21/気になる視線
朝起きたら元気一杯の妹が目の前にいるのって…。
はぁ………。目覚めがいいのか悪いのか…。
言っておくが、結衣とは何もない。
ただ同じ布団で寝ただけだ。
や、寝たと言っても世間一般で言う寝たという意味ではなく……。
なんかどんどん墓穴掘ってる気がする…もういいや!
勘違いされても困るし、俺のプライドを守るためにもこうなってしまったいきさつを説明しよう。
って、プライドなんてちょっと前に捨てたんだったな…あれ?冷静キャラを捨てたんだっけ?どっちでもいいや!
何も考えず家を飛び出した俺は、やみくもに走った。
今ではもう定番気味になってしまっている方向音痴で、すぐに道はわからなくなり、何も考えずに走っていた俺は、感覚的に人気の無いところを目指していたのか、はたまたただの偶然か、それとも実は登山家の志望であったのか、いつのまにか山に登っていた。どこの登山家なんだ俺は!
ちなみにかなり遠いはず。
多分三時間は走るか歩くかしていたから。
そのあと何を思ったのか山で寝ている俺を結衣が……。
あれ?
「そういえば結衣、よく俺の居場所がわかったな」
「だから〜、お兄ちゃんの携帯のGPSで」
まぁたこの携帯は!………家出するとき置いてかなきゃダメだな。
で、結衣い見つかり、泣く泣く?この家に戻ってきた訳である。
幸いにも加奈子さんも訓さんも昨日は帰ってこなくて、俺のやらかしたことも結衣は黙ってくれるといってくれた。
もう面倒だから、回想はここで終了にする!
まぁ、なんだかんだで俺は帰ってきた。
でも、俺の心には何かが引っかかってるような息苦しい感じがある。
何かがおかしい。
今までに無かったような取り乱し方にしてもそうだし、一人になった時、なぜかこのまま死ぬような感覚に襲われたのもそうだ。
何かが………俺の中で何かが変わってきている。
っていうか狂ってきている感じ?
俺、この年で精神科の病院にお世話になるんだろうか…。
とりあえず、俺は不安と恐怖を覚えたのは確かだった。
まぁ兎にも角にも時間が時間だ。
今日学校に行けば、なんとなんと!四連休になる。
振替休日ってやつだ。
なぜ球技大会のすぐ後に休まなかったのかって?
そんなことは校長室の立派な椅子に居座っている独裁者に聞いてくれ!
「とりあえず」
「とりあえず?」
「飯、食うか」
「うん!」
ほら、結衣、ダッシュダッシュ!
…………。
………………。
「僕に作れと?」
あ、僕って言っちゃった。
「うん!」
元気よく答える結衣。
朝からよくこんなテンションが上がるもんだ。
俺には到底ついていくのは不可能。
「わかったよ」
これ以上の問答は俺の体力を浪費するだけだろうと思い、諦めて朝飯を作ることにした。
俺に朝飯を求めたこと、存分に後悔されてくれるは!
***
「何?……これ」
「見たまんまだ」
テーブルの上には2つの容器。その中には2分41秒前に入れたお湯が入っている。
これでわかった強者もいると思うが、あえて言おう。
カッ……
「カップラーメンじゃん!」
結衣が大声で叫ぶ。
今、俺が言おうとしたのになぁ。
「何か問題でも?」
「健康的にもだめだし経済的にもだめだよ」
経済的って……お前が言うか?
このバカに広い家に住んでるお嬢様は誰でしたっけ?
ま、今となっては俺もだけど。
「もしかして料理できないの?」
「俺に料理を求めるな。全部焦げるぞ」
「全部って、あはは!」
「くくっ、はははっ」
他愛もない話で、ひとしきり話し合った後、カップラーメンの三分が経過した。
こんな他愛もない話でも、俺が帰ってきたことが認識させられる。
ちなみに、料理なんて全く出来ない。
何故か不味くなるんだこれが。
「食べよっか」
「だな」
朝からカップラーメンを食べた俺と結衣は、ぱぱぱっと制服に着替え、意気揚々と学校に出発した。
意気揚々と出発したのはいいが、学校につくと、何故かほかの生徒の目線が気になる。
何?
俺、有名人?
「蓮!」
急に呼び止められ、振り向くとそこには彼方が立っていた。
「どうした?」
「結衣ちゃん、おはよ」
俺に呼びかけてきたにも関わらず、なぜか結衣に挨拶する彼方。
なにがしたい?
「ごめん、蓮借りてもいい?」
俺はモノか!?
「いいですよ。じゃあね、おにいちゃん。遅刻しちゃだめだよ」
いいのかよ!?
