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秋の大運動会〜1〜

「ぜ、絶対に嫌だ! 嫌だったら嫌だ! 嫌だよ僕は!」


 力の限り叫んだ。

 え? 何で叫んだかって?

 そんなの僕が苦手なことだからに決まっている。僕が苦手なこと、1つ運動。2つ、人より目立つこと。3つ、危険な思いをすること。今回はその3つ、全てが合わさったことだ。まだわからないかな?

 じゃあさらにヒント。今、3年生の二学期のはじめ。そう、空が高く上がって、入道雲と羊雲が入り交じり始める季節の変わり目だ。そして、そんな時期にある学校最大にイベントの一つと言えば……YES、秋の大運動会だ。え? 去年まで無かったじゃないかって? 僕だってそう思って安心してたよ! だけど、なぜか今年の生徒会役員は体育会系が多いという噂で……数年前まで合った体育祭を復活させると言う愚行を行ってしまった……。最悪、最悪だ。

 でも、そこまでは我慢できた。僕は普段から素行も良いとっても大人しい温厚な人物だからね、親友とは違って。けど、僕はこれだけは大声を上げて拒否をしなくてはいけない。僕の安定した体育祭のために!


「僕は絶対にならないよ! 棒倒しの大将なんて!」


 そう、僕は大正学園の体育祭メインイベント・棒倒しの大将に推薦されてしまっているのだ。しかも現在暫定1位……。

 え? 棒倒しはどんな競技かって? そうか、知らない人の為に説明しておこう。棒倒しはその名の通り、敵の棒を先に倒してしまった方が勝ちというルールの競技だ。数メートルの何本もの竹の棒を立て、それを倒しに行くんだけど……そこには血塗も良いところな大戦争となる。棒を倒す為に攻撃をする人と棒を立てる人を守る人がそれぞれ必死になって戦い合うんだ。そりゃあもう、殴り合いなんて当たり前、とにかく棒を倒そうと攻撃する人は棒へ一歩でも近づこうと人の肩に乗るし、守る人は棒に近づかせまいとタックルしたり、棒を倒そうとしてる人を引きずり落そうとする。もちろん、棒を立てている人も無事で済む訳も無く……。ああ、ルールを説明するだけでも恐ろしい。なのに……大将になったりなんかしたら大変だ!大正学園特別ルールでいくと、大将は騎馬戦の如くはちまきを巻かされる。そのはちまきをとられると、なぜか一本自軍の竹を取られてしまうことになるというのだ。ええ、大将はなぜか竹と同じ扱いですよ……。(絶対に作者が僕を苛めるため……ゲフンゲフン)

 というわけで、僕はそんな危険な役柄になんてなりたくはないんだ!


「そう言うなって山田くん」

「そうですよ山田先輩。山田先輩が大将をしないで、この赤組は誰が大将になるって言うんですか?」

「他にいるじゃない! 田畑くんとかイケル! ね? 田畑くん!」


 一縷の望みをかけて、田畑くんへ振った。

 数百人にも上る赤組全員の視線が彼へと導かれた。が、彼はそんな視線に気がつかないのか、下級生の女の子とメルアド交換を続けている。

(ちょ! 田畑くん!)

 再び赤組全員の視線が僕に突き刺さった。

 僕はしない、僕は絶対にやらない、僕は僕は……。


「ねぇ」

「僕はしないよ!」


 立ち上がりながら否定をした。


「違うわよ、大将は私がなっても良いわ」

「「え……?」」


 僕も、赤組全員も驚きの声を発して、その声を出した人物を見やった。

 視線の中心には……僕の親友・詩織がその美しい顔をクシャリとさらに可愛くさせながら微笑んでいた。

 思わず立ち上がる。


「ちょ、何考えてるの! 君は女の子なんだよ!?」

「あら? 大将は男じゃなきゃダメなんてルール規定はされてないわ。大正学園の棒倒しは男女入り乱れでしょ?」

「けど! 女子は女子の棒に、男子は男子の棒に行くのが暗黙の了解ってやつでしょ?」

「ええ。でも、女子が男子のところに、男子が女子のところに言ってはダメなんてルールも無いわ」


 皆唖然とする。僕もだ。

 けれど、僕の親友は頑固で、暴走気味。そして何より……。


「たとえ大将の私を白組の男子たちが襲いにきたって、護ってくれれば良いじゃない」

「ちょ!」


 反論をしようとした。

 が、委員長が僕の前に割り込んでくる。


「案外良いアイデアかも知れません〜。白組もまさか山田くんじゃない人、しかも詩織ちゃんを大将に持ってくるなんて思ってませんでしょうし…攻撃しにくいと思いますぅ」

「確かに! 詩織っちなら、運動神経いいから任せられるし、いざとなれば山田っちが護れば良いんだもんね!」

 

 さらに神無月さんまで追撃する始末。

 なぜか周りも「そうかも」「逆に行けるんじゃない?」「奇をてらってる!」なんて、詩織の意見に流され始めてしまった。

 思わず声を荒げる。


「ちょ。いい訳ないでしょ! 狙われるの分かっててさせるなんてできないよ!」

「じゃあユーヤがしてくれれるの? 大将」

「あ……う……」



 言葉に詰まる僕を見て、詩織がイタズラに笑みを浮かべた。


「お姫様は私。ユーヤはただ、私を護ってくれれば良いのよ」





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