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第99話:除霊〈その1〉
 さて、夏休みが終わりを告げ、九月へと入る。シバルに毎日の如く注意をされていたため、夏休みの宿題が未完に終わることはなく、最後まで見事にやり遂げた。

 いつもは最終日に泣き泣き死に物狂いになりながら宿題に手をつけ、未完のまま学校に持っていき、友達に見せてもらうということをしていたが、今年に限りそのようなことをしなくても済みそうだ。

 俺が席に着き、自画自賛に耽っていると、そこへ青木がやってきた。青木が決心したような声で話しだす。

「柊さん、聞いて下さい」
「何だ? 恋の告白なら、他をあたってくれよ」
「かなり真面目な話です」
「一体どうしたんだ?」

 青木が語る真面目な話とは何なのか? 想像できない。不真面目な話はしない青木だが、真面目な話をわざわざ俺にするのだろうか? 俺は嫌な予感に浸りながら、青木の話に耳を向ける。青木が俺に口を開く。

「やっぱり僕は幽霊に憑かれているんだと思います。球技大会でもそうでしたし、この間の海でも意識がなくなりましたし」
「でも、普段は何ともないんだろ? それなら問題ないじゃないか」
「問題だらけですよ。幽霊に取り憑かれた後は、もの凄く体調が悪くなるんです。このままじゃあ、僕はいつか体調不良で死んでしまうかもしれません」

 青木が蒼白した顔を俺に向ける。俺は事情を知っているため、そんなに深く考えなくてもいいと思うのだが、青木にはそれがわからないのだろう。とても不安げな顔をしている。

 しかし、何と答えてやればいいのだろうか? 実は死神が乗り移っているんだ。なんて言ってみろ。青木の不安は治まるどころか、悪化するに決まってる。下手をすると、学校を休んで、部屋にお札でも貼って引きこもるかもしれない。いや、これは俺の場合か。

 腕を組んで考えこむ俺に青木が口を開く。

「そこで考えたんです。こうなったら、こちらから仕掛けてやれと!」

 どういうことだ? 眉をしかめる俺に青木が説明する。

「お祓いをしようと思うんです」
「はぁ?」
「今後、幽霊が乗り移らないようにお祓いをするんです。お祓いの方法は、いろいろとネットで調べました。それを総合して、僕のオリジナルお祓い法を行おうと思うんです。それを柊さんに手伝ってもらおうと思いまして」
「何で俺なんだ? というか、そんなことをして意味があるのか?」
「やってみないとわかりません。ですが、やらないよりは効果があると信じてます。柊さんに頼んだのは、そういう話に強そうだったので」

 信じたからといって、どうにかなる問題でもあるまい。俺が幽霊話に強いと思うのは、経験者だからであろう。過去の幽霊騒動の話である。経験者は語るというが、今は語れる物がない。何か言えと言われたら、神様の話になってしまう。既に幽霊とは別物だ。

 俺達が妙な話をしていると残りの三人がやってきた。春日井と大杉に桜井を合わせた三人だ。大杉が楽しそうに話に入り込む。

「何の話をしているのかしら? 凄く興味があるんだけど」
「面白そうじゃん! やってみようぜ、ハルトン除霊法!」

 春日井がヤル気満タンに口を開く。桜井は小さくなりながら不安げだ。多分、俺と同様で止めておいた方がいいと思っているのだろう。
 下手にこういうことをすると、妙な物が寄ってくると言うし。お祓いをしたからといって、死神が成仏するはずがない。本気で死神を祓いたいのなら、犬を飼うのが妥当である。

 俺と桜井が心配そうに見守る中、話がどんどんエスカレートしていく。いつの間にやら、俺達五人でお祓いをするということになり、話の区切りがつく。

 しかも、場所は俺の部屋だ。いつ俺が許可を与えたのか、まったく記憶にない。多分、大杉か春日井が勝手に俺の部屋を使おうと言い出したのだろう。せめて俺に聞けよ。俺は心の中でため息だ。

 学校が終わり、俺達は一度帰宅することになった。用意をしてから、俺の部屋に集合だ。今日は始業式なので、学校は午前中に終わった。時間に余裕はあるだろう。
 こういうときに限り、どうして学校が早く終わるのか? 今日くらいは授業があってもよかったのになと思いに耽りながら、帰宅する。

 アパートへ戻ると、ウェスタとヒュプがお出迎えだ。ウェスタが俺に口を開く。

「シバ君と未来がお出かけだって」
「お出かけ? どこへ行ったんだ?」
「おはなしきょーこーひろば〜?」

 ヒュプが首を傾げながら言う。俺は眉をしかめながら、聞き返す。

「お話きょうこう広場?」
「きょーこー広場? こーきょー広場?」

 ヒュプの首がどんどん傾いていく。倒れるなよ。俺はヒュプの首横に手をやり、倒れた時の支えを作る。そしてもう一度問いかける。

「もしかして、公共広場か?」
「そう!」

 ヒュプの首が元に戻る。俺の答えが正解だったようだ。しかしながら、『お話公共広場』とはどこのことを言っているのか? まったくわからない。

 俺は腕を組み考える。あの二人がいれば妙なことが起きてもどうにかしてくれると期待していたのだが、出かけているとなると、助っ人を頼むことも不可能だ。何やら怪しい雰囲気になってきた。

 とにかく、ウェスタとヒュプをどうにかしよう。俺は二人に向いて口を開く。

「今日、俺の友達がここへ遊びに来るそうだ」
「ユウナも?」

 ウェスタが楽しげに問いかける。俺は頷きながら返答だ。

「あぁ、桜井も来る。しかし、お前らのことが見えない人達も来るからな。お前らは大人しく押入れに入って静かにしておいてくれないか? 何やら妙なことをするそうだから、怪我をされると困るし。皆が帰ってからなら、大いにはしゃいでオーケーだ。しばらくの我慢だと思って、大人しく頼むぞ。この任務は失敗が許されない。諸君、わかったかね?」
「了解―!」
「わかったの! ミッション開始なの〜!」

 二人が手を取りながら、走りまわる。ゲーム感覚であろう。かくれんぼである。ゲームとなると、この二人は真剣に取り組んでくれそうだ。俺は少々安心しながらも、お友達組を気長に待つ。

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