大学生時代~召しませ*ツインズ~
「あ〜ぅ、ユーユ、ユーユ」
「あ〜ぅ、ユーユ、ユー!!」
「あ〜はいはい」
両手を伸ばして指の腹で体をくすぐる。すると「キャー」と同じタイミングで両手を上げて笑い始めた。
姉さんが、双子を出産しました。女の子の一卵性双生児で名前はラナとレナ。生後7ヶ月が経って話す事を最近覚えました。うん、ちょっと早いかな。一応“ユーユ”と僕の名前らしきものを叫んでいるのはご愛嬌、まだしっかりと発音までは出来ないみたいだからね。
ウリウリとホッペを触ってはアヤす。
-----それにしても遅いな。
今僕は自分の実家にいて双子の面倒を見ているんだけど、実は1時間前までは詩織と姉さんがいた。っていうか、入れ替わりだった。呼び出されて無理矢理こっちに呼び出してきて、僕の顔を見るなり二人は「ちょっと出掛けてくるからラナとレナをお願い!!」って言って世話を押し付けた。反論したかったけど、すでに初めから泣きじゃくっていた赤ん坊の声を放っておく事なんて出来なくて、仕方なく言われるまま受け入れた。ま、いいけどね。この子達、泣いててもそばに行けば人恋しいだけなのか泣き止むしさ。したい事だってもう言えるようになってきたし。
ポケッと双子の笑顔を見ていたら、
「ぷーぷ」
「ぷーぷー」
なんて言ってきた。えっとですね、これを日本語訳にすると「私たちは遊びたい、クマのぬいぐるみで」こう言う事です。はいはいと頷いてまずはおもちゃ箱から彼女達と同じ程の大きさのクマのぬいぐるみを取り出した。そのまま体に近づければ…
「「やー!!」」
はね除けられた。
-----あれ?
もう一度繰り返すとまたはね除けられる。どうしたいのか分からなくて聞いてみる。
「どうしたの?」
「でーで!!」
「でーでー」
どうやらベビィベッドから出てクマのぬいぐるみで遊びたいらしい。…なんて気難しいんだ。やっぱり姉さんに似てるなと二人を抱えて床に下ろした。すると真ん中に置いておいたぬいぐるみに一直線、物凄い勢いでハイハイを繰り出した。…ここは、KENさんに似たなぁと眺めていると二人はクマに乗っかったり腕を引っ張ってみたり鼻や目を摘んでみたり…とにかくボコボコにし始めた。と、ラナが振り返った。レナもこちらを向いた。
「「ユーユ!!」」
小さな指で僕を指す。
-----え!?
そしてクマをボコボコにする。意味が分からなくて観察していると、また彼女達はこっちを見て「「ユーユ!!」」と僕の事を指差して、かと思うとクマをフルボッコにした。
-----え、え!?
それって僕の事そのうちクマ見たいにするって言ってるの!? もう一度指を指しした後にボコっている双子を見た。
と、二人が同時に振り返った。そして今度は人差し指を立てる事なんてせず「「ユーユ!!」」なんて可愛い声を上げる事もせず…もの凄い勢いでハイハイしてきた。いやもう、これは走っていると言った方が良い。ハイハイで走ってる!!
いくらベイビー達でもクマみたいに目に指を入れられたりなんかしたら痛いに決まってる。それに最近二人は歯が生えてきたのを僕は知っている。噛み付かれでもしたら…。
グングン近づいてくる双子に恐れをなして逃げようとした時だった。玄関の鍵が開く音がした。
------チャンス!!
「ちょっと待っててね」
ニッコリ笑って戦線離脱。本来は迎えなんて要らない詩織と姉さんを出迎えに走った。その瞬間、ダムが決壊したかのように泣き始めた。姉さんと目が合って息を飲んだ。眉を上げる彼女にビクリと体が反応して次の衝撃に備えるため目を瞑った。
ポンと肩を叩かれた。
「ナイスよ!!」
「は!?」
一体何の事だか分からなくて立ち尽くすと、詩織が僕のジーパンを引いた。
「ユーヤは入ったらダメ」
「え!?」
「隙間から見ましょ?」
一体何を言っているのか、全然理解が出来なくてクエスチョンマークを飛ばした。
その間に姉さんがさっきまで僕がいた泣き声が大変な事になっている部屋に入っていった。追いかける詩織を追いかけると詩織がすこーしだけ部屋のドアを開けてコソコソ中をのぞき始めた。後ろに立ち、僕も覗く。
中ではギャンギャン泣きぎゃくる双子を立ったまま見下ろす姉さん。
と、姉さんが鞄の中をゴソゴソして、何やら取り出し、
「ラナ、レナ。見なさい?」
ビシっと突きつけるように2枚の紙切れのような物を赤ん坊に突きつけた。途端…泣いていた双子は
「「きゃ〜!!」」
と嬉しそうな声を上げてその紙に飛びついた。姉さんが手を離すと二人はそれをしっかり持ってハイハイし、自分達の特定の場所に持っていった(おもちゃ箱の前にあるラグの上が二人のお気に入り場所)。そしてペシペシしては眺めて、高い高いをするみたいに上に翳してみたりしている。観察していると、ついには端っこの方をヨダレにまみれさせた。
「成功ね!! 二人とも入ってらっしゃい」
「はーい」
言われるまま詩織は部屋に入っていく。だから僕も続いた。そして聞く。
「ねぇ成功って何?」
「ふふふ。泣いているラナとレナを黙らせる実験よ!!」
「は?」
「見てご覧なさい? さっきまで泣いていたのが嘘のように自分たちで遊んでるじゃない。もう、大変だったのよ。この子達を泣き止ませるの。一人が泣き止んでも一人が泣いてればまたもう一人も泣き出すし…。だから、どうにかしようと思ってたのよ。ね、詩織ちゃん」
頷く詩織を見て、だから部屋の外で観察するような事してたのかと理解した。
「で、どうやったの?」
「見れば分かるわよ。ほら、あの子達が持ってる紙、見てらっしゃい?」
促されるまま、双子に近づいた。姉さんと詩織が後ろでニヤニヤしているのさえ気がつかずに。
並んだお尻の後ろに膝をつく。
「ラナ、レナ。何をそんなにしんけ…」
すでにグシャグシャの、歯形の突いた、ヨダレでベトベトの物を見た。
息が止まった。
だけどその前の僕の声に反応を示して二人が振り返った。
「「ユーユ」」僕の事を指差して言う。「「ユーユ」」紙を指差して言う。
そう、その紙っていうのは僕が映っている写真で…
「その子達ね、貴方がいると絶対に泣かないのよ。だからその事を詩織ちゃんに相談したら写真でも良いんじゃないのかって言われてね、だから今現像してきたとこなのよ。」
「ユーヤが来るといっつもご機嫌だもの」
「これからは家を空けなきゃいけない時は絶対貴方ね」
「頑張ってね、ユーヤ」
二人の言葉は耳に入って来なくて、力の抜けた僕は…赤ん坊二人に押し倒され、もみくちゃにされた。
本日も遅らばせながら
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ついでに予告通り、「みら嫁」の裏話を本日も個人ブログ(あいおーにっき)の方でUPしていきます。
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