次回予告は、吃驚企画への伏線 #1
並び替えのために、最新にしました。
腕を胸の上に当てる。
すると、柔らかで暖かな感触。そして長い髪が指先に絡まってきた。
ぼんやりと何も考えることなく、それを撫でる。絹糸のような滑らかな感触が心地いい。
(って、え!?)
上体を起こすと、ぼくの上で女の子が眠っていました。
「ひっ!」
(な、なんで!?)
声を上げると、昇り始めた朝日がカーテンの隙間から日の光を差し込んできて彼女の輪郭を露にしていく。形のいい唇、あまりにも整い過ぎた容姿。
上体を起こしたことに気がついたのか、長い髪がぼくの指先をスルリと逃げていった。
大きく目を開けると、彼女の瞼がパチリと開いた。
「ユーヤ」
「ユリア、ちゃん……?」
あまりのことに声がうわずった。
いつか学内で出逢った、詩織に天使と言わしめた金髪蒼髪の美少女・ユリアちゃんがそこにはいた……。
考えるよりも先に体が布団を飛び出し、膝と手を床に、おでこも擦り付けた。
「ぼぼぼ、ぼく全く記憶がないんですけどっ。なに、何かしましたっけ!?」
「………」
「ま、もし、もし何かしてたらごめ……」
「何を勘違いしているんだユーヤは。記憶がないなら何もなかったんだ。自分自身を信用しろ」
「そ、そっか。だよね」
記憶がないのだからそんなことあるわけない。
ぼくはお酒に関してはザルだし、昨日の夜だって早いうちに布団に入ったんだ。過ちなんてあるわけが……。
(え、じゃあなんでユリアちゃんが……)
「もう一度言う、私は何もされていないぞ。むしろされるのは……」
私は……?
青い瞳がぼくを取り込む。
真っ白な指先が鼻先を指した。
「お前の方だ」
ぽかんと口が開いた。
ぼくがユリアちゃんにされる? それってどういうこと?
実はおいしい展開にぼくは突入しているにだろうか? それはそれで……。
あらぬことを考えていると、察したのかユリアちゃんソッポを向いた。
「……そういうことではない。馬鹿者」
(あ、やっぱり?)
早々ぼくの都合のいいように世界は回ってくれない。わかってはいたけれど残念だ。
では、一体ぼくは何をされるというのか?
そういえば前に合った時はナオくんを殺そうとしていなかったっけ。ん? ってことは、次のターゲットはまさか……。
(ぼく!?)
せめて身構えようと思った瞬間には、目の前の彼女はぼくの指先を手に取っていた。息を飲む。銀の十字架のチャームが手の甲に当たり、冷たい。
体が縮こまった。
「怖がらなくていい」
「え?」
「しかし、お前は知らなくてはいけない。全てが本当で、全てがお前だということを」
意味が分からなくて首を傾げると、はにかんだ顔。
思わず頭に血が上る。
「ユーヤは他人のすべてを知っているか?」
「そんなこと……できっこないよ」
「そうだ。お前は何も知らない。親友だと思っている詩織のことさえ、全てを知らない」
「あ、当たり前だよ」
少しだけ、ムッとして反抗した。
でもそれって仕方ないこと。他人を100%理解するなんて無理だし、ずっと一緒にいるわけにはいけない。ぼくら人間には現在だけが存在するんじゃない。過去があるから存在している。その部分の時間の共有なんてできっこない。全てを知るなんて無理だ。
「では、お前自身のことはどうだ?」
「え?」
「自分のことを自分が一番理解していると思っているか? 実際に経験してきた自分自身だから、と。ならばそれは大きな間違いだ。しっているか? 人は悩んだ数だけ、人生が存在するんだ。思ったことはないか?「あのときこうしていれば」と。そしてその思いは他人のそれと複雑に絡み合い、新たな物語を生む。もちろん、そのとき互いの存在があるかどうかは別の話だ。まぁ私に関しては例外だが」
「それってどういう……」
「ユーヤさえ知らない自分自身がある」