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その他短編

おかしな妹

作者:須方三城

 おかしい。

 俺が異常事態に気付いたのは、秋らしく涼し気な朝の七時三八分。

 何があったか、かいつまんで説明しよう。

 俺の全裸を見ても、妹が眉ひとつ動かさなかったのだ。

 何故だ。
 いつもなら、「なんて格好してんのよ!?」と声を荒げ、何か手近なモノを投げてくるくらいするはずなのに。
 今さっき、あいつは「……起きてるならさっさと下りて来てよ」と素っ気なくつぶやき静かにドアを閉めやがった。

 馬鹿な。

 と言うか待つんだおい。
 何のために人が週一くらいの周期で無駄に早起きして全裸でポージングしながら待機していると思っているんだ?

 お前の恥じらう顔が見たいからだよ、言わせんな馬鹿野郎。

 だのに、そんな素っ気ない反応されたら……まるで俺はピエロじゃないかッ。

 ……いや、待て、とにかくだ。
 これは異常事態だ。

 至急、脳内会議を開く必要がある。

 だってさ、野郎の全裸を見ても平然と対応できる妹て何だよ。
 そんな妹ヤだよ。絶対ヤだよ。最早いらんよ。だって妹って兄に弄り回されてなんぼじゃん。妹としての存在価値が危ういよ。その辺に転がってる小石の方がまだ愛せるよ。

 と言うか寒いなおい。
 秋のくせにもう完全に冬だなおい。
 暖冬がどうとか言う話はどこに行った。世界は嘘ばっかりか。絶望が留まる所を知らん。

 まずは服を着るべきか……

 ……って、俺は馬鹿か。何を考えているんだ。我が愛すべき妹の一大事に、のんきに服を着ている場合かッ。
 こんな時に服を着ようなんて…そんなどうでも良い事に思考がいってしまうなんて…成程、これが混乱…冷静さの欠如か。

 冷静になれ。そう、クールになるんだ。今日の気温の様に。
 ふふっ、我ながら上手いじゃなへくちっ。

 ……流石に少々クール過ぎる。
 靴下だけは履いておこう。




 よし、結構マシになった。

 ふぅーッ。やるじゃないか靴下。
 所詮衣類と馬鹿にしていたが、中々どうして。これは見直さざるを得ない。

 っと、靴下及びその開発者への評価を改めている場合でも無い。

 シンキングタイムだ。

 何故、我が妹は、俺の全裸を見ても平然としていられたのか。

 一、演技。平静を取り繕っていた。

 ……無いな。あいつはそんな器用な人間では無い。
 あいつが小学生の頃、学芸会で演じた白雪姫は惨憺たるモノだった。
 悲劇を通り越して逆に喜劇だった。白雪姫は悲劇でも喜劇でも無いぞ全く。
 流石の俺もあれは予想外で、腹筋がねじ切れそうだったのを今でもはっきりと覚えている。

 二、気が気でない。俺の全裸に構っていられないだけの何かがある。

 ……そうだな。これが最も可能性として高いな。
 ふむ、もうこんな有力な候補が出てしまうとはな。まだ二択目だと言うのに、他愛ない。実に他愛ない。

 うむ、これだ。これ以外に有り得ない。
 何故ならばこれ以上思いつかないからだ。
 この世に俺の想定を上回る事象など、妹の演技力の低さと手料理の不味さくらいなモノだ。

 さて、一体何だ。何があったんだ妹よ。

 家庭に問題が無いことはこの兄が百も承知。
 むしろ外界で貯めた多少のストレスなど吹き飛ばされるほど、我が家は癒しに満ちているはずだ。俺がいるのだからな。

 とすれば、学校かッ。

 学校で年頃の少女が抱える問題……ふっ、早速だがピィンッと来たぞ。

 青春か、妹よ。

 恋に焦がれて飯は喉を通らず、夜は眠れず、兄の全裸にも構ってられない。

 ふふ、純だなぁ全くッ。

 しかし、ここまで単純だと考察のし甲斐が無い。
 やれやれ。可愛いモノだが、少々物足りんな。
 もっと奮い立たせてくれないと、お兄ちゃん寂しいぞッ。

「それにしても、青春か……ふむ。ここは兄として……」

 当然、応援してやらねばならんなッ。

 と言う訳で、朝食の摂取も兼ねつつ、妹が待っているであろうリビングへ向かうとしよう。

 そこで兄のエールを魅せつけてやるのだ。




 ふむ、廊下は更に寒いな……靴下を履いていなかったら耐えられん。
 靴下は人類の英知だな。

 ふふ、やるな人類。人類科学の更なる発展に嫌が応にも期待が高まるじゃないかッ。
 朝から俺をこんなにワクワクさせるなんて、罪深いぞ全く。恥を知れ。

 さて、気分は非常にルンルンだ。ハイを通りこしてスカイだ。

 この調子で、リビングで黙々と白飯を食らう妹へエールの限りを発信しよう。

「あ、お兄ちゃん、ご飯もう入ってるから」
「うむ、ありがとう。そして応援しているぞ妹よ!」

 さぁ、受け取れ、兄によるエール。
 エール・オブ・サイドチェスト~秋の朝の応援歌~、をッ。

「? 何が? ってか何でサイドチェスト?」
「どこの誰にか知らんが、恋をしているんだろう!?」
「……はぁ?」

 む? 何だそのリアクションは。
 まるで「何言ってんだこいつ」と言わんばかりじゃないか。

 ……まさか、この俺の予想が、外れていた?

 そんな馬鹿な。有り得ない。

 ……いや、だが、先にも言ったがこの妹に上手く嘘を吐く要領など決して無い。

 照れを隠している素振りも皆無……ッ、認めざるを得ないか……!?

 だが、待て、ならば一体……

「ど、どう言うことだ妹よ!?」
「その台詞、そのままそっくり送り返したいんだけど」
「何故だ!?」
「ねぇ、このままだとループになりそうだから一旦落ち着こ?」
「何故だ!? どう言う何故妹これ一体わぶしっ」

 ……妹よ、一体どうして何故に突然兄にコップの水をぶちまけるのだ……
 この気温で全裸…いや靴下を履いているから半裸か。半裸の兄にこの仕打ちは中々酷いぞ。

「とりあえず、まずは私の質問に答えてくれる? なんで私が恋をしてる云々って話になってるの? いつかそうなるだろうと覚悟はしてたけど、ついに脳機能が全部死んだの?」
「今日のお前は何かがおかしい。つまり、恋をしているのではないか、と……」
「……? 私、いつも通りだと思うけど」
「いぃやッ! お前は半裸の兄とこうして平然と会話ができる様な子じゃなかったはずだ!」
「あー……」
「恋じゃないとしたら一体何だ!? 一体何がお前を変えてしまったんだ!? 靴下を履いているとは言え、何故俺のさらけ出された肉体を『特に思うことはありません』と言った感じの目で直視できるんだぁッ!?」
「それは……」

 それは?

「流石にもう見飽きたかな、と」


 ………………………………。


「……あ、そう……」
「って言うか、寒くないの? 今日気温一桁だよ? 夜は雪降るかもってさっき天気予報で言ってた」
「あ、うむ、靴下履いてるし……」
「じゃあ、さっさと食べよ。遅刻するよ?」
「……いただきます」

 ……明日からは、M字開脚で出迎えるくらいしないと駄目そうだな……

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