キレlife のうみつ共同作業(ユーヤ編) #7
「はぁー」
大きく息を吐き出し、武器をしまう。
そしてすぐさまチャットを打つ為にコントローラーを離した。そう、僕は謝らなくてはいけない。
<何やってんの!! このバカ!!>
<すみません、気がつかなくて…。漢起爆させちゃいました>※漢起爆…爆弾を自分の体で起爆させる。代償はHPが減る。
<すみません? それで済んだら警察いりません。童貞…死ね。爆発して木っ端みじんになって死ね>
<すみません…。回復させますから、クエスト終わったら斬ってもらってかまわないです>
送信した瞬間だった。詩織にそっくりなキャラが躍動して僕の事を切り上げた。
-----早!!
ズバっという音がして宙を舞う。立ち上がりながらアイテムからパーティを回復させる為の“粉塵回復”を使った。HPが上がるのを見つつ安堵する。
<お前、絶対に仕返してやる>
-----今したのに…
そうは思うものの、逆らったっていい事ない。
<仕方ないですね>
<仕返し、してやる byアキラ>
-----さっきしたのに…
ま、現実では痛くも痒くもないのだからいいかと楽観的に考えて返信を試みた。
<わかりました>
意外にアキラくんが男の子なのにチャラっていう言葉は持ち合わせていないのだなと、ちょっと末長にそういうところは似ているなと思った。
モンスターが逃げて行った場所へ行くと…そこはレオリウスの巣で、敵は横になって眠っていた。この行為はチャンスでもあり、早く行動をしなければいけない合図だ。つまりモンスターは相当な体力を失っているから、寝ているんであってあまりに放っておくと回復してしまう。しかし、寝ているのはこちらとしては好都合。近づいて行って弱点を思いっきり叩ける絶好の機会なのだ。
<アキラが「ユーヤが“爆弾G”二つ置け」って。さっさといけや、奴隷>
そこまで言わなくても行きますよ。寝ているモンスターの周りに爆弾を仕掛けるのは定石。
アイテム欄を開いてすぐに選べるようにしながらキーボードを叩く。
<援護お願いします>
すぐさま移動を開始して目が覚めてしまわないように背中辺りに“爆弾G”を2つセットした。あとは逃げて石を当てて起爆させれば勝手にダメージを与えられる。よしと、振り返って視点を切り替えた瞬間だった。すでにアキラくんは向こうの方にいて…もう目の前まで小石が飛んできていた。
------ちょ!!
これが二人の仕返しかと、漢起爆の代償かと、理解した時にはカッと小石が爆弾の樽にぶち当たり…爆発した。吹っ飛ばされる時間を使って一文字チャットする。
<ああああ>
<ざまーーーーー>
<ざまーー!!!!!!!! byアキラ>
僕の悲鳴に喜ぶ二人。フンと鼻で笑って立ち上がる。すると僕の動きに合わせてレオリウスも起きあがった。
ヤバいと走って逃げながら減った体力を回復させる。
銀の翼が画面の端で広がり、舞い上がった。同時に放たれる火炎弾。せっかく回復したそれが下がっていく…。振り返るとアキラくんが攻撃を繰り出していた。しかし恐れをなす事なくドラゴンは雄叫びを上げ、彼に向かって走り出した。首を大きく振り突進。吹っ飛ぶ体に半分以上減っていくアキラくんのHP。武器がしまわれた…
------自分で回復するなら…
今度は僕が相手になろうとダッシュボタンを押そうとした時だった。チャットの着信音が鳴り響く。
<ナナにジャックされた!! 回復!!>
-----んぇええええ!?
どうやらアキラくんはコントローラーをナナさんに奪われてしまったらしい。これは…致命的だ。どれだけナナさんが出来るかどうかは知らないけれど、彼の慌てよう…多分このゲームに関しては詩織と同等かそれに毛が生えた初心者程度。そんな操作で倒せる程、今回の敵は甘くない!!
