姫と騎士と彼女と俺と(6/34)縦書き表示RDF


姫と騎士と彼女と俺と
作:アバウト



6/ピーン!ときた


「そんな!おかしいって!昨日は30分以上かかったのに!」

驚愕の事実が判明しました。俺は昨日この俳桜学園に来るまでに、30分とちょっとを要した訳ですが、なぜだか今日は20分程度で来れました。しかも、結衣の歩くペースに合わせているため、昨日より歩くペースが落ちているにもかかわらず。

「え?もしかして昨日迷ってたの?」

と、俺の独り言を聞いてた結衣が確信をつついてくる。

「そ、そんなわけないじゃないか。は、ははは」

笑ってごまかしておく。

「じゃあ、またな結衣」

「うん、ばいばい」

俺は、俳桜学園の高等部に通うことになった。結衣は中等部だ。この学校は、前にいた高校と違って、かなりでかい上に真新しい。まるで大学かと思うような造りだ。結衣の話だと、どっかのでかい会社がこの学校のバックにいるようだ。

高等部の玄関は東側にあり、中等部の玄関は西側にある。なので、途中で結衣と分かれた訳だ。

今日からこの学校に通う俺は、少なからず緊張している。

のが普通なのだが、生憎俺はあまり緊張しないタイプだ。前の高校では、クラスメイトとかと適当に距離を保っていたため、友達と自信を持って呼べる人はいなかった。友達が欲しくなかったと言えば嘘になるが、俺はどうしても相手に自分を取り繕って見せる気にはなれない。愛想笑いもしなければ、楽しくもない話に無理に乗ったりもしない。それに、以前の俺は憧れてはいても、友達と笑いあう気にはなれなかった。

でもまぁ、そう気合を入れることもないだろう。

校内に入ると、まず職員室に行く1階ホールに校内案内板があったので、迷わずこれた。や、心配だったわけじゃないよ。すると、入り口あたりで先生と思われる女性が俺に話しかけてきた。

「おはよう。藤宮 蓮君よね?初めまして、私があなたの担任になる西 愛美です。よろしく!」

と、俺にお辞儀をしてきた。つられて俺もお辞儀をする。ちゃんと「よろしく」と言うのも忘れてないよ加奈子さん。

気の良さそうな人でよかった。ご存知俺は無愛想なので、出来れば堅苦しくない人が良かったのだが、なんとまぁ願いが叶ったようだ。神様ありがとう!と心の中で神に感謝する。しかもなかなか綺麗な人で、お姉様みたいな感じがある。

「それじゃあ、教室に案内するわ。ちなみに、藤宮君のクラスは2年1組だからね。みんないい子ばっかりだから、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

どこをどう見たら俺が緊張しているように見えるんだろう?いい人だけど目は節穴のようだ。

そのあと俺は無言で西先生について行った。



***



「はぁい、みんな席について。HR始めるわよ」

と、クラスに呼びかける声が聞こえる。現在廊下で待たされているところだ。先生の呼びかけと同時に、学級委員の起立、礼という声が響く。

やべ、トイレ行きたくなってきた。や、別に緊張してとかじゃないよ。よく考えたら今日は俺いきなり寝坊したから、トイレ行ってないや。どうしよう、やべー、意識したら急にめっちゃしたくなってきたよ。そういえば、来る途中にトイレ見かけたぞ。なんかまだHRやってるし、急いで行けば大丈夫でしょ。先生!時間稼いどいて!と心の中で叫んで俺はトイレに急いだ。

その頃クラスでは。

「それじゃあ、嬉しいお知らせだよ!今日からみんなと勉強することになった人を紹介します!藤宮君、入ってきて」

シーン

「藤宮君?」

シーン

西先生が廊下に出て、なにやら驚いた顔をした後、叫んだ。

「藤宮ああぁ!!!」



***



ふ〜。良かった、間に合った。と、俺が気持ちよく用を足していると。

「藤宮ああぁ!!!」

「えぇ!?」

な、なに!?なんで俺の名前叫ばれてんの!?危なくはずすとこだったじゃないか。あ、こっちの話。あれは多分西先生の声。なんだか早く戻った方がいい気がする。単なる俺の勘なのだが、俺の悪いほうに働く勘は人一倍なのだ。

俺は来た時と同様、急いで教室の戻った。





「ふざけんなよ俳桜学園!」
帰れないじゃねーかよこの野郎!この無駄に広い校舎を何とかしろ。そして、階段には必ず校内の案内を用意しろ。1階にはインフォメーションセンターを設置しやがれ。

HR終了の鐘はもうとっくに鳴り、廊下が生徒で賑わっている。

おぉ、そういえば俺のクラスは1組だったはずだ。ちょうどいいことに、目の前に俺の目当てのクラスがあった。表札を見てみると、しっかりと2年1組の文字が。なんだかさっきと様子が違う気がするが、俺の気のせいだろう。ということで、クラスを覗いてみると、後ろから聞きなれた声が聞こえた。

「お兄ちゃん!?ここでなにしてるの?」

思いもよらない妹の登場。できれば俺にこの学園内を案内していただきたい。

「お前こそなんでここに?」

君はいつから高校生になったんだい?

