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第十章 新年こんにちは、そして両親お帰り 親父と空斗の拳
うわー・・・・・・・・・今のこの状況から全力疾走で逃げたいんですけど。
俺の格好はなぜが柔道着。そして俺の目の前には同じく柔道着を着た親父(ばけもの)
場所は家から十分ほどの道場。この道場で親父は昔、師範代を勤めておりとても強い。
いや、マジで強すぎて俺なんて話になりません。

道場の窓とドアを全て開きまわりからも見えるようになっている。
親父は目立つ事が大好きだから人が集まるとでも思っているのだろうか?
ルル達は道場の端のほうでパイプ椅子に座って観戦していた。

できれば代わってもらいたいが現頭首が俺なので絶対に俺じゃないといけないらしい。
と、言うかほんきで俺は死んじゃうから。

「それじゃ、空斗。全力でかかって来い」

「お手柔らかに。じゃないと俺、死んじゃうから」

「またまた、冗談言うな」

「マジですって・・・・・・・・」

俺は溜息をついて構えを取る。
すると親父は構えも何も取らず両腕の力を向いてぷらーんっとして完璧に馬鹿にしている。
というか本気で馬鹿にされているよ。

これにちょっといらっときたので最初から飛ばしていく事にした。

親父にかけより助走に乗ったハイキックを親父の頭を目掛けて放つ。
しかし、それを紙一重でかわし後ろに下がる親父。
その後勢いに乗って後ろ蹴り、体をひねって裏拳と連続技を出した。
しかしこれも呆気なく後ろに下がられてかわされる。

舌打ちをして裏拳をした後に地面についている右足に力を入れて親父に一気に近づき胸倉をつかみ背負い投げをする。ここは板張りなので普通に落ちたら痛いどころでは済まなくなる。
しかし、この親父の場合は殺す気でやらないとこっちがやられてしまう。

「まぁまぁだな」

地面に頭が着きそうになった瞬間に右手を地面につき投げさせない。
その後右手だけの力で体を中に浮かして俺から逃げる事に成功し着地する。
俺はバランスを崩してかっこ悪くその場で転ぶ。

親父は仰向けになった俺を見て笑う。
悪魔にしか見えないのは俺の目がおかしいのかな?後で母さんに良い眼科教えてもらおう。

親父は息子ということを忘れたんじゃないかというくらいに俺の腹を蹴飛ばした。
派手にぶっ飛んで道場の壁にぶつかった。

その後ずるずると落ちていき視界がかすんできた。

「空斗、そんな物か?高江古武術はどうした?」

「い・・・・・・今から使うから・・・・黙って見て」

俺は立ち上がりながら声を振り絞った。
すでに視界はぼやけて逃げ出したい気持ちがいっぱいだった。
だが、何時の日かのあの時の俺がそれを許さない。
ツーグの魂の名残が戦う事をやめさせない。やめる事を許さない。
そして高江の血がそれを許さない。

「んなこと分かってるから。・・・・・・・・引っ込んでろ」

「?空斗?とうとう頭までおかしくなったか?」

「うるせぇ。独り言だよ」

そう言うと構えを再び取って体に気を溜める。
ふぅと静かに深呼吸をする。

今気づいたけど野次馬ができている。
中には放送部の雀先輩と恵鞠先輩が混じっている。
カメラを片手に俺と親父の試合を見ているようだ。
今度の放送部の放送で使われるんだろうなぁ・・・・・・・・・・・・なら、

「なら、大技を見せようじゃないか」

「ほぅ」

視界が元に戻り意識がはっきりとしている。
これならやれる。

「高江古武術奥義の巻、風林火山」

「奥義か、こりゃ厄介だ」

親父は苦笑して後ろにニ、三歩ステップを踏みながら後ろに下がる。
さすが、親父。良く分かっていらっしゃる。

()!『発火炎上(はっかえんじょう)』!」

俺は親父に目にも止まらぬ速さで目の前に飛んでいく。
親父はヤバイと言う顔をして後ろに飛ぼうとするがすでに俺は親父の胸倉を掴んで自分のほうに引っ張る。そして左手で腹に一発。

「グッ!」

普通のパンチなら何ともない親父だが光の速さで殴る。
これは火のように激しく、そして強くという技。一発一発が激しく、体重がのっており重い一撃となる。殴ったり蹴ったりとは色々そのときの気分で決める技。あいまいなんだよな。

その後前かがみになった親父にまた、体重のかかった前蹴りを脇腹に一発。
親父は横に吹っ飛び地面に叩きつけられそうになる。
が、地面につく前に俺が親父の横に移動して肘を腹に決める。

