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大学生時代〜ごめんね。でも愛してないわけじゃない #2〜

 気分が悪かったのなら、僕に言えば良い。前期研修は数ヶ月前に終わったばかりだけど普通に診れるし、処方箋だって必要ならば二宮先輩に言ってもらって来れる。僕に言わない理由がわかならない。

 -----本当は気分が悪いんじゃなかった…? じゃあ…

 詩織が僕に嘘付いた?

 一体何の為に? 

 僕が何かした?

 それとも何か至らなかった?

 なぜ、そんなすぐにバレるような嘘を…?


 すごくイヤな予感がした。だって、詩織は言い方悪いけど僕を騙すのがうまい、それはイイコトも悪いコトも。なのに、今回はの初めてわかりやすいもので…それは彼女が本当に体調が優れなかったから嘘をつくのさえうまく行かない程だったのか、それともバレても良い嘘だから敢えてなのか…。どちらでもいい。詩織が僕に嘘をついたのは事実な事で、何かしらの理由があったのは確かなのだろう。

 PBST洗浄をしながら考える。実験中に何を考えているのかって話だけど…仕方ない。聞いてほしい、僕は父さんから話を聞いた後詩織にメールを送っておいたんだ<今日、職員会議着てなかったって聞いたけど、どういうこと?>って。でも…数時間経った今でも返信はもらえなくて。不安になる。

 -----やっぱり体調悪いっていうより、何か違う理由がある気がする。

 なんだかそんな気がして来た。

 だって朝見たときは寝起きは確かにいつもより悪かったけれど、特に顔色が悪いという訳はなかったし…でも、前に比べれば確かに体力が…???

 次第に訳が分からなくなって実験の方もグダグダしてきた。


「よし!!」


 右手にピンセットを持ったまま、左手に携帯を出した。

 アドレスを開いて耳に当て、DAW(染色する液)をかけながら声を待つ。


『ユーヤ!!』

『しお…姉さん!?』


 バッと耳から携帯を離して画面を確認するが、表示されているのは間違いなく<詩織>と言う文字で…なぜ彼女の携帯に姉さんが出るのかと、またしても意味が分からなくなって頭の中がグルグルした。

 と、面食らう僕を他所に姉さんが変な事を言い始めた。


『ちょうど良かったわユーヤ、驚かないで聞いてほしいの』

『は? 何急に…』

『驚かないでって言ってるのよ。今、父さんに言われて貴方の家に行って、詩織ちゃんと今丁度病院に来た所なんだけど…』


 -----詩織…!?

 姉さんの口から大切な人の名前が出た瞬間、僕の思考回路が朝の父さんとの会話と繋がり、一気に血の気が引いた。と、同時に姉さんの鼻をすする音が聞こえて来た。弾ける不安に耐えきれず大きな声を上げる。


『詩織が、何!? どうしたの!? ねぇ!?』


 強く携帯を握りしめた。

 向こうで大きく息を吸う音が聞こえた。


『詩織ちゃんが、妊娠してるみたいなのよ』


 -----なんだ、そんなことか…よかった体調が悪いとかじゃなくて。……。


『んぇええええええええええええええええええええ!?』


 気がつけば自分でもビックリする程のデカイ声を出して叫んでいた。そしてパニックに陥る。


『え、何それ!? どういうこと!?』

『ウルサいわね!! 鼓膜破けたらどうするのよ!! どうもこうもないわよ、そのままよ』

『え、でも、だって…』

『何よ何狼狽えてるのよ。しっかりなさい、もうすぐパパになる身なんだから。全く、貴方ってば医者のくせに全然ダメね。自分が毎日見ている奥さんの変化にも気がつかないでよく医者なんてやってられるわよ、よく国家試験受かったわね。私なんて顔を見た瞬間分かったわよ。聞けば酸っぱいものが食べた言っていってるし、胃がムカムカしてるって言うし、妙に眠たいって言ってるし、体もだるいって…他にもその他諸々妊娠サインが出てるじゃない!! なんで気がつかないのよ、この鈍感!!』


 喝を入れられたけれど、僕はまだまだパニック状態で…先程のあまりの声の大きさに、研究室は勿論、隣の暗室から、冷蔵室から、先輩やら同期の人たちが何事かとすっ飛んで来ていたのも気がつかず、言ってしまった。口走ってしまった。


『妊娠って…僕は、僕は、ちゃんと避妊してたんだよ!?』

「『え!?』」


 DAW染色の液が真っ黒に染まり、みんなの声がハモった。



クリスマスに、小説UPします。

ただし諸事情により、時間制限ありの限定です。

詳細を知りたい方は“河合いお”の活動報告にて♪

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