「や、ここ2年の校舎だよ?」

「うっそぉ!?」

そ、そんなはずは!?しかし言われてみれば周りの生徒が明らかに幼いのが分かる。は、はずかしいぃ…。これも全部この無駄に広い校舎のせいだ。何度も言うが、俺が方向音痴だとかそういうことは決してない………と思う。俺も2日連続でこのシュチュエーションはちょっと不安になってきた。

「もしかして迷ったのぉ?」

と、笑いながら言う結衣。

「そ、そんなことはない。結衣が心配で、見に来ただけだよ」

うん、我ながらこんな言い訳でごまかせるとは思ってませんよ。

その時、幸か不幸かアナウンスがなった。

「高等部2年1組の藤宮 蓮、至急、大至急!2年1組まで来てください」

西先生の声だ。あ、そっか。俺の紹介できなくてまだHR終わってないんだな。あの声、怒ってたな。

「お兄ちゃん、なにかしたの?」

「…実はな」

俺はこれまでのことを結衣に説明した。もう、教室に戻れたらなんでもいいや!

「で、教室に帰れなくなったわけだ。バカだなぁ、HR終わってからトイレにいけばいいのに」

少し呆れたように結衣が言う。

「返す言葉がないよ」と俺は苦笑い。

「悪いけどさ、俺の教室まで案内してくれない?」

「しょうがないなぁ。こっちだよ」

俺を先導してくれる結衣。なんだか周りの生徒に妙に見られてる気がする。もしかして結衣と親しげだからか?モテモテじゃん結衣。

「何してんの?早くしないとまた呼び出されちゃうよ」

「あぁ、待ってくれ」



***



「ありがとうな結衣」

「う、うん。それじゃあ……が、がんばってね」

と少ししどろもどろになって結衣は自分の教室に戻っていった。ここは我が2年1組の教室前。目の前には鬼の形相で仁王立ちしている西先生。もしかしたら角が生えるかもしれない勢いだ。

「藤宮君。私があなたになんて言ったか覚えてる?」

顔をぴくぴくさせながら質問してくる鬼。失礼、西先生。怖いっす。真面目に怖いっす。

「こ、ここで、ちょっと待ってて、と」

顔を引きつらせて答える俺。

「何してたの?」

「ト、トイレに行ってました」

「こんなに長い時間?さっきのあの子は何?あの子といちゃいちゃしにいったわけ?まさか道に迷って気づいたら中等部にいたとか?それであの子に送ってもらったとか?どこにそんなに方向音痴がいるんだよ。っていうか1時限目が私の授業だったからいいものの、他の授業だったらあなたの紹介できなかったんだからね。ちょっとはみんなに迷惑かけたって自覚あるわけ?転校初日くらい大人しくしてなさいよ」

ちょ、そこまで言うことなくね?悪かったよ。俺が悪かったのは認めるよ。だからってそんなに言うことなくね?ちょいと腹が立ってきましたよ〜!この鬼め!

「知るかボケ」

俺は精一杯の反抗をした。幼稚だとかそういう苦情は受け付けない。

「あぁん?東京湾に沈めるぞコラァ」

「・・・すいません」

この鬼やっぱ怖ぇ。神様、こんな先生が担任だなんてやっぱり俺が嫌いなのね?

キーンコーンカーンコーン

1時限目の授業の開始の鐘が鳴り響いた。

「なーんてね。びっくりした?でも、あんまりみんなに迷惑かけちゃ駄目だよ?じゃあ、説教はこのくらいにして、みんなに紹介するから入ってきて」

雰囲気が一変した西先生。なにこのドッキリ。この人どこまで本気なんだろう。なんなんだろうね、どっと疲れた。神様、好きか嫌いかどっちかにしてくれない?

教室内に入ると、クラス内にいた全員が俺に目を向ける。笑い声やひそひそ話しをしている人が目に付く。きっと俺の意味不明な行動や廊下での俺と先生との会話を笑っているのだろう。でもね、きっと君たちがあの尿意に襲われていたらきっと同じ行動をとったはずだ。

「初めまして、藤宮 連です」

俺は最低限の自己紹介をした。ここで、加奈子さんの第一印象が大事と言う声がフラッシュバック。もう少し何か言おうかと思ったが、西先生の一言でさえぎられた。

「じゃあ、藤宮君は後ろの窓際の席に座って」

俺は無言で席についた。それと同時に、授業が始まる。どうやら西先生の専門科目は英語のようだ。訳分からん英文を聞いていると、睡魔が襲ってくる。俺としては、最大の宿敵のような相手だ。しかし、さっき西先生を怒らせてしまった手前、居眠りしてもう一度怒らせるのは心苦しい。いや、正直に言うと怖い。女性を怒らせてしまったらどんなことになるか・・・想像しただけで恐ろしい。きっと陰湿ないじめが待っているに違いない。男ならフルボッコにして終わらせられるが。一応、小説だから作者も俺が傷つかない方向で物語を進めてくれるだろう。

