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気がつけばモンキーマン
菊水は今刑務所の中にいた。

執行猶予中の再犯という事で、実刑判決を喰らっていた。

菊水はこの刑務所に収監されてから、もう一年の月日を過ごしていた。

菊水は、炊場の強制労働が終わり、シャブで捕まった受刑者達と談笑していた。

最近この刑務所に入ったばかりの男が愚痴をこぼすかのように話しだした。

「あーぁ、まだ一か月かよ、先は長いなぁー、早くシャバへ出て、ルシアに会いたいよ」

菊水は、ルシアの名前がでてピクッと反応する。
すかさず男に聞き返していた。

「えっルシアって、彼女の名前がルシアっていうの?」

「違いますよ、芸能人のルシアですよ、ルシア知らないんですか?AV時代から俺超ファンで、ファンクラブにも入ってるんですよ、かっわいいすよぉ」

菊水は、身を乗り出して詳しく聞き始めた。


「AV時代は菊水ルシアって名前でAV辞めてからルシアに改名したんすよ、今大人気ですよ、映画にも出るんですよ、ちょうど今頃上映してるはずなんだよな、パクられちまってそれ見れないのが一番悔しいよ、
荒れてた少女時代の事とか本名でAV出てた事とかテレビでカミングアウトしたりして可愛い顔して凄い女の子ですよ、あっ菊水さん、えっ菊水…えっ、まさか妹だったりとかじゃないですよね」

「まさか違うよ、妹じゃないけど、そのルシアならデビュー前からよく知ってる」

男はびっくりして、菊水にデビュー前のルシアの事をいろいろ聞いてきていた。

刑務所の中にいる菊水は、ルシアがAVを引退してタレントとして活躍しているなんて知らなかった。
驚いたのは、菊水の方だった。

ルシアは、AVを引退し芸名を菊水ルシアからをルシアと改名しタレントとして
テレビや雑誌にバンバン出ていた。
映画に出演するほど売れていた。テレビで見ない日はないほど大人気のセクシーアイドルになっていた。

菊水は、ルシアを思い出している。
超ミニのギャル服でバーカウンターに座っているルシア
お台場デート、ルシアとのセックス。

菊水は、新入りの男にタレントとしてのルシアの事をいろいろ聞いていた。

あるトーク番組でルシアは西麻布のバーにプライベートでよく行っていると発言したらしい。
そのバーは、もちろん菊水が昔マネージャーをして働いていた店だ。

新入りのルシアの大ファンだという男は、その店で働けば、ルシアに会えると思い、店を探しだし飛びこみで面接に行ってバイトで働いていたという。

菊水は驚き、自分はその店で昔マネージャーをしていたと明かした。

新入りの男は驚きながらしみじみ話をしていた。

「あーそうか、だから川島さんあんなに怒ったんだ、なんとなくわかりましたよ」

菊水は、男がなにを納得しているのかわからない。

新入りの男にどういう意味か尋ねていた。

「いや俺バイトはいってる前の日にシャブやっちまって一睡もできなかったんで、バイト行く前に一発入れて行った事あるんすよ、そしたら川島さんと顔あわせたとたん裏に連れていかれて、お前クスリやってんだろ言われて殴られてクビになったんすよ」

菊水は無言で興味深く話を聞いていた。

「俺もキレちゃって、クビにするのはかまわねぇけど殴ることはねぇだろうっていって大喧嘩になったんです。川島さん、とにかくクスリやってる奴は大嫌いなんすよ、なんか相当辛い思いしたとか何かあるなって思ってたんですよね」

菊水は、神妙な顔つきになっていた。

川島は、菊水を慕っていた。
川島は、菊水と一緒に仕事できる日を心待ちにしていたのだった。

しかし、どこからか菊水が又捕まって刑務所に入っているという噂が耳に入り、薬、覚せい剤に対して異常なほど嫌悪感を抱いていた。
菊水を虜にした覚せい剤が憎くてしょうがなかった。


川島がマネージャーをやるようになってから西麻布のバーも六本木のガールズバーも飛躍的に売上をあげていた。来月は広尾にビストロをオープンさせるため、その準備に大忙しだった。

社長は、オペレーション部門を独立させ川島を代表に抜擢していた。
川島は、それに答えバリバリ働き業界では一目置かれる実力者になっていた。


菊水は、川島を思い出していた。

川島が一緒に仕事したいと熱く言ってくれた事、きつい言葉をなげかけられた事、川島の生き生き働いている姿が浮かんでくる。

菊水は、自己嫌悪にとりつかれた。

川島は、各店舗を確実に繁盛させて敏腕ぶりをあますことなく発揮している。業界では有名人だ。
ルシアは、今や映画にも引っ張りだされる売れっ子芸能人だ。


なんで、俺だけ…

なんで、俺はこんなとこにいるんだ

どこから俺の人生狂ったんだ
いつからだ
おかしい

俺の人生こんなはずじゃなかったのに…、

こんなはずじゃ…


シャブ?