すぐにアイテムを展開。“粉塵回復”をかける。緑色の光が僕と黒髪の少女を包んだ。
そしてすぐさま援護に回る為走った。
だけど先に走り出した子の背中には追いつけなくて、しかもレオリウスもこっちを向いてもう1度突進をしてきていて…
-----飛ばされる!!
途端、画面の中で僕以外の剣を抜く音が聞こえて…前を走る子が大剣を振り下ろした。それは奇跡に近かった。丁度頭に当たって、それと同時ドラゴンが悲痛の叫びを上げた。瞬間、画面の中央には<クエストクリア>の文字が出てきたのだ。つまり…偶然にもあと1発で倒せる所をナナさんが操作するキャラクターが仕留めたと、そういうわけだ。
銀色のドラゴンの首がしなって横倒れになり、ドスンと地面が鳴り響いた…。
呆気にとられてポカンと口を開けた。
<ざまーーー!! 男共!! 誰のおかげで倒したんだ?????>
-----確かに、トドメは君だよね。
開いてしまった口を締めながら、キーボードに指先を置く。
<ナナさんですね、おめでとうございます>
<感謝のきもーちーーーー!!! 足りなーーーーーい!!!!!!>
<ナナさんのおかげでクエストクリア出来ました、ありがとうございます>
<もっとだーーーーーー!!!!!! もっと私に感謝をーーーーーーーーーー!!!!>
ふぅとようやく倒した実感を味わいながらレスをする。
<ありがとうございました。倒したから、アイテム取れますよ^^>
<何、無視してるの!!! もっと私にかん>
-----ん?
またいつものようにチャットが来なくなり、キャラクターも動かなくなった。多分、また二人で何やらやっているのだろうけど。
<あれ…? …剥ぎ取らないんですか? 制限時間に間に合わなくなりますよ。先に取ってますね^^>
僕は僕で勝手に動くということを送ってからモンスターに近づく。何を僕が急いでいるかって? それはね、倒したモンスターから骨とか皮とか剥ぎ取ってアイテムに出来るんだけど、それって制限時間決まっているんだよね。で、それを過ぎるとクエスト終了って文字が出てきて、アイテムが取れなくなっちゃうってワケ。ボタンを押して剥ぎ取っていく。
-----Goodness!!
剥ぎ取れる回数分剥ぎ取ってみれば、3回とも超貴重レアアイテム“火竜の延髄(G級のみ入手可能。剥ぎ取り確率4%)”だった。テンション上がったね。これで何を作ろうかな〜と考えていると<クエスト終了>の文字が浮かんできた。そして強制的にバトルフィールドからアキラくんと初めて会った広場へと強制召還された。
と、ナナさんから言われなきチャットがまた入ってくる。だけどご機嫌な僕は柔和に受ける。
<この人でなし!!! 私を無視してアイテム取りやがって!! 誰が倒したのか、忘れたの???>
<本当はナナさんが倒してくれたんで剥ぎ取ったアイテム渡したいんですが…レア度の高いのは渡せないルールなんですよ、設定で。すみません>
<何でも良いから!! 何かくれ!! このどーてい>
------くれって言ってるのにその態度、本当に気が強いね。
すぐにアイテム欄を開いてザーと目を流していく。あ〜“氷結晶のいちご”にしようかな?
