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X'mas + 下準備は抜かりなく

 

「ねぇそのガム頂戴」

「あ、俺も」

「じゃあ代わりにその飴くれ」


 男5人で1列に並んで物を交換する。貰ったばかりのクール系のガムを噛みながら流れて行く景色を眺めた。


「どこに行きたい?」

「まずはファッションビルからだろ」


 一人の意見に他の4人が首を縦に振って賛同した。12月中旬、お休みの日、男ばっかりで買い物…とくればもうお分かりの人もいるのではないだろうか。正解。お察しの通り、僕らはクリスマスに一緒に過ごしてくれるパートナーにプレゼントを買いにきたのだ。メンバーは1年前と一緒。僕と末長と田畑くんに他二人。

 乱立するビルの谷間にある駅で下車してファッションビルへと脚を運んだ。


「なかなかいいのないなー」

「だいたい、アクセサリーなんて男の俺たちが分かるわけねーよな」

「そうそう。可愛いって何?」


 昨年買い物に来た時と全くを同じことをぶつくさ呟きながら商品を選び始める友人達を眺めた。でも変わったのが1つ、それは末長が全く肩を落としていないコト。この1年で成長したのだなと自分のヘタレは棚に上げて、よしよしと心の中で褒めたたえた。

 って、それどこじゃない。僕は僕でしっかり見ておかないと。

 一応他の人とは違ってプレゼントはピアスだと決まっているのだけれど、それでもやっぱり大変だ。何となく詩織の趣味は理解しているつもりなんだけど、いざ買おうと思ったら「あれ?」ってなっちゃうんだよね。色は何色がいいのだろうとか、実は苦手な形があるんじゃないだろうかとか、色々考えてしまう。

 うーと呻いて誰一人手をつけることなく、次のファッションビルへ移動。


 すると田畑くんと誠二くんは何やらいいものを見つけたらしく「会計してくる」とレジへ持っていってしまった。

 -----こんなことなら、事細かに聞いておけば良かった。

 いや、いっそのことどこのブランドの何色のアレまで聞き出しておけば良かったかなと後悔した。ため息を吐きつつ、さらに上の階に行く時に館内案内表が目についた。

 -----あ。


「ごめん、あとで一番上の本屋行っていいかな?」

「本屋? いいけど…」


 一応グルっとその階を廻ってまたもや手をつけず、最上階へ皆に脚を運んでもらった。

 しかし、本には目もくれず文房具の方へ行く僕を見て皆が目を丸くした。口の中で小さく笑って、にんまりしながら敢えて見えるようにスケッチブックとクレヨンの12色セットをレジに持っていき「プレゼント用でお願いします」と言えば、さらに皆が仰け反った。

 小走りで戻れば田畑くんに肩を叩かれた。


「止めとけ。いくら詩織嬢でもさすがにそれは怒るから」

「そんなことないよ?」

「「そんなことないわけないだろ!?」」


 突っ込みを入れる男の子達をあざ笑うようにワケの分からないことを言って退ける。


「大丈夫。これ、浮気相手にだから」

「「はぁ!?」」

「ああ、さらに大丈夫。詩織はそのこと了承済みだから」

「「ええ!?」」


 あまりに僕の予想通りの反応を示す皆に耐えきれなくなって爆笑した。でも、本当のことは教えてあげない。だって、今度は僕が笑われちゃうもの…4歳児とのデート&プレゼントだなんて。

 結局このファッションビルでも僕は何も見つけることが出来なくって、どうしようかと迷っていると末長が口を開いた。


「あそこの百貨店行っていいか?」


 どうやら彼はますます抜かりのない神無月さんに似てきてて、すでにクリスマス限定のプレゼントを予約してあるらしい。まさか末長がそんな準備をしているだなんて思ってもみなかったから焦った。だって、まだ何かを購入出来ていないのは僕だけだよ?(まぁ雪姫ちゃんの分は買ったけれど)

