区切り符号について
区切り符号もしくは約物(句読点及び括弧類)について
小説を書きはじめてみれば、作法にも触れる機会があるかと思います。
小説を読む環境も多種多様となり、作法に必ずしも則らなければならないというよりも、見やすければどちらでも構わないという意見も増えつつある昨今です。
個人といたしましては、読み手であれば作法云々よりも読みやすさ重視なのですが、書き手となりますと最低限の作法が気になったりもします。
趣味で書いております素人ですので、作法全てを網羅しているわけではないのですが、書いていてどうしても気になることが一点あります。
台詞以外、引用時での括弧の存在です。
基本、改行後の文頭は一字下げるとありますが、括弧は例外として一字下げないというのはご存知の方も多いと思います。
では、台詞以外の引用の場合はどうなのであろうか?
そのあたりを調べた結果を以下にまとめてみたいと思います。
【くぎり符号の使ひ方〔句読法〕案】
1 。 句点
2 、 読点
3 ・ ナカテン
4 ―― ナカセン
5 …… テンテン
6 「 」カギ
『 』フタヘカギ
これらの記号は『くぎり符号』と称し上記を含め約二十種あり、その文の内容と文体に応じて適当に用いるよう、昭和二一年文部省が編集作成を行い、現在の教科書や国語表記の指針とされております。
以下、句読法(案)より個人的に気になる部分をあげていきたいと思います。
ほかの記号について気になるようでしたら、文化庁(http://www.bunka.go.jp/)に資料がありますのでご覧ください。
国語施策・日本語教育>国語施策>表記の基準に関する参考資料>くぎり符号の使ひ方.pdfにて確認できます。
1 。 句点
・「 」(カギ)の中でも文の終止にはうつ。
「どちらへ。」
「上野まで。」
・引用語にはうたない。
これが有名な「月光の曲」です。
・引用語の内容が文の形式をなしていても簡単なものにはうたない。
「気をつけ」の姿勢でジーッと注目する。
・文の終止で、カッコをへだててうつことがある。
【注】
小説の書き方として、閉じ括弧の前に句点を入れてはいけないと謳ってる場合があります。
文化庁の問題問答集に以下の内容がありました。
Q
「お早う。」とかっこの中にマルをつけるがよいか。それとも「お早う」でよいか。
A
原則としては「お早う。」のほうがよいでしょう。そのうえで個人的な好みで「お早う」とだけにしておくこともありましょう。
その点、どちらにしても文法上の誤りではありませんが、昭和21年3月に出た文部省国語調査室の「くぎり符号の使ひ方」によれば「お早う。」とします。
上記の回答により「お早う。」とする表記は間違いではありません。
ただし、印刷を前提とする小説の場合、組版の都合もあるということは覚えておくとよいかもしれません。
興味のある方は、国語施策・日本語教育 > 国語施策情報 > 国語シリーズ > No.26 国語問題問答 第3集 10.表記法上の諸問題 くぎり符号についてを参照ください。(http://p.tl/K4KB)
2 、 読点
・対話または引用文のカギの前にうつ。
さっきの槍ヶ岳が、「ここまでおいで。」というように、
・対話または引用文の後を「と」で受けて、その下に読点をうつのに二つの場合がある。
「なんという貝だろう。」 といって、みんなで、いろいろ貝の名前を思ひ出してみましたが、
「先生に聞きに行きましょう。」 と、花子さんは、その貝をもって、先生のところへ走って行きました。
「おめでとう。」「 おめでとう。」と、互に言葉をかわしながら
「といって、」「と思って、」などの「と」にはうたないが、「と、花子さんは」というように、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合にはうつ。
3 ・ ナカテン
・年月日の言い表わしに用いる。
平成二一・六・一
4 ―― ナカセン
・ナカセンは話頭をかわすときに用いる。
「それはね、――いや、もう止しましょう。」
・語句を言いさして余韻をもたせる場合に用いる。
「まあ、ほんとうにおかわいそうに――。」
・カギでかこむほどでもない語句を地の文と分ける場合に用いる。
これではならない――といって起ちあがったのがかれであった。
・かるく「すなわち」の意味をあらわす。
この海の中を流れる大きな河――黒潮は、
心持――心理学の用語によれば情緒とか気分とか状態意識とかいうのであるが、
・補助的説明の語句を文中にはさんで、カッコでかこむよりも地の文に近く取扱いたい場合に用いる。
ふと、荒城の月の歌ごえが――あの寄宿舎の窓からもれてくるのであろう――すずしい夜風に乗って聞えてくる。
方法論――それは一種の比較的形態学である――は、
5 …… テンテン
・テンテンは、ナカセンと同じく、話頭をかわすときや言いさしてやめる場合などに用いる。
「それからね、……いやいや、もうなんにも申し上げますまい。」
「それもそうだけれど。……」
・テンテンは引用文の省略(上略・中略・下略)を示す。
そこで上述のごとき結果になるのである。……
6 「 」カギ
『 』フタヘカギ
・カギは、対話・引用語・題目、その他、特に他の文と分けたいと思う語句に用い、これにフタヘカギを用いることもある。
