第114話:授業参観〈その1〉
蒼白しながら振り返る。教室の後ろには、腕を組んだ未来と子どもシバルにちび共だ。他にも沢山の親御さんが盛装な格好をして立っている。ここまで話せばわかるだろう。そう、今日は授業参観なのだ。
俺はついこの間まで授業参観など、どうでもいい他人事だと思っていた。というのも、俺の家では授業参観などに興味を持つ者がいなかったからだ。
両親は共働きであるために、時間に余裕がなく。姉貴だって仕事があるし、あの姉貴が弟のために時間を費やすとは思えない。
見に来る者がいなければ、授業参観などただの授業に変わりない。少々違いがあるとすれば、知らない人達が後ろに立っているくらいだ。それほどまでに俺には無関係の行事であったのだが、話を変えてきたのは未来である。
三日ほど前に未来が一枚のプリントを手に持ち、俺に近づいてきた。
「ねぇ、タックン。この授業参観って何?」
「生徒の親御さんが授業を見に来ることだ」
「そんなことわかってるよ。そうじゃなくて、これってタックンの学校だよね?」
「俺の鞄から出てきたのなら、そうなんだろう」
「これって誰が行ってもいいの?」
「その日だけは、学校もオープンだ。出入り自由のノーマークになっている」
そこで未来の顔が輝いた。俺は不安げな顔をして未来を見る。
「何だ? まさか、学校に来るつもりなのか?」
「当たり前だよ。それ以外に何かある?」
「来てもすることないぞ。授業を見ているだけだ」
「授業を見るための授業参観じゃない」
「授業参観ですか? いいですね〜。これでしたら、堂々と授業に参加できますし」
シバルが口を挟む。未来がシバルに振り向く。
「でしょ? 俺はタックンの学校に行ったことないから、少し気になってたんだ。どうせ暇なんだし、気晴らしに皆で遊びに行かない?」
遊びじゃないぞ。先生や生徒が真面目に授業を行っているかどうかを調査しに行くだけだ。決して、遊びではない。しかし、神様にとってはお遊びなのか、未来もシバルもはしゃいでいる。皆の楽しそうな雰囲気に釣られ、ウェスタとヒュプまでやってくる。
これだけ盛り上がった後に、止めておくなんてことはまずない。こいつらは必ずや学校にやってくるだろう。俺はため息をつきながら、両手を上げるウェスタ達に目を向ける。
そんなこんなで、こういうわけだ。俺の後ろには四人が控えている。シバルは子どもでオープンモードだ。というのも、以前に大人バージョンで授業を行っていたことがあるため、その姿では問題があったからだ。
シバルに話を聞いて意外に思ったことがある。神様は儀式を行い大人になったら、子どもには戻れないらしい。まぁ、儀式なしで子どもが大人になることも普通に考えたらありえないそうだが、シバルはハチャメチャな訓練で身に付けたそうだ。
大人になると、神力が子ども頃よりも増大し、子どもでは使えない能力が使えるようになるという。シバルの場合は一時的に大人になるため、神力が上がることも、ましてや新たな能力を使えるようになることもないらしい。
しかし、子どもの姿でも既に常識を超えた神力があるため、大人にならなければ使えない能力をほぼ極めているそうだ。こいつは神様の中でも、特に俺達の想像する神様に近いのかもしれない。
そこで思うことがある。もしも、こいつが儀式を行い大人になったらとしたら、一体どうなるのだろうか? もしかしたら、世界すらも破壊する能力を秘めているのかもしれない。考えるだけでも冷や汗が出そうだ。俺は首を振って、頭の中の想像を散らす。
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