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第147話:デート〈柊視点2〉
 俺が後ろを振り向くと、死に物狂いでシバルのバリアーに剣を入れるバカに目が行く。何だか滑稽だ。思わず、笑いが込み上げてくるのでバカから目をそらす。

 前を向くと、何事もないかのように平然を装うシバルと、何も知らない今井だ。隣の桜井は後ろを気にしている。そりゃあ、気にもなるだろう。後ろには剣を振るう凶暴な野獣だ。もしも、バリアーがなければ、猛ダッシュで逃げているところである。

 後ろのバカは攻撃を止めようとしない。一人で地面にはいつくばっては立ち上がり、苦しそうな顔をしながら、俺達に向かって体当たりだ。

 こんなことをする暇があったら、どこかで訓練を積んでから、もう一度チャレンジしたほうがよっぽどマシであろう。しかし、このバカには思いつかない案らしい。元気に体当たりボンバーを繰り返している。

 桜井の買い物が済んだので、俺達は当てもなく放浪だ。不意に玩具売場にて、バカが先回りして、俺達の前に現れた。今井がバカに指を差し、口を開く。現在のバカはオープンモードであるらしい。

「あれって、アニメのコスプレかな? あんな格好をした人が登場するアニメなんてあったっけ?」
「あぁ、超マイナーなアニメで、あんな奴が登場していた。確か、そいつの名前は『オワッテル・ルックス』。略して、オルクスだ」
「誰が終わってるルックスだ! 人をバカにしやがって! まずはお前から始末してやる!」

 俺の言葉にオルクスが切れる。なかなか良い名称だと思うのだが、本人は気に入らなかったらしい。残念だ。
 切れるオルクスに向かって、ちびっ子共が集まり出した。今井と同じくアニメのコスプレだと思ったのだろう。

 ちびの一人がオルクスを突く。すぐにオルクスがそいつを睨みつける。するとちびが泣きだした。あ〜、やっちゃったな。
 一人のちびが泣きだすと、隣のちびまで泣きだして。わんわんと広がる涙の海。やってくるのは怖い顔をしたお母様方。母親の一人がオルクスに言う。

「ちょっとあんた! うちの子に何をしたのよ!?」
「何もしてないぞ。勝手に泣きだしたんだ」
「何を言っているの! さっき怖い顔で子ども達を睨んでいたじゃない!」
「何もしていない子どもを睨みつけるなんて、それでもあなた大人なの?」
「知るか! こいつらが勝手に近づいてきて、勝手に泣きだしたんだ!」
「さっき殺意のある目で子ども達を睨んでいたのは誰よ!?」

 何だか大変な事になってきた。俺達が呆然とする中、オルクスとお母様方の戦いがエスカレートしていく。不意にオルクスが片手を上げる。その手に赤い剣が出現だ。オルクスが怒鳴りながら口を開く。

「お前ら全員ぶっ殺してやる! 跡形もなく塵となれ!」

 それに対して、シバルが構えようとした直後、先ほどまで泣いていたちび共が騒ぎ出す。

「すごーい! カッコイイー!」
「剣が出た! どうやったの?」
「かっちょいいー!」
「すげー! 悪のヒーローだ!」

 悪にヒーローが存在するのか? よくわからないが、ちび共に集られて、オルクスが戸惑っている。ちび共は手を伸ばして、オルクスの剣を取ろうと必死だ。オルクスはそんなちび共に抵抗しながら、注意である。

「駄目だ! これはお前らみたいな子どもが扱える代物じゃない!」
「触らせて!」
「ちょっとだけ。ちょーとだけ」
「春香も触りたい!」
「ボクが先なの!」

 悪のヒーローが大人気だ。オルクスがおたおたしながら口を開く。

「本当に怪我するぞ。危ないんだからな。これは本当に切れるんだ。玩具じゃないんだぞ」

 先ほどまで皆殺しにすると喚いていた奴が言う台詞だろうか? 普通に考えたら、おかしな話だ。シバルを見ると何だか安心したようで、今井とお喋りしていた。お母様方は子ども達が泣きやんでご機嫌が戻っている。桜井に目を向けると、戸惑いながら首を傾げてきた。

「えっと……そんなに悪い人ではないみたいですね」
「どうだろうか?」

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