むぅと唇を尖らせて、とりあえず彼が会計をしている後ろでジッとショーケースの中身を覗いた。けれどなかなかピンと来るのがなくて…。

 -----どうする? 相棒…。

 頼って漆黒の腕時計に聞いてみても当たり前だけど返事は返って来ない。仕方なく商品達と睨めっこを繰り返す。


 よし、一から考えようじゃないか。詩織のことを。

 まずは土台から考えよう。えっとピアスだったら、ずっと付けてることを考えなきゃいけない。あれって寝る時やお風呂の時に外す人もいるけど外さない人もいる(姉さん外さない派)…し、詩織の場合は動き回ることが多いから、アレルギー起こさないようにシルバー系は却下にした方がいいだろう。でもプレゼントなのにポスト樹脂とかはないから、アレルギー反応を起こしにくい金かプラチナかな…。

 次は色。多分彼女の好きな色は赤、白、ピンク。で、現在赤い石のついたピアスを付けてるから、赤のピアスはないね。見た目が変わらなきゃ僕だって贈った気にはならないしね。じゃあ色は白かピンク系のもの。

 次。彼女の外見だけど…トレードマークは長い黒髪に真っ黒な目(あと警棒)。着ている服は可愛い系で、でもたまに大人びた服も着てる。ってことは…ヤバい、わかんない。姉さんに鍛えられたこの目を持ってしても、彼女を何系だと捉えられない。ええと、じゃあ、贈るピアスは僕はどんなシチュエーションで付けてほしいかで決めよう。……。ヤバい、出来れば結構な頻度で使ってほしい。うん、これは男の欲ってヤツです。でも普通そうでしょ? せっかく贈るんだったらなるべく使ってほしいもの。だったら…

 -----逆にあまり飾り気のない方がいいかな。

 よく言うじゃないか、シンプルイズベストって。そう、何にでも合うようなものを選んでしまえばいいのだ。ってことは、色は白系かな。

 以上を総合すると、僕の探すべきプレゼントは土台は金orプラチナのシンプルな白系ピアスだ。


 よし、と気合いを入れ直してショーケースを覗いて歩く。と、ようやく僕の心にリンクするコを発見した。それは姉さんが愛用しているブランドのもので透明な石が1つ付いていて、それをプラチナの6本爪が噛んである。視線を横にずらせば、価格が明らかに予算オーバー。4月の誕生石だからいいと思ったんだけど、ダイヤなら0.3カラットでもこのくらいは普通だ。むむむ、と悩む。僕って決めるまでは長いことが多いんだけど、コレだと決めたらなかなか他に目移りでいないんだよね。

 と、あまりに僕が一つの商品を睨み続けているからか、お姉さんが少し含み笑いをしながら声をかけてきてくれた。


「そちらのタイプですとシンプルですからどんな服にでも、どんなシチュエーションでも使って頂けるかと思います」

「ですよね…」


 けれど僕の財布事情は「せめて半額でしょ」と嘆いている。

 小さくため息を吐いてお財布の中身相応の物を相談しようとしたら風向きが変わった。


「1ホール用のピアス探してるんですけど」

「でしたら、こちらもシングルでお取り扱いしておりますよ」


 しかも聞けば価格も半分になるという。

 お姉さんと目を合わせたまま、にっこり微笑んで財布を取り出す。すると彼女は「メッセージカードは如何なされますか?」と聞いてきた。どうやらプリントしたものを付けてくれるらしいのだ。一瞬思考を巡らせた後、口の端を上げてカードに書いてほしいことを唱えた。

 家に帰り、プレゼントを机の中にそぉと、しまった。


「あ。そういえば」


 鞄をゴソゴソ開いた。実は朝、末長から「クリスマスプレゼントだ」と何やら貰っていたのだ。手に収まる程の小さな包装された箱を開けて、顔が引くついた。だってそこには、<実は田畑くんから。彼からだと絶対妖しいからってお前、受け取らないだろ? ひっかかったな、バーカ>という紙が貼られたエッチの必需品が…。

 -----最低!!

 なんて思いつつも、捨てるか捨てないか一瞬迷ってしまった自分がいた…。男の子ですから(反省)。



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