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番外編〈その8〉
 お祭りを終えた数日後の話である。俺は神様組を連れて、ちょっとお高い個室のレストランに来ていた。

 未来は常にオープンモードであるが、シバルにもついでにオープン大人モードになってもらう。というのも、未来と俺の二人だけで個室のレストランに来ていると思われるのが嫌だったからだ。

 男二人で個室のレストランなんて気味が悪いではないか。店の人に怪しい誤解をされては気分も悪い。俺が説明すると、シバルは笑いながら了承してくれた。もちろん、ウェスタとヒュプも連れていく。

 合計五人、一人も欠けることなくレストランへと到着する。今回は俺達だけなので大いにはしゃいでオーケーだ。神様が見えない人に気を使うこともなく、のんびりと寛げる。もちろん、お代は未来の奢りだ。

 俺達はメニューに目を向け、注文をする。料理が来ると、お喋りしながらお食事タイムだ。ウェスタとヒュプはもぐもぐと口を動かしながら、次に食べる物に手を伸ばす。食べ終わってから取ればいいものの、それでは間に合わないらしい。

 シバルが相変わらず喋り続け、未来がそれに口を出す。俺は二人の会話を聞きながら、たまに質問を投げかける。

 こいつらとは常に一緒に行動するため、まったく気を遣わなくていい。凄く心が落ち着く。下手をすると、姉貴よりも心を開ける存在であるかもしれない。

 時間が経過し、追加メニューをした際だ。ウェートレスが食事を持ってきてくれた時に、後ろから何かが付いてきた。ウェートレスはそれに気付かず扉を閉めて去っていく。後に残したのは、ちびっ子一人である。

 俺はそのちびっ子に目を向け、眉をしかめる。ウェートレスが気付かなかったので、神様であろう。俺達が子どもに目を向けていると、子どもがヒュプの前に来て立ち止まった。ヒュプは気が付いていないらしい。食べることに必死だ。

 俺が止める間もなく、子どもがヒュプに手を伸ばす。同時にヒュプが子どもに振りかえる。その瞬間、ヒュプの顔が赤くなる。恋したわけではないらしい。ヒュプがろれつの回らない言葉で騒ぎだす。

「ろ〜ったわぁ〜。で〜れ?」

 何のことか? 意味はわからないが、一つわかったことがある。ヒュプの状態を見る限り、酔っている。そう、酒に酔っている状態だ。それを見て未来が口を開く。

「お酒の神様?」
「そうみたいですね」

 シバルが頷く。子どもはウェスタに近づき、またもや手を伸ばす。すると、ウェスタが大声を上げて笑いだした。流石のシバルも子どもを止めようと、子どもに近づき声を掛ける。

「こらこら、駄目ですよ。悪戯をしては」

 その時だ、子どもが不敵な笑みを浮かべながらシバルに抱きつく。もちろん、シバルの顔が赤くなる。シバルが地面に崩れ落ち、ぼんやりした目で宙を見る。ヤバい、この子どもは非常にヤバい! かなりの悪戯っ子だ。

 俺は子どもから遠ざかる。未来は平然としながら、食事に手を付けている。お前どうにかしてくれよ! 俺は未来に目を向けるが、未来はまったく気にしていない。子どもが楽しげに未来に近づく。

 ちょっと待て! そいつまでぶっ倒れたら、俺はこいつらをどうすればいいのか? 持って帰るには人数が多すぎる。俺が手のつけようのない状況に困り果てていると、子どもが未来に手を伸ばした。タクシーを呼ぶ準備をしなくてはいけない。

 俺は億劫になりながら、未来に目を向ける。しかし、未来は倒れることなく食事を続けていた。どうしてだ? 自分の時間を戻したのだろうか? 

 子どもが首を傾げて、未来にペタペタ手を付ける。しかし、未来は無視して料理に手を付ける。それが気に入らないのか、子どもが未来のコートを掴んで引っ張りだした。すると、未来が子どもに向いて、クールモードで口を開いた。

「俺を酔わそうとはいい度胸だな」

 未来の言葉にビビったのか、子どもが泣きそうな顔をして部屋から出ていく。諦めたらしい。俺まで巻き込まれなくて良かった。俺が酔えば、未成年の飲酒でヤバいことになるところだった。俺は未来に目を向け、口を開く。

「何でお前は酔わないんだ?」
「俺ってお酒に強いの」

 未来が笑顔で口を開く。その言葉に酔ったシバルが楽しげに反応する。

「違いますよ〜。その人は、本当はすっごくお酒に弱いんですけど〜、わけのわからない薬を開発して、無理やり強いことにしているんですよ〜。僕らの中でも薬中で有名ですもんね〜。お酒だけでなくて〜、他にも体力とか一般の人よりも………」

 未来が蒼白しながら、迅速にシバルの口を押さえる。そのままヒュプの前に持っていき口を開く。

「レッツ・ゴー!」
「お〜とぁ〜!」

 ヒュプが未来の命令に従う。ヒュプがシバルに触れた瞬間、シバルが静かに眠りだした。未来が気まずそうに俺に目を向ける。俺は躊躇いながら言葉する。

「聞かなかったことにするから」
「もう遅い………」

 未来がシバルに目を落とす。幸せそうに眠るシバルであるが、後で大変な目にあうだろう。自業自得と言うには可哀そうだが、こうなってしまえばどうしようもない。

 未来が不愉快そうに食事を再開する。俺は気まずい空気の中、沈黙しながら口を動かす。せっかくの楽しいお食事会が、お酒の神様のおかげで台無しだ。次回、改めてから、お食事会をやり直そう。ウェスタが爆笑する中、俺はため息をついてお茶を口にした。



 翌日の話だ。ウェスタとヒュプが頭を抑えながら気分悪そうにしている。二日酔いである。ウェスタがしんどそうに俺に向く。

「気持ち悪い……」
「………」

 ヒュプは下を向きながら黙っている。本当に気分が悪そうだ。そこへ未来がやってくる。未来は何やら怪しい薬を取り出し、ウェスタ達に手渡していく。

「これを飲めばすぐに元気になるよ」

 二人は未来の薬を口にして、十秒も経たないうちに、両手を上げて喜びを示す。

「治った!」
「凄いよ、未来のお薬! とっても元気になったの〜!」

 ヒュプとウェスタが同時に喋る。そこにシバルがやってくる。顔色は真っ青だ。こいつも二日酔いらしい。

「僕にも下さい。気分悪いです〜」
「死神にやる薬はない」

 未来がズバリと言ってのけ、シバルを無視して冷蔵庫へと向かう。シバルが気分悪そうに俺に向く。

「どうして未来さんは怒っているんですか? 僕が何かしたんですか?」
「どうしてだろうな?」

 俺はシバルと一緒に首を傾げて、考えるふりをする。シバルは昨日のことをすっかり忘れているようだ。罪な奴である。そんなシバルに未来が何かを投げつけた。

「さっきの薬。余ったから、捨てといて」

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