第12話:眠りの守護神
四時間目に入り皆の集中力が切れかかった頃、ヒュプは教室内を歩き回っていた。俺の膝上で大人しくしていることに飽きたらしい。余計なことはしないと誓った上での徘徊だ、俺は安心しながら授業を受けていた。
先生が話をしながら黒板に文字を埋めていく、俺はそれを書き写し頭で理解しようと試みる。不意にヒュプに目を向けると、ヒュプは他生徒の前で何かをしていた。俺の頭に嫌な予感がよぎる。
時間もかけずヒュプの前にいる生徒が机の上に崩れ落ちた、眠ったようだ。ヒュプはそれを確認すると、次の生徒の前に行く。俺はヒュプの行動を止めたくても止めれない、それをすると俺が怪しい奴になる。パタパタと倒れていく生徒を見て、先生は心配そうに言う。
「あら、今日の授業はそんなにつまらないのかしら?」
おっとりした性格の永村先生だ。この先生は優しいことで生徒に人気がある。もしも、先ほどの石沢先生がこの状況を目にしたら、眠りについた生徒の命はないであろう、永眠だ。
ヒュプは春日井の前に来ていた。春日井はヒュプの手を借りずとも眠ってしまいそうだ、うつらうつらと身体を波打たせている。
ヒュプが春日井に手を延ばす。ヒュプの手が春日井に触れると同時に春日井の頭が机の上に落ち、教室中に鈍い音が鳴った。その音で他生徒が飛び起きる。春日井は眠りこけている、起きる気配はない。それを見ながら永村先生が言う。
「春日井君、大丈夫?」
「きっと夜中にエッチなビデオでも見過ぎて、寝不足なんですよ」
これはもちろん大杉だ。大杉の一言で教室中に笑いが広がる、永村先生が苦笑しながら口にする。
「あらあら、困ったわね。どうしましょう」
「放っておいていいですよ。どうせ授業を聞いても理解できないくらい春日井君は馬鹿ですから」と大杉。
ここでまた笑いが飛び交う。春日井以外の生徒は全員起きたらしい、春日井だけが眠ったままだ。ヒュプもクスクスと笑いながら、春日井を突いていた。
どうにか四時間目が終了し、昼休みへと入る。昼食は何にしようか。考えた末、いつも通り売店で弁当でも買うことにした。
ただし食べる場所はいつもと異なる、屋上だ。というのも、ヒュプがいるため、突然に弁当が消えたり、空になった弁当の箱が出現したりすると話が面倒だ。
一層のこと俺はマジシャンという肩書きで生きようか。そうも考えたが皆から注目を浴びることが好きでない俺にとっては選択しかねない。
必死になりながら食事をするヒュプに向いて俺は言う。今は二人しかいないので普通に会話をしても問題ない。
「おい、そんなに急いで食ったら喉に詰まらすぞ」
「おいひー」
「食いながら喋るな」
「ん〜」
ヒュプが口を閉じながら返事する。もう少しで授業が終わる。俺は残りの気力を振り絞り立ち上がる。ヒュプはモグモグと食べ物を頬張りながらも俺の動きから目を離さない、親に放っていかれないための子どもなりの注意だろう。
さて、残りの授業をどうやって乗り切ろうか? 俺は腕を組みながら考え、ある閃きに至る。
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