シャブっていったいなんなんだ



しかし、落ち込んだ顔を新入りの男に見せるのも嫌で無理に強がった笑顔を見せようとする。

菊水は、ルシアの話に戻していた。


「ルシアさ、デビュー前だけど西麻布のバーにしょっちゅう来てカウンター座ってウーロン茶飲んでたんだよ、俺目当てで来てたんだぜ、ルシアとは、ふたりっきりでデートもしたし、俺の部屋に何回も遊びに来たことだってあるよ、スッピンも可愛いーぜ」

菊水はわざと自慢話のように語りだす。


「まじっすかぁ、いいなぁ、菊水さん、やっちゃったんですかぁー」

「フッフッ、さぁね…チュッチュッぐらいはあったかもなんてね、ハハッ冗談だよ、アハハハハハッ」

菊水は無理に笑いだす。

菊水は、必死に気分を変えようとしていた。


そこへ、この刑務所の中で菊水と一番仲良くしている男がやってきた。

菊水はこの男の存在に気づくと自然な笑顔がでた。


「おう、なんの話して盛り上がってんだよ」

その男がきて気分が変わり菊水に元気が戻ってきた。



「石山さん、シャバでても約束忘れないでくださいよ、真面目に働きますから頼みますよ」

「あー、こっちこそよろしく頼むぜ、上には話し通しておくからよ、菊水なら信用できるし、真面目に働きそうだしな」



菊水はこの一番仲良くなった男と、出所後の仕事の話をしていた。

この男と一緒に仕事をすると約束をかわしていた。



この男は、新宿の留置場で何も知らない菊水にいろいろ教えてくれた、ぼうずで目つきが悪く皆に背中を向けて座っていた売人の石山だった。

菊水はこの刑務所で偶然再会していたのだ。


石山と一緒に働くということは、売人として働くということだ。

菊水はシャバへ出たら、売人になる約束をかわしていた。


菊水は、初めて捕まった時のように反省して一から人生やり直そうなどとは、考えられなくなっていた。

夜の飲食業の仕事をしたいという考えもいつのまにかなくなり、売人になってシャブを売りさばき大金を手にする事を夢見ていた。


「石山さん、俺気合いいれてガンガン売りまくりますから、がっつり儲けましょうね!」

「あー頼むぜ」


菊水と石山の会話を聞いて新入りの男が会話に入ってきた。

「プッシャーってやっぱり相当儲かるんですか?」

「儲かんなきゃ、リスク背負ってまでやらねーよ」

石山が答える。


「そりゃそうだよな、俺シャブやって二年位だけど、留置場でネタ代計算したら百万ぐらい使ってましたよ、そんなに使ってると気づかなかったですよ、」

新入りの男は苦笑しながら話しをしていた。


菊水に問いかけてきた。

「菊水さんは、ネタいくらで買ってたんですか?」

「俺、金だして買った事なんか一度もないよ、ただでくれる女がいてさ」

「えーっ、まじですか!ただてくれる女ってどんな女ですか?」

「それがめちゃくちゃいい女だよ、胸はデカくてスタイルいいし、エロくて、うまくて、シャブはただでくれるし最高の女だよ」

菊水は、得意気に話していた。

「まじっすか!うらやましぃー、世の中にはそんな女がいるんですね、まるで、天使みたいな女ですね!」

菊水は嬉しそうな笑みをうかべながら答えていた。



「フフッ、天使か女神かって感じの最高にいい女だな」


菊水は、アヤカの事を思いだしている。

菊水は、アヤカが死んでしまった事など知らない。

菊水は、又アヤカに会えると思っている。



消灯時間になり菊水は毛布の中に入る。

菊水は、寝る前にいつも考える事がある。
ここを出てから一番最初に何をやるかという事だ。


それは、



この耐性の抜けた体に、たっぷりのシャブを静脈注射する。

耐性のないクリーンな体にシャブを打ち込み、全身であのシャブの快楽を味わう。

菊水は、シャブを打つことを、一番の楽しみにしていた。

早くシャブを打ちたい、だから早くここを出たい、そんな思いだった。

今夜も、注射器で自分の腕を突いている姿を想像していた。


注射器の中にシャブを入れる。メモリ10か、出所祝いで倍のメモ20だ。水を引いて溶けるのを待つ。腕を縛り血管にぶち刺す。
縦線を描き血が逆流した。あとはゆっくりと中棒を押してゆく。


数秒後に、天国へ連れて行ってくれる。


「あぁ…、シャブやりてぇ…」


心の中で、つぶやいていた。

早く本当のシャブを打ちたい。

そう思うと体が覚醒してくる。

菊水は全身がムズムズしてきた。

軽いフラッシュバックで気分が高揚してきていた。

やりたい衝動にかられていると、となりで寝ている男の寝息が聞こえてきた。
菊水も寝ようとする。

菊水は、ここを出たら真っ先にシャブを打とうと思っている。
耐性の抜けた体におもいっきりシャブを打つとどれだけ凄い快楽を味わえるのか楽しみでたまらない。

全身に血液の流れにそって行き渡る物凄いシャブの快楽を存分に味わう。


そのとてつもない快楽を味わう事を最大の楽しみにしながら刑務所生活を過ごしていたのだった。

シャブを打っている自分の姿を想像し、アヤカとキメセクをするのを心待ちにしながら瞼をとじた。


そして、静かに寝息をたて眠りについた。


菊水 晶


あぁ…



気がつけば


     モンキーマン
     (麻薬中毒者)


                     完


気がつけばモンキーマンを最後まで読んでくださった皆様本当にありがとうございました。
感想、メッセージを書いてくれた皆様、評価をしてくれた皆様、本当にありがとうございます。
書き続ける物凄い原動力になってました。
感謝の気持ちでいっぱいです。
気がつけばモンキーマンはこの章で完結です。まだ先の話ですが続編や番外編なども考えてます。

大事な事なんですけど、
この気がつけばモンキーマンは決して違法薬物、覚せい剤などを推奨する小説ではありません。
ダメ!絶対! 覚せい剤!

これを合言葉にいつの日か又お会いしましょう!


 それでは     


              ☆Ah~Ha~外蛇雲☆
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