どうして?
なぜなの?
不安がなくならない。
私、灰原哀は、あの時占い師に言われた『やがて海の向こうから災いがやって来る。気をつけなさい』の言葉が妙に頭に引っかかっていた。
どうしてこんな事気にしてるの?
あの占い師はインチキだってわかったじゃない。
それに、その後占い師殺人事件の犯人に襲われたけど、工藤君が助けてくれたし、『オマエは死なせない』って言ってくれたじゃない・・・
なのに、どうして不安がなくならないの・・・?
コナン「まだあの占い師の言った事気にしてんのか、灰原?」
哀「そ、それは・・・」
コナン「心配するなって、ヤバくなったらオレが守ってやっからよ。」
哀「ありがと・・・」
そう、彼のこの言葉が、私にとっては大いに救いの言葉となっている。
工藤君はまさに、か弱いお姫様を守ってくれるやさしいナイト。
今日ぐらいあなたに甘えても、バチは当たらないよね?
哀「ねえ、工藤君。」
コナン「なんだ?」
哀「夕食の買い物につき合ってくれない?」
コナン「ああ、いいよ。」
哀「ありがと。」
コナン「じゃ、行くか。」
そう言うと、工藤君は私の手をキュッと握った。
哀「/////あ・・・/////」
コナン「灰原、行くぞ。」
私は彼に引っ張られるまま、デパートに走っていった。
その時、私達の事を監視する怪しい人影がいた事に、私は気がついていなかった。
米花デパート
米花デパートの食品売場で、工藤君は手際よく商品をショッピングカートに放り込んでいた。
私は下を向いたまま、ショッピングカートを押している。
コナン「どうしたんだよ、灰原?」
哀「あ、いや、その・・・」
園子「おやおやぁ?コナン君と哀ちゃんじゃない!」
コナン「そ、園子姉ちゃん・・・」
園子「カワイイガールフレンド連れて夕食の買い出しだなんて、コナン君も隅に置けないねー!」
コナン「ち、ちがうよ園子姉ちゃん!何言ってんだよ!」
工藤君は必死に弁明している。
その横で、私の顔はどんどん赤くなっていた。
まさに、ユデダコ。
園子「隠さなくていいって!歩美ちゃん達が、2人はラブラブだって言ってたもの!」
コナン「な・・・」
哀「/////・・・/////」
私も工藤君も、もうすでに顔が真っ赤っかだ。
園子「じゃあね!コナン君、哀ちゃん!」
そう言うと、園子はタタタと走っていった。
コナン「たく、園子のヤツは・・・」
哀「うん・・・恥ずかしかったけど、なんだかうれしいわ・・・」
コナン「え?」
哀「私と工藤君を、恋人同士に見てくれる人がいたなんてね・・・」
コナン「灰原・・・」
哀「工藤君・・・今日の夜ね、博士学会で遅いの・・・1人じゃ不安だから、泊まってってくれない?」
コナン「ああ、いいけど・・・」
哀「やったぁ!」
工藤君は、私が普段みんなに見せない笑顔をしたので、とまどっている。
だって、うれしいんだもん。
工藤君が泊まっていってくれる事が・・・
でも、どうして不安なのだろう?