ここはがんばって起きていよう。




ほどなくして俺は授業に退屈し始め、窓の外に目を向けた。
雲ひとつない快晴で、朝の日差しがさんさんと降り注いでくる。
思わずその日差しに目を細めるが、目は窓の外からそらさない。
空は大きかった。まるで自分とは正反対。
俺は、虚勢を張ってちっぽけな自分を隠して生きてきた。
けど空は、誰にでもどこからでも見えて、この地球上の生きとし生けるものすべてに目を向けて、いつもみんなに平等に光と言う愛情を配っている。
みんなが笑えば雲は晴れ、みんなが悲しめば、雨が降る。

そんな気がした。

今は快晴。俺に家族ができたこと、喜んでくれたのかい?

もちろん返事は聞こえない。けど、うなずかれたような気がした。多分これも、気がしただけ。





「…君、藤宮君!」

誰かを呼ぶ声で現実に引き戻された。藤宮って誰ですか?あ、俺か。

「え?」

「もう授業終わったよ」

教卓を見ると、西先生の姿は見当たらない。どうやら随分長いこと感傷に浸ってしまっていたようだ。

「そっか、ありがとね。教えてくれて」

ほどなくして俺の周りに人が集まってきた。色々質問される。なんで引越してきたとか、前の学校じゃどうだったとか、結衣とはどういう関係だとか、さっきのトイレ事件がどうだとか。適当にあしらっているが、正直うんざりしかけた頃、さっきの子が助け舟を出してくれた。

「ちょっとみんな、藤宮君困ってるでしょ。そのくらいにしときなって」

その一言でみんなが渋々戻っていった。

「ありがとう」

「ううん、いいのよ。私、神谷 司。よろしくね」

「あぁ、よろしく」

すると、前方に座っている人物が振り向き、話しかけてきた。

「俺は一ノ瀬 彼方。よろし・・・。」

なにやら自己紹介を途中でやめ、俺の顔をまじまじと見てくる。目前の男がなまじ男前なだけに、なんだか落ち着かない。数秒ほどたったところで、「あッ!」と声を上げて俺を指差してきた。

「お前、浅田だよな?浅田 蓮だろ!覚えてないか?孤児院で少しだけ一緒だったろ」

そういえばなんだか見覚えがある気がする。数秒考え込む俺。そして、ピーンっときた。

「あ、もしかして宮崎 彼方か?」

彼方とは、3年ほど前、少しの間だけ孤児院で一緒に暮らした。でも、俺は単なる孤児だが、彼方は親の離婚と再婚で、家がごたごたしている時に、孤児院の院長と仲の良かった彼方のお母さんが少しの間だけ孤児院に預けただけだ。それにしても男前になりやがって!

「そうだよ!今はもう一ノ瀬なんだけどな。お前がこっちにいるとは思わなかったよ。あの孤児院から結構遠いだろ」

「まぁ、色々あってな。昨日からこっちにきたんだ」

「昨日から!?随分急だな。しかも藤宮ってあの藤宮だろ?」

あの?藤宮って名字に種類とかあんの?

「あの藤宮とは?」

「あの、って藤宮カンパニーだけど」

え、えええ!!!藤宮カンパニーって言えば、一ノ瀬カンパニーと兄弟会社で、世界にも進出している大手の中の大手会社だ。訓さん、そんなこと一言も・・・。って一ノ瀬!?

「おま、もしかして一ノ瀬って?」

「ピンポ〜ン!俺の母さん、一ノ瀬カンパニーの重役の人と再婚したんだよね」

なんだか楽しそうに言う彼方。よかった。彼方は親の再婚に猛反対だっただけに、うまくいっているみたいで安心した。

「うまくいってるみたいでよかったよ」

「……いや、実はそうでもねーんだ。正直、俺はあの人を父さんだと思ってないし、母さんを許せない気持ちもまだ残ってる。仕方のないことなんだけどな…」

少し寂しげに言う彼方。こいつもこいつで苦労しているみたいだ。

「ま、お前が気にすることじゃないって!」

そう言って俺の方をポンポンと2回叩いて、教室をでてってしまった。それを心配そうに見つめてる神谷。はっは〜ん、ピーン!と来たよ俺。これ、言うべきだろうか?ほぼ初対面の人に確信をつついてもいいんだろうか?俺の視線の先には未だに彼方の出て行った方を心配そうに神谷。俺は一度はやめにしようかと思ったが、面白そうなのでやっぱり言ってみることにした。



どうですか?みなさんもピーン!ときましたか?










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