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第132話:闘技場〈その4〉
 戦う気のないシバルと森の中を散歩する。本当にここは戦場なのか? 勘違いしてしまいそうになるが、たまに爆音が聞こえてくるので戦場なのだろう。俺がシバルに問いかける。

「それで、『紅の流星群』って何なんだ?」
「あ、いえ、それは……」

 シバルが言葉に詰まる。俺がそのまま質問だ。

「どうせお前のことだろ? 隠してもバレバレだぞ」
「………」

 シバルが気まずそうな顔をしている。不意にシバルが口を開く。

「確か……僕が山で引きこもり、一人で修行をしていたというお話はしましたよね?」
「あぁ、聞いた」
「それで、どれだけ神力が上がったかを確かめようと思い。一度だけ、闘技場へ行ったことがあるんです」
「ほう……」
「その時のことなんですけど……。僕は一人で修行をしていたじゃないですか。だから、神力を比べる相手がいなかったんですね。僕は劣等生だったので、他の方々よりも力がないと思いこみ、必死に一人で修行したわけです。それで、闘技場へ向かったわけなんですけど、力加減がわからなかったんですね。まさか、僕が他の方よりも格段に神力が上がっているとは思いもよらず。気がつけば、あらら……という感じです」
「どうしていきなり本気を出すんだよ? 様子見をすればよかったじゃないか」
「いえ、闘技場の管理人さんが『この闘技場にはつわものが集まる』と言うので、手加減したら殺されるかと思って、つい……」

 『つい……』で、人を半殺しにしたそうだ。この死神は案外に恐ろしい。見た目以上である。照れ笑いをする子どもを目にして俺は言葉をなくす。

 俺達がお喋りをしている所に猛スピードで何かが飛んでくる。未来かと思ったが、そうではないらしい。素早い何かがシバルに襲いかかる。しかし、後一歩の所で跳ね返されて地面に転がる。投げだされた人物に目を向けると、ちびっ子だ。

 シバルの周りには赤いバリアーらしき物が見える。神力で個人的にバリアーを張っているのだろう。俺達がちびっ子に目を向けていると、勝手に立ち上がり口を開いた。

「ケルノの攻撃を跳ね返すとは、なかなかやるなぁ〜。今日からお前はケルノの手下だ!」

 可愛い声でシバルを指差すのは小さな女の子だ。ウェスタと同じか、少し小さいくらいであろう。ケルノという名前らしい。シバルがケルノを無視して、俺に向く。

「まぁ、こういう不意打ちもあるので、あなたにバッチを渡したわけです。こんなことが毎度の如く起きていたら、あなたはすぐに避難所行きですからね。それじゃあ、お話をする相手がいなくなって、僕もつまらないですし……」
「ケルノを無視するなー!」

 ケルノがシバルに襲いかかるが見事に跳ね返される。勝手に吹っ飛ばされて、勝手に頭を打っている。バリアーがあるので、強打しても痛くはないのだろう。立ち上がりが早い。俺が二人を眺めていると、ケルノが諦めて俺に向く。

「まずはこっちから倒すの!」
「ちょ、ちょっと待て!」

 俺の言葉を無視して、ケルノが飛んでくる。俺がピンチに陥っていると、俺の前にシバルが登場だ。シバルの手には赤い槍である。神力で作った物であろう。赤く輝く槍はファンタジックなイメージをかもし出している。

シバルが槍をケルノの前に突きつける。それに対して、ケルノはビビったのか、停止する。泣きそうな顔をするケルノにシバルが声を出す。

「この人には手を出さないでくださいね」
「………」

 ケルノは半泣きでぐずり出す。シバルはそれを無視して、俺に向く。

「僕達はこれからどうしますか? ここで待っているのも暇ですし。かと言って、未来さんを探しても、あの人は非常に動きが速いですから。あなたじゃ追いつけませんよね。僕があなたに入ってもいいのですが、それだと明日がつらいでしょうし……」
「隙ありー!」

 ケルノがシバルに向かう。もちろん、吹っ飛ばされる。バカなちびっ子に目を向け、俺が言葉する。

「おい、シバル。少しは構ってやれよ」
「構うと言っても、どうすればいいんですか? 戦いは嫌ですよ」
「戦え! ケルノと戦え! 戦わないと、弱虫だぞ!」

 シバルが首を傾げる中、ケルノが喚き出す。突然にケルノが両手を上げる。このポーズは何かが起きる前触れである。俺が不安げに周りに目を向けていると、ざわざわと森が騒ぎ出した。間を置かず、木々の中から先の尖った枝が俺とシバルに振り注ぐ。

 俺が叫び声を上げてしゃがみ込む中、シバルが槍を構える。俺の隣に立ち、飛んでくる木の枝を槍で払いのける。すべての枝が地面に転がり、シバルがケルノに目を向ける。

「森の神様ですか。幼いのにご立派です」
「ケルノの必殺技をかわしたよ……」
「恐ろしい必殺技だな……」

 呆然とするケルノに目を向け、俺が言葉する。俺の両手は頭の上だ。情けないが、これくらいしか自分を守る手立てがない。ケルノが両手を上げてシバルに言う。今度の両手は意味が違う。喜びの両手である。

「凄いよ! ケルノの攻撃を全部かわしたのはお前が初めてだ!」
「お褒め頂いて光栄です」

 シバルが楽しげに口を開く。俺がシバルに問いかける。

「このちびっ子で神様ランクはどれくらいなんだ?」
「そんなことはわかりませんよ。得手不得手がありますから。まぁ、神力で言えば、見た感じ年の割には強い方じゃないでしょうか? 大人の方には敵わないと思いますが……」
「そんなことないよ! ケルノは大人でも倒せるもん!」

 元気なちびっ子である。世間知らずは羨ましい。こんな奴にも俺は敵わないのだ。人間とはか弱い生物である。魔法でも使えたら、もっと格好のいい自分に出会えるだろうに。ため息を付く俺にケルノが口を開く。

「お前らは今日からケルノの手下だ! ケルノに付いて戦いに行くのだー!」

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