消える。真っ暗な会場にざわめきが走る。ガヤガヤ話し声が聞こえてくる中、ライトが点灯する。シバルの姿が消えている。青木は地面を見ながらうつむき加減だ。

 そして、青木が顔を上げ、俺と目が合う。赤い瞳に映るのはシバルの超笑顔だ。最終手段であろう。シバルが青木を乗っ取った。遥か遠く、会場からは見えない幕の後ろでピースするのはニートである。ライトを消したのは奴であろう。今回ばかりは怒らないでおく。

 青木様が見下し目線で、俺達を見る。

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