そう私は思っていた。
私と工藤君は買い物を終え、帰路についた。
帰り道、また後ろに誰かの視線を感じた。
阿笠邸
私と工藤君は阿笠邸に着き、中に入った。
工藤君は、彼の家から持って来た推理小説をリビングのソファーで読んでいる。
彼が読んでいるのは、私もたまに読ませてもらっている、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』だ。
とてもハラハラする展開で、私は楽しませてもらっている。
私は、彼の推理オタクぶりに影響されている事に気づいて、クスッと笑った。
哀「工藤君、そこで待ってて。今から晩ごはん作るから。」
私はキッチンに入り、晩ごはんの準備を始める。
今日のメニューは、カレーライスだ。
私は材料をまな板に置き、包丁を出した。
まずはタマネギから切り始める。
ザクッ。
包丁をタマネギに入れた。
哀「染みる・・・」
私はタマネギの汁が目に染みて、涙が出た。
私はタマネギの汁に翻弄されながらも、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、お肉、なんとかすべての材料を切り終えた。
鍋に材料を放り込んで、それからカレーのルーを入れてかき混ぜる。
フタを閉め、カレーができあがるまでの間、私はタマゴサラダを作る。
30分後、カレーが完成した。
哀「工藤君、ごはんできたわよ。」
コナン「あ、ああ。」
工藤君はそう言うと、本をソファーに置き、こちらに来ると、料理を並べるのを手伝ってくれた。
それから、2人で同時に席に着く。
私と工藤君は、晩ごはんを食べ始めた。
コナン「おいしいなぁ、灰原の料理は。」
哀「///あ、ありがと・・・///」
コナン「博士とは大ちがいだぜ。」
工藤君の言葉に、私は前にキャンプした時の事を思い出した。
博士が切った野菜は、全部つながっちゃってたっけ・・・
確かにあのありさまでは、工藤君が文句を言うのもしかたがない。
だからこそ、私が博士に料理を教えているのだけど・・・
いっこうに上達しないのよね・・・
コナン「あれじゃ、これから先どうやって食べてくんだよ・・・」
哀「ア、アハハ・・・」
私は、苦笑いを浮かべていた。
食事も終わり、私と工藤君は交代でおフロに入った。
哀「フゥ・・・スッキリした・・・」
私がパジャマを来て上がってくると、工藤君はもう2階に上がっていた。
私も、2階に上がっていく。
私は、工藤君とは別の部屋に入った。
私はベッドに潜り込む。
哀「ふあぁ・・・眠いわ・・・」
私は布団をかぶり、眠りについた。
それからしばらくして、裏口のドアがガチャガチャと音をたて、ドアが開いた。
開いたドアから、覆面をかぶった30代ぐらいの男が入って来た。
この男が強盗なのかは、まだわからない。
男は辺りを見回し、螺旋階段の所へ来た。
上から、哀の眠り声が聞こえてくる。
男は、ニヤリと笑みを浮かべると、2階に上がっていった。
男は2階に着くと、『灰原哀』のネームプレートがかかっている部屋のドアを静かに開けた。
ギィ・・・
男が部屋に入り込むと、哀はスヤスヤと寝ていた。
哀「スースー・・・」
男はニヤリとすると、ベッドに近づいていく。
ガバッ!
哀「うっ!?」
哀が気づいた時には、もう男に口を手で塞がれていた。
哀「う〜、う〜!!」
哀はジタバタともがいた。
「黙リナ。」
男はそう言うと、ナイフを哀に突きつけた。
哀「うぅ・・・」
哀は黙ってしまった。
男は哀を持ち上げ、その腕に抱えた。
ガバッ!
哀「キャ〜ッ!!」
コナン「!!」
哀の叫び声に、コナンはすぐに反応した。
コナン「灰原!!」
コナンが部屋を飛び出した時には、もう哀は男に抱えられ、下に連れ去られていた。
哀「工藤君助けて〜っ!!」
コナン「灰原ーっ!!」
コナンの必死の追跡もむなしく、哀は男に裏口から連れ出されてしまった。
コナン「灰原ーっ!!」
コナンは大声を上げたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
なぜなら、哀の服にはすべて、ボタン型発信機がついているからだ。
哀が遅くなる事がよくあるので、阿笠が哀に内緒で彼女の服につけていたのだ。
もちろん、洗う時にははがして、洗い終わった後につけるし、服と同じ色だからバレるワケがない。
もっとも、これを依頼したのはコナンだ。
哀を愛するがゆえに。
しかし、哀はこの事にまったく気づいていなかった。
それが幸い?