ドドオオオオオオオオオン

物凄い音が聞こえて地面が揺れる。
そして俺は立ち上がり荒い息を整える。
地面にはくぼんだ痕と、木々が飛び散っていた。
そして何より、そこには親父の姿がなかった。

「七十点かな。あの状況で奥義が使えたのは誉めるよ」

親父は俺の真後ろに立って平然とした顔で喋っていた。
野次馬や座っていたルル達は驚いていたが高江家は全然驚かなかった。
何時もの事だ。止めを刺したかと思うとそこには居らず、後ろにたって攻撃されるか今のように得点を言うかの二択だ。さっきも予想できていたので驚きはしなかった。

「七十点って高評価しすぎじゃないか?」

「いいや、今のお前は丁度それくらいだ。奥義の火をあそこまで上手く使えるとは思いもしなかった」

「そりゃどうも」

俺はその場に座り込んで大の字にねころんだ。
道場の床が冷たくて気持ちよかった。

親が帰ってくるのは嬉しいんだけど毎回毎回、こうやって親父と拳を交わさないといけなくなるのが苦になってしまう。それさえなければな。

「空斗さん、大丈夫ですか?」

居候組みが上から俺を見下ろしてルルが心配そうに呟く。
俺は目を瞑って「一応大丈夫」と答える。

四人から「良かった」という声が同時に漏れてお互いに顔を見合わせる。
見事にハモったので驚いているんだろうか?

すると海波がルル達とは逆のほうに来て、顔のところでしゃがみこんだ。

「お兄ちゃん?大丈夫?」

「まぁな。何時もの事だけど。・・・・・・去年は何点だったけ?」

「五十三点」

「上がったな。点数」

去年はそういえば五十三点だった。
今年は色々あって普通に生活していても自然と鍛えられていたから良かったのかもしれない。
そのへんは自分で自分を誉めてやりたい。

すると母さんが俺の首根っこを掴んでずるずると引きずる。
首が絞まってますって・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くうちゃん強くなったわね」

引きずりながら母さんが俺のほうを見ないで呟く。

「はぁ・・・・・・昔よりかはましになったかも」

「ましになったところじゃないわよ。貴方去年の事を覚えてる?」

「去年?」

思い出してみようと思うが思い出せない。
あ、いや、待てよ去年は確か技を出そうとした途中で親父にぶったたかれて気絶したんだっけ?

「去年も同じように負けたな」

「去年はくうちゃんは技の途中でやられたんでしょう?でも今回は貴方はお父さんにギブさせたのよ」

「どういう事だよ」

「簡単に言うとアレ以上するとお父さんが負けていたという事」

「はぁ?待てよ。俺は実際あの技は完璧じゃなかった。だから奥義が終わった後に『終焉』とは言わなかった。親父がいなかったから言えなかったんだよ。しかもあれ以上俺は動けなかったんだ。それがどうしてギブさせたことに繋がる?」

「話は簡単。あの後くうちゃんは後ろにお父さんがいた事に気づいていたんでしょ?」

「ああ、一応は」

「なら、奥義の続きをくうちゃんが続けていたらどうしていたと思う?お父さん本当はあそこから動けなかったのよ」

「となると、あそこで俺は諦めずに親父に攻撃をしておけば勝っていた。という事か?」

「そうなるわね」

母さんは道場の隅に俺を連れてくると手を離して俺と向き合った。
母さんの顔をまじまじと見たのは何年ぶりだろうか?
しかも、どっからどうみても二十代の女性である。まさか四十代と言っても誰も信じてくれないだろう。

「今くうちゃん失礼なこと考えていなかった?」

「ソンナコトアリマセン」

「片言なのが怪しいけどまぁいいわ。これだけは覚えておいてね」

母さんはそう言うと白い歯を見せて微笑みながらこう言った。

「どんな時でも諦めない事。いいわね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

母さんはそれだけ言うと親父の方へ歩き出した。
親父の方にはルル達全員が集合していた。

俺はそんな光景を見つつ、頭の中で母さんの言葉をめぐらせる。

諦めるな、か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなこと、

「俺には面倒臭いよ。母さん」

そう呟き瞼を閉じて眠りについた。
空斗「面倒臭かった。というかマジで死ぬかと思った」
作者「お疲れ」
空斗「いや、マジで今回はシャレにならないから」
作者「この小説のジャンルは?」
空斗「コメディー」
作者「コメディーは主人公が大抵不幸になるという悲しい定め「果てろ!」グハッ!」
空斗「・・・・・・・・・・・・・・俺の幸せを返せー!」


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