<じゃあアキラくんには“こんがり肉G”あげますね。ナナさんは…受け取ってからのお楽しみで^^>
<何か特別なものなのか。普通じゃない、アイテムか??>
<普通ではないですね、アキラくんに聞けば分かると思いますが、結構役に立ちますよ>
<わかったわ、楽しみにしておくよ…ヘタレ!!!>
はいはい…とまずはアキラくんの為の“こんがり肉G”を渡した。そして先のモノを渡そうと十字キーを操っているときだった。思わぬ物が目に飛び込んできた。その瞬間…わき上がってくるイタズラ心。
------今まで散々な言われようだったし…先にこっちあげてイタズラでもしようかな。
自然に上がる口の端を押さえる事もせず、目に入ったそれを選択し、渡した。ナナさんからの反応が返ってきた。
<うんこーーーーーーーーーーーーーーーーーー>※“モンスターのフン”というアイテムを渡しました。
口を抑える事もせずゲラゲラ笑う。仕返しは成功だ。
<叫ばないで下さいよ。それ、結構重要アイテム(肥料に使う)なんですから、ね? アキラくん^^>
たまったウンップンを晴らせたなと満足感を得た。
一頻り笑わせてもらった所で種明かしだ。
<冗談ですよ、イチゴあげますイチゴ>
<ナナがさ、うんこのショックで部屋出ちゃったよww>
<すみません、悪い事しちゃいましたね。謝っておいて下さい>
まさかあれだけ人の事を言っておいて、たったコレだけの事でショックを受けるとは。言うならそれなりに覚悟はしておくものだよと心の中で聞こえないアドバイスをした。ついで、本来渡す筈だった“氷結晶のいちご”をアキラくんに渡す。
<いや、繊細だからなあいつww傷つきやすくて難しい奴だよ>
<…うんこで傷つきましたか>
<多分、自分の価値はうんこだと思ってるよwwww>
<vvvv そんなつもりはなかったんですが、フォローお願いします>
くくくと、笑いを噛み殺した。
<まあ、また元気になるさ。で、お疲れさま>
<お疲れ様です。付き合って頂いて助かりました>
<いや、こちらこそ色々面倒くさい事もありましたが楽しかったですよ>
<よかった。こちらも凄く楽しかったです>
<また、プレイしたいですね>
<そうですね、機会があればぜひ>
一応ここで一段落だな〜とすっかり冷めてしまった紅茶をすすった。時計を見ればまだ12時前。夏休みだから平気だろうと会話を続ける事にした。
カップをマウスの横に持っていく。
<ところでアキラくんはもしかして実家生じゃないんですか? 高校生同士で同棲(?)ってアレだから疑問に思ってたんですが>
<うん。ああ、そうだよ…一人暮らしだよ>
大きく目を開けながらテンション高らかに文字を打つ。
<え!? 実は僕も一人暮らしなんですよ。またまた共通点ですね!!>
<え、一人暮らしなんですか?>
<はい^^>
<僕の周りは誰もそんな人がいないので、びっくりしました!>
<高校生ですからね、少ないとは思います>
<どのような事情で?>
------あ。
やぶ蛇だ。言わなきゃ良かった。僕が転校した理由はそう、イジメを受けたから逃げてきた。実家から通うのも登校途中会うのが嫌で、元クラスメイトが誰も住んでいないこの場所を選んだ。僕は…親に無理を言って高校を止めて一人暮らしをさせてもらっている。言えるわけない。虐められっ子だって思われるのもイヤだし、言ったって何も変わりはしない。嘘ついたってちょっぴりの背徳感があるだけだ。でもそれさえ逃げることを選択した。
<アキラくんは?>
<両親遠くの方に離れたので、はいw>
<あ、そうなんですね>
<で、ユーヤ君は?>
<通っている高校が遠いからですね^^>
<おお、なんでそんなに遠い高校に通ったんですか?>
なんでって…。
考えるより先に指が動く。
<行きたかった高校があったんですが、成績足りなくて>
<でも大正学園だってそこそこ進学校じゃないですか? 成績が足りないって…どんな高校に行きたかったんですか?>
<…元禄高校に行きたかったんですよ^^>
行きたかった…嘘じゃない。通ってたけど、行きたくなかった。でも、行きたかったのも事実。もっと普通に、虐められる事なんてなくごく普通に通いたかった。
クイっと苦い紅茶を飲んで、込み上げてきた何かを飲み込んだ。
<…でも、もっと近くて良い高校元禄高校の周りにゴロゴロあるはず>
-----良い高校って何?
