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第13話:図書室
 俺達は食事を終えると、学校の図書室へ向かった。ヒュプが読めるような簡単な本を借りようと思ったのだ。読書ならば静かにしているであろう、ヒュプも例外ではあるまい。

 図書室に入ると、独特な香りが鼻をかすめる。ちらほらと人の姿が見えるが知り合いはいないようだ。普段から図書室に来ることのない俺にとってここは異質な世界である。ヒュプがキョロキョロと辺りを見回している、見たこともない妙な空間なので少し戸惑っているのだろう。

 俺はカウンターに近づいて、係りの人に質問した。係りと言っても同じ生徒であるようだ、学校の制服を着ている、図書委員だろうか。メガネを掛けた、賢そうな女子生徒だ。

「すいません。小さな子ども用の本って置いてますか?」

 よくよく考えてみれば、児童本がはたして高校に置いてあるのだろうか。無理かなと思ったが、図書委員が笑顔で場所を教えてくれた。俺は親切な図書委員に礼を言う。

「どうも」
「高い所にある本を取る時は脚立をお使い下さいね。あ、脚立って梯子のことですよ。本棚の横にいくつか置いてあります。後、本は一度に三冊まで借りることができますよ」

 えらく丁重な図書委員だ。そんなこと言われずともわかっている。脚立の使用許可や借りれる本の冊数を教えてくれるのは理解できるが、脚立の説明まではいらない。そこまで説明するのはおせっかいというものだ。俺の隣でヒュプが手をあげて返事する。

「はーい」

 俺達は児童本の前に行き、片っぱしから本を開いた。ヒュプの頬は赤く向上しており、熱心に本を漁りまわしている、言葉を一言も話さず真剣だ。

 本選びはヒュプに任せることにして、俺は空いた椅子に座り、この光景を他の人間が見るとどうみえるのかを想像してみる。本棚にある本が突然に消え、しばらく経つと出現する。パソコンのバグでも見ている気分なのだろうか。異常な光景であることに間違いない。

 俺が欠伸をしていると、ヒュプが選んだ本を持って俺の前に来た。明らかに冊数オーバーの本に目を向け俺が言う。

「こんなに沢山は借りれないぞ。三冊までだとさっきの人が言っていただろ」
「これ」
「駄目だ。返してこい」
「ん〜」

 しばらくの間、ヒュプはすねるように口をつぐんでいたが、自分の期待通りにはいかないことを悟り、両手いっぱいの本を本棚へと返しに行った。俺が伸びをしながら待っていると、すぐに三冊を選んで帰ってきた。

 俺はヒュプの選んだ本を手に取ると、貸し出しカウンターへと進み出る。高校生になってまで児童本を借りるのには少々抵抗があったが、知り合いの子どもに読み聞かせるという言い訳を頭の中で思い浮かべながら、本をカウンターへと差し出した。

 先ほどの図書委員が本をチェックして俺に返す。

「はい、貸出期限は一週間です。それまでに返却してくださいね」
「あぁ、了解だ」

 俺はそう言うと、出口へと向かう。カウンターを振り返ると、先ほどの図書委員が笑顔で右手を振っている。おいおい、いくらなんでもそれはないだろ? 俺は赤面しそうな顔を図書委員から離してヒュプを見る。ヒュプは図書委員に向かって大きく手を振っていた。

「バイバーイ」

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