結衣はあっさり去っていってしまった。
それもそのはず、結衣の去った方向には香奈ちゃんと桜ちゃんが待っていたからだ。
やっぱ友達を待たせちゃいけないよね。
そんなこんなで、俺は彼方に半分嫌々ながらつれていかれた。
まぁ、単に教室に行っただけなのだが…。
それにしても俺の斜め前を歩くこいつはなんなんだろう?
さっきから一言も話さない。
しかも、なんだかさっきから周りの目が気になる。
教室に着くなり、彼方が口を開いた。
「なぁ、蓮。もう噂になってんだけどさ、芹沢やったって本当か?」
なんだ、そんなことか。
っていうか噂になってんの?話回るの早すぎない?
「あぁ」
ズビシ!
彼方が俺の頭をチョップしてきた。
「何すんだ!」
俺は頭をさすりながら抗議する。
「お前…そりゃまずいって!」
「なんで?」
「あいつ、この辺の学校しきってるやつだから、もしかすると仕返しにくるかもしんねーって!」
うっわー、芹沢ってそんな小さい男な訳?
まじかよちくしょー!
怖えーよちくしょーー!
でもチョップはないでしょ。
「なんとかなるだろ」
俺の内心とは裏腹に、全く違う答えが口から出た。
どういうこと?
まじでなんとかなると思ってんの?俺!
「まぁ、2人でなんとかするしかないか…」
彼方が救いの手を差し伸べてくれた。
しかし…
「いいよ。自分で何とかする。っていうか、何人来たって結果は同じだ」
何かっこつけてんだ俺ー!
俺にとって唯一の救いの手を、俺はあっさりと振り払ってしまった。
でも、嘘は言ってない。あんな最低野郎となんて何回やったって負ける気がしない。
あんなへなちょこが何人いようが、絶対逃げない。
「バカ!あんたなんかすぐにやられるに決まったるじゃない!」
あーあ、この異常に俺を否定するやつは一人しかいない。
神谷、降臨。
「あっそ」
そういう俺も、いつもどうりに適当に流す。
っていうか、流さなきゃマイハートがもたない。
もつわけない。
「ちょっと!真面目に言ってんのよ!っていうか、なんで芹沢に手出したのよ!」
あーもー、うるさいな。いーじゃないのよ。ムカついたんだから。
「それ、俺も気になる」
乗っかんなくていいからぁ!
「別になんでもいいだろ。もうやっちゃったんだし」
俺の軽い発言に、神谷はご立腹のご様子。
彼方は大笑いしている。
ってか、神谷!拳を握り締めるな!まじで危ない!
「そうだよ!別にいいだろ?勝ったんだから」
俺に賛同してくれたこの男勝りの女の声は、環さんだろう。
何しに来た?それは多分話をややこしくしに。
「何しに来た?」
「あんたの様子を見にね」
「俺はいたって健康「あなたは?」
怖いぐらいの視線を放つ神谷が聞いた。
俺のセリフにかぶせるのも忘れない。
ちょっと、腹が立ちますね。でも正直怖いのでそんなこといえない。
どこまで俺を怖がらせる?
神谷と向き合っていられず、俺は環さんと向き合った。
振り返ったと同時に、環さんの左頬に湿布が貼られているのが目につく。
多分、まだ腫れてるんだろうな…。
「あ、大丈夫大丈夫!もう痛くないし、少し赤いから湿布で隠してるだけだから!」
俺の視線に気付いた環さんが、妙に元気な声で言う。
でもそんなわけがない。
絶対まだ腫れてる。
っていうか、あの腫れが一日二日じゃ多分引けない。
ボクサーとかは、殴られた次の日あたりに腫れがくるっていうし。
だがしかし、ここで俺が一番に気になったのは、環さんには悪いが顔の腫れではない。
よく読み返してみてくれ、神谷はなんと言ってる?
そう、神谷の質問を完全にスルーして、微妙に互いを気遣った良い感じの雰囲気で話してしまったのだ。
今現在俺は、神谷と環さんに挟まれるという、両手に爆弾、最悪のバッドポジションを不覚にも獲得しているのだが…。
しかも、俺の予想だと多分この二人の相性は良くないと思われる。
正直、振り向くのが怖い。
数秒間の硬直が続いた後、ホームルームの鐘が鳴った。
まさにナイスタイミング。
環さんは何も言わずに教室を出て行くと思いきや、「昼休みに、屋上でね」とかいって消えていった。
神谷は神谷で「上等だ」みたいな顔してるし。
全く、迷惑な奴らだ。
っていうか、環さん、何しに来たんだ?
話をややこしくしただけな気がする。
あ、またまた視線が気になる。
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