成績がいいのなら、元禄高校よりもランクが下がれば確かに多くあった。アキラくんが言いたいのは、成績のいい高校だろう。だけど僕の基準は…
<そうですね、考えてみればそうですね。気がつきませんでしたvv>
<嘘だな>
<は?>
<言い訳が苦しいですよ、ユーヤ君>
<言い訳ってvv>
<…白状しな>
<何をですか?>
やだな〜と、あまりそこは詮索して欲しくないのにな、アキラくんのKY…なんてそっぽを向いて携帯を眺めた。でも鳴ってはくれなくて、代わりにチャットの着信音。
<元禄高校から大正学園間の距離があり過ぎる。簡単な理由でここまで来た筈がない>
<特に理由はないですよ^^ 僕、結構ボケてる所あるんで普通に気がつかなかったんです>
<…まあ、僕も苦しい事たくさん経験した。苛めも経験したし>
<そうですか>
またしても共通点。
しかも僕の心の傷と一緒。
彼の物がどんな物だったかは知らない、でも…仲間意識が一気に強くなった。頑に閉ざしていたその部分が少しだけ、脚を出してきた。
<まあ、今は幸せだよ。大切な人が周りにいるようになったし…でも前は、こんな生活になるとは夢にも思わなかったし>
<…そうですね。僕も今贅沢させてもらってます>
<まあ、何があったんだ? すっきりしようぜ、ユーヤ。初めは俺だって逃げてた。でも、今なら言えると思う。僕は両親を失った。妹も…一瞬で>
<もしかして、亡くなられたんですか?>
<ああ…交通事故でね…一瞬でさ…>
<…すみません、なんて言っていいのか。だから、一人暮らしされてるんですね?>
-----家族かぁ。
それは辛かっただろうなと、漠然と思った。でもそれ以上に僕には思う所があった。アキラくんが、そんな辛い過去をサラリと自分から告白してくれたコト、これは僕にとって大きな勇気を与えてくれた。人によって悲しみの度合いは、違う。だけど、彼はそれを話した。だから僕も…良いと思った。
<ああ。まあ語ろうや。漢同士で>
<…それに比べれば僕の一人暮らしの本当の理由なんて取るに足らないものです。…実は僕も苛められてて。それが原因で今一人暮らししてるんですよ>
<まあ、なんで虐められていたんだ?>
<うーん、僕も良く分からないんですが…。でも、あれですね、アキラくんも苛められ経験ありで、やっぱり僕達共通点多いですね>
<そうだな、だから語ろうぜ。お互いにな>
<はい^^>
僕たちは、ほんの数時間前にネットという仮想空間の中でたまたま出会っただけの顔も知らない存在だ。だけど、アキラくんが暴露をするごとに僕の他人を警戒する心は開いていって…たった数時間の間に色んな事を話した。経験した過去、僕の思った事、彼の感じた事、今互いに意見出来る事。言葉とは不思議な物で話せば話す程心の距離を近づけてくれる。だから僕らは何キロも離れたこの場所で、パソコン画面の前に座ったまま、顔も知らぬまま、親密になっていった。
<ナナさ、時々分からないんだ…どう接すれば良いのか。前までは普通に接していたのに…最近はナナは僕にとってどんな存在か分からないよ>
<女の子って分からないよね。あ、でもそう言えばカノジョさんるんじゃなかったかな? 嫉妬とかされないの? 同棲してるし>
<ああ、夏休み前に爆発したよ…僕を無理矢理犯す気で来たよ…普段は優しい奴なのに…俺は最低だ>
-----積極的過ぎ…。
文字を読んでケフンを咳を零した。
アキラくんのカノジョ川本さんが、まさかのヤンデレだったとは、恐れいった。
大変だなと、励ましの言葉と興味を聞く。
<それは…ある意味羨ましいと取りますがvv 普段は優しいってどんな子なの?>
<言葉で表せない程だよ…とにかく、どのパーツも完璧だよ…黒髪のミディアム、茶色の瞳、ちょっと貧乳…、綺麗な脚…もう堪らないよ>
<たまらないってvv>
そこまで言うならそっちに真剣になっちゃえば良いのに。欲張り…。ま、男として分からないではないけどさ。
<カノジョは良いぞ、作る事をおすすめするよ>
<簡単に作れれば苦労しないよ^^>
<まあ、カノジョが出来たらできたで大変だけど…そう簡単にいかないな、人生は>
<KIRINだからわかりませんvv>※KIRIN…Kanojyo Inai Reki Iko-ru Nenreiの略。
お替わりをした紅茶を飲み込んで片手でレスしていたときだった。
アキラくんがまた、僕の中心を突いてきた。
<そういえば、ゲーム中で「しおりーーーーーーーー」とか言ってたな。誰だ?>
-----お、覚えてたか…。
敢えてゲーム内の話は避けてそこを忘れさせようと思っていたのに、それこそ人生はうまくいかないようで僕の計画は狂った。一瞬迷う。言うべきか、言わざるべきか。考えながら、言葉を打っていく…けど、もうここまで開けっぴろげに互いに話したのだ。
男なら言うでしょ!?
