3.ゲーム
「ルールは簡単。呉さんが謎を解くこと。OK?」
軽い調子で淡々と言う彩に、呉は無言で頷いた。
彩はそれを確認すると、腕を解いて右手を上げた。
パチンッと指が鳴る。
「これは実際にあった事件だよ。さぁゲームの始まりだ」
「三ヶ月前のあの日の出来事は今『見えない』」
一瞬にして空間が変わった。
コンクリートの壁は、ある研究室へと変わった。
「藍!」
うつ伏せに倒れている女性、藍に駆け寄り抱き起こす青年の顔は蒼い。室内には蜂が何匹か飛んでいた。そして、先程まで藍が座って眠っていたパイプ椅子が倒れていた。
青年は蜂に注意を向けず、ただ藍だけに集中し、腕を取り脈を確かめた。何の反応も示さない腕の次に首へと手を当てる。脈がないことを信じたくないというように、蜂に刺される感触さえ、気にしていなかった。
「堂島くん・・・」
「駄目だ・・・死んでる」
堂島は藍を一度強く抱き締め、ゆっくりと横たえた。淡い、黒の髪が広がる。
もう動かない、体。
「致死量の毒を持った蜂はいなかったはずだ。・・・まさか」
藍の白衣を捲った堂島は予想が当たっていたことに驚愕した。そして同時に怒りが込み上がってきた。
「この死骸・・・」
一点を見つめたまま離れない視線。
蜂に刺された痛みはもう感じてはいなかった。
「堂島くん! あなた刺されているじゃない! 早く手当てしないと」
高橋の声が虚しく響く。堂島の耳には何の音も入っていなかった。
―――断片的に現れたこの光景に、呉は何かの意味を感じとった。彩の意図するトコロは。 |