「お早う。」
俳句で「雲の峰」というのも、この入道雲です。
国歌「君が代」
この類の語には「牛耳る」「テクる」「サボる」などがある。
・カギの中にさらにカギを用いたい場合は、フタヘカギを用いる。
「さっきお出かけの途中、『なにかめずらしい本はないか。』とお立寄りくださいました。」
・カギの代りに〝 〟(ノノカギ)を用いることがある。
これが雑誌〝日本〟の生命である。
【教科書】
教科書で有名な光村図書出版様では「 」について以下のように説明をしています。
要約しておりますので、詳細を確認したい場合は光村図書出版様の言葉の質問箱(http://p.tl/DIVj)でご確認ください。
基本として、原稿用紙での使い方は教科書での表記と同じであると踏まえた上での回答です。
Q 段落の冒頭に「 が出てきた場合、どこから書き始めるのか。
A 文章構成の決まりでは文頭は一字下げとなっているが、会話文の「 に限り一字下げは行わない。
ただし、会話文以外の「 については一字下げを行っている。
ここまでの結論として、教科書や参考書の類では会話文に限り一字下げるが、引用文に関しては下げない形でまとめられているようです。
また、新聞では全てにおいて一字下げが鉄則です。
一般書においては出版社によって半角下げなところもありますが、一字下げが行われていないところが多いようです。
【DTP・日本語組版処理の要件(日本語版)】
前提として、行頭の字下げを全角空きとする場合であるとされています。
1 全角スペース+半角括弧の例
■「初めまして」
2 全角スペース+半角スペース+半角括弧の例
■▪「初めまして」
3 全角括弧のみの例
「初めまして」
1は日本語文書の組版方法の基本として採用されているが、オプションとして1か3の選択ができる。
3は小説など会話が多い場合、行頭の括弧の字下げを全角空きにすると下がりすぎになることから考えられた方法であり、これが一般書にも採用されるようになっている。
講談社、新潮社、文藝春秋、中央公論新社、筑摩書房など文芸関係の出版社では3の方法が採用されている。
岩波書店やその他の出版社では1の方法を採用している。
以前の岩波書店は2の方法であり、この方法を採用している例はかなりあったが今日では採用している例は少なくなった。
標準校正必携第8版 組方原則および調整にも以下のとおり記されております。
特殊な場合(古典物や字下げして別行に組んだ引用文、体裁を重んじる広告文・手紙など)をのぞき、文章の書き出しは全角下がりとする。
結論として、一般書では3の形式が主流であり、会話文に限らず引用文にかんしても字下げは行わないのが出版関係では主流のようです。
つまり小説を書く上で、文頭に「 がくる場合は、括弧内の内容にかかわらず一字下げを必ずしもする必要はないということになります。
興味がありましたら『日本語組版処理の要件(日本語版)』(http://p.tl/Eo9P)3.1.5 行頭の始め括弧類の配置方法をご覧ください。
図解入りですので大変分かりやすいです。
【注】
小説の書き方として、ダッシュ、三点リーダーは二つもしくは偶数個を使用しなければならないと説明されています。
なぜ二つを繋げて使用しなければならないか?
wikiでは、リーダーは二つ繋げて使用するとありますが、なぜという問いに対して明確な回答は得られませんでした。
可能性の一つとして、組版の影響が大きいのではと思っております。
印刷には『日本語 組版規則』という規格が設けられており、ダッシュ及びリーダーは約物と呼ばれる記号に分類されています。
現在、閉じ括弧の前に句点を入れてはならないといった禁則処理が小説作法として認識されているように、ダッシュ及びリーダーもこの規格の影響を受けているのではないかと推測いたします。
個人的意見ではありますが、印刷を前提とするのであれば文章の書き方も規格に沿うべきであり、ブラウザで楽しむだけであれば句点同様必ずしも則らなければならないというものではないと思います。
以上を踏まえた上で、実際の小説ではどのように印刷をされているのかサンプルをあげておきます。
「 字下げ無し
『 字下げ無し
( 字下げ無し
―――― 字下げ有り
………… 字下げ有り
おまけ
地の文、「会話文」 と地の文のあとに読点があり括弧始めの表記も有り。
地の文。―――― もしくは ――――。地の文 の表記も有り。
地の文、―――― もしくは ――――、地の文 の表記も有り。
地の文。………… もしくは …………。地の文 の表記も有り。
地の文、………… もしくは …………、地の文 の表記も有り。
小説の書き方にかんするサイトは多々あり、こうしなければならない、これはいけないとされていることがあります。
自分なりにWEB上で調べただけの結果ではありますが、公式な書として文章をまとる必要があれば表記法のルールに則るべきでしょう。
ですが、小説は公式ではなく娯楽です。
形にとらわれ面白味を欠いては意味がありません。
結果、今の小説のスタイルができあがっているのだと思います。
ただし、小説での話しであって、実際には表記ルールに従わなければならない場合もあるということは心に留めておくべきかと思います。
つまり、考えるな、感じろってことです。