気合いを入れ直して両手でキーボードを鳴らす。
<ああ、あの時の…。詩織は僕の親友なんです^^>
<でも、なんでその親友の名前を?>
<や、実は、信じては貰えないとは思うんだけど、その詩織って子とね、君のキャラの容姿が本当にソックリで、つい間違えちゃったんだよね>
<マジでか! あんなに美人がお前の近くにいたのか? チャンスじゃないか! アタックしろよ!>
<それは…いいよ。あの子も僕のこと親友だっていってくれてるし、僕もそう思ってるし>
<まあ、後から後悔する前に行動しておけよ…>
…だから僕はKIRINなのかな? なんだかアキラくんが僕ならしっかりちゃっかり行動してそうだ。だから現にカノジョ作れちゃってるし。むむむ。
ちょっと悩みながらも他にも問題があるのだと言う。そう、完全にここはどうにもならない場所だ。
<いやいや。今でもさ、親友として並んで歩くことはよくあるけど、不釣り合いさに自分でもビックリするからvvたまに道いく人に言われるんだよ? 「あんな美人がなんであれと!?」って。酷くない!?>
<そしたら俺の方が憎いぞ。俺の顔はブサイクという自信があるんだ。はっきり、僕のカノジョとは美女と野獣だよwwwマジで>
アキラくんがことある事に、自分の事をブサイクで押してくる。
本当にそうなのか、会ってみないと分からないけど…もう押され過ぎてちょっとウケてきた。逆に見たいね、その姿。期待しちゃっても良い?
<vvvvvvv自分の事落とし過ぎvvvvじゃあ、ナナさん風に言えば僕らの場合は美女とモヤシかなvv>
<美女とモヤシってwwwじゃあ僕は美女とじゃがいもでw>
<食べ物vv>
<くそ…端から見たら良いかも知れないがなwwこいつらのせいで、どんだけ苦労してるのか…なあ、ユーヤ!!>
<うんうん>
たまにアキラくんって親父臭くなる時があるよねと、一緒にお酒なんて飲んだら絡まれそうだなと何となく想像した。
<川本は良いカノジョだけど、ヤンデレは少し直して欲しいぜ>
<どうなったらアキラくん的には満足?>
<うーん、もう少しな…信用して欲しいかな?>
<ああ。でも川本さんの気持ちも分かるかな。だって同い年の人が一緒に住んでるんでしょ? 不安にならない方が可笑しいと思うよ?>
<そうだな…ナナだよな…。まさかな、あいつが僕の事が好きになったとは思わなかったな…今でもどっちが大事なのか悩むよ…>
-----ほらね?