一方、連れ去られた哀は、車に押し込められ、ジタバタともがいていた。
哀「放して、放してってば!!」
男は無言のままハンカチをポケットから取り出すと、ハンカチにクロロホルムを染み込ませた。
哀「あ・・・うっ!!!」
哀が次に叫び声を上げようとした時には、もう哀の口はハンカチで塞がれていた。
哀「むぐぐ〜!!」
哀はジタバタともがいたが、シートベルトのせいで身動きがとれない。
ほどなく、哀の目はトロンとなってしまった。
哀「うぅ・・・(工藤君・・・助けて・・・!!)」
哀は気絶し、グッタリとなってしまった。
哀「うぅ〜ん・・・」
意識が朦朧とする中、哀は目を覚ました。
まだ頭がクラクラする。
あの時、クロロホルムをかがされたからだろう。
立ち上がろうとした哀は、自分の状態に気がついた。
哀「(手足が動かない・・・!!)」
そう・・・哀の手足は、身動きできないように縄でグルグル巻きに縛られ、ベッドにくくりつけられていたのだ。
哀「んんっ!!んむぅ!!」
さらに口には布がガッチリと巻かれ、猿轡をされている。
哀「んむぅ!!んむぅ〜!!」
哀はジタバタともがいたが、まったく身動きがとれなかった。
哀「うぅ・・・」
哀がうつむいていると、哀を誘拐した男が部屋の中に入って来た。
「気ガツイタカイ、オ嬢チャン。」
哀「!!(が、外国人・・・!!)」
さらわれた時は覆面をかぶっていたから気がつかなかったが、覆面がない今はよくわかる。この男は、片言の日本語を話す外国人だったのだ。
「オ嬢チャン、カワイイネ。私ハコノ1週間、ズット君ヲ見テイタンダヨ。」
哀は、男の言葉を聞いて、やっとわかった。
ここ1週間哀が感じていた視線は、この外国人のものだったのだ。
「私ハ君ヲズット見テイタ。君ハカワイクテショウガナイ。私ハ君ガ欲シインダ。」
哀は、ビクッとなった。
哀「(そ、それ、どういう事・・・?まさか、この人、ロリコンなの!?)」
ロリコンとは、ロリータ・コンプレックス。
おもに大人が、幼女を性愛の対象にする事や、その行為をする人の事を指す言葉だ。
さらにこの男は、外国人・・・
あの占い師が言った『やがて海の向こうから災いがやって来る』とは、この人の事だったのだ。
しかも、ロリコンの気がある外国人・・・
哀は、体がふるえる。
自分がこの男にさらわれてから、けっこう時間がたっているのに、この男は身代金を要求する電話をかけてはいない。
身代金目的ではないのなら、残る可能性は2つしかない。
最初から哀を殺す気か、哀を襲う目的で誘拐したかのどちらかだ。
哀「んっ・・・んん・・・」
「オ嬢チャン、ヤッパリカワイイネ。私ハ君ガ欲シイ。モウ君ハ、私ノ物ダ・・・」
男は、ジリジリと哀に近づいてくる。
哀「(イヤ・・・イヤァ・・・)」
「ソンナニ怖ガラナクテモイインダヨ。イウ事ヲ聞イテクレレバ、チャント帰シテアゲルカラネ・・・」
男は、今まさに哀が縛られているベッドに上がろうとしている。
哀は、泣きそうになった。
哀「(工藤君・・・助けてぇ!!!)」
男が哀に襲いかかろうとしたまさにその時、部屋のドアが吹っ飛んだ。
「ガッ・・・!!」
男はあっけなく吹っ飛ばされる。
コナン「灰原!!」
コナンが中に入ってきた。
哀「(工藤君・・・!!)」
コナンは哀に駆け寄ると、哀を縛っていた縄を解いた。
コナン「灰原、大丈夫か?」
哀は涙が出てきた。
哀「工藤君〜っ!!」
哀はコナンに抱きつき、泣き出した。
哀「え〜ん、え〜ん・・・工藤君・・・怖かったよぉ・・・」
コナン「もう大丈夫だからね、灰原・・・」
その後、コナンの通報により、男は未成年者誘拐罪で警察に逮捕された。
男の動機は、ここ一週間ほど哀を監視していて、哀を自分の物にしたかったからだという。
その夜、阿笠邸
哀はコナンと一緒にベッドで寝ていた。
コナン「どうしたんだよ、灰原?オレのベッドに潜り込んできて・・・」
哀「だって・・・」
コナン「安心しろ、もうオマエを怖い目にはあわせないから・・・」
コナンがそう言って哀の方を向くと、哀はスヤスヤと寝ていた。
コナン「たく、さっさと寝やがって・・・」
コナンが寝返りを打つと、哀は笑った。
哀「(これからも私を守ってね・・・王子様・・・)」 |