信じて欲しいなんて言ってるくせに、信じてもらえないようなこと考えてる。それじゃ川本さんも浮かばれない、死んでないけど。君がハッキリ答えを出してどっち付かずな行動をしなければ、悩むような事態には陥らないと思うんだ。悩んでる時間は二人とも会わないくらいの気持ちじゃなきゃダメ。そんなんじゃいつか二人ともいなくなっちゃうよ。なんて偉そうな事考えてるけど、これは姉さんからの全て受け売り知識。
だから僕なりの言葉でチャットにかる〜く流した。
<悩んでるの見透かされているからだよ^^ 女の人って敏感だからさ>
<まあな…でもな…ナナか川本か…苦しい選択だ。おまえは? 振り回されてるんだろ?>
<うーん。でもイヤかと言われればそこまでじゃないし…あ、でも強いて言うなら自分が外見の制で目立ってるってことちゃんと自覚して欲しいかな>
<美人は目立つというしな…>
<スタイルも良いから、さらに…なんだよね(●´Д`●)ゞ>
<顔が良いっていいよな…でも詩織さんって聞いてるだけじゃ、凄く魅力のある女性じゃないか。何が不満なんだ?>
そりゃあ…
詩織は仮想空間の中で作ってたモノと見間違うような美人で、でもそんな事鼻にもかけてなくて優しくて行動も無邪気で小悪魔で…僕だって出会い方が違ってたら…ううん、もし彼女がもう少し大人しかったら…
<そうだけど、でもそのせいで僕はorz…。せめてあの子が自覚して慎重な行動を心がけてくれるとこっちも助かるんだけど>
<ま、そんな事言っても現実は変わらないがな…>
-----現実ね。
ふと今まで真剣になっていたパソコン画面から目を離して携帯を開けば…もう午前6時を差していた。
-----どうも明るいと思ってたら。
<だよね。っと、現実見ればこんな時間だけどどうする?>
<もうそんな時間かww朝じゃん。そうだ。オフ会しようぜ。もっと話したいな>
<いいね。日にちは…後日に。そうだ、メルアド交換しておこか?>
<良いね! じゃあ僕のメールアドレスは『busaiku.akira@kirelife.com』だよ>
------また、不細工ネタで押してきた!!
どれだけそのネタが好きなのかと。オフ会で会う時は必ずその顔を目に焼き付けてやろうと誓った。
そして僕もアドレスを別のウィンドウから取り出してくる。うーむ、ちょっと恥ずかしいんだよね、このアドレス。だけど、黙ってればバレないだろうとすぐさまコピペ。
<OK.僕のは『kanransya.koai@kirelife.com』だよ>
<ok! 保存したよ! オフ会いつにしようか?>
<保存完了!! そうだね、じゃあ開いてる日にち送ってくれる? それ見てこっちのいい日決めるからさ>
<ああ、後でメール送るよ、今は眠いからなww>
<盛り上がり過ぎちゃったねvvじゃ僕も寝るよ。【寝室】*-ω-)ノ" オヤスミー♪>
<ああ、後でメールするから! 今日はありがとうな! じゃあ、お休み!>
アキラくんがオフラインになるのを見届けてから、僕もネットから脱出した。
「のうみつ共同作業」終了〜。
っということで、作者の河合いおです。
さてさて、どうして私がこんな所に出てきたのか…それは今回の素敵企画のネタ明かしをする為なんですねvv
今回のこの企画…
「school life」のカナダ男くんとのクロスオーバー作品なんです。
どういう事かと言いますと、「のうみつ共同作業」で出てきたアキラとナナは彼の作品の主人公達なんですよね〜。そう、「キレかの」と「school life」の世界をネットで繋いだ訳ですvv
ですから、ネットを中心にこちらはユーヤから見た目線が展開されていています。
と、いうことは…?
YES!!
あちら側に行けば、ネットの外側で起こったユーヤの知らない世界を見る事が出来ます。
詩織とそっくりなキャラを操っていたアキラくん、ユーヤに毒舌を吐いていたナナ、のネットからでは伝わって来ない、二人のパソコン前のやりとり、ユーヤに対する思い等々、向こうの視点で描かれています(主人公はアキラくん)。
勿論、あちらはあちらで「キレかの」と同様に「school life」の世界が本編としてありますが、それは気にしなくても読めるような作品に仕上がっているので、二人を知らないという方も知っている方もユーヤの知らない世界を覗きにいってみてはいかがでしょうか?
興味のある方はhttp://ncode.syosetu.com/n3613g/をクリック!!
本編の下の方にある「キレlife」を探してね。
それでは、まだまだ続くカナダ男くんとのスペシャル企画、明日もお楽しみに!!