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姫と騎士と彼女と俺と
作:アバウト



10/新しい家族


家についた頃には、もう夕食時だと言う事で、香奈ちゃんがうちで食べていくことになった。この機会に、猫の名前を決める会議を開くことに決定した。

「コホン…それでは、子猫ちゃんの名前を決める会議を開きま〜す!」

この無駄に長い会議命を言ったのは、もちろん俺ではなく、結衣だ。それに合わせて、俺と加奈子さんと香奈ちゃんが拍手を送る。

「じゃあ、まずお兄ちゃんが案を出してくださいっ!」

「…俺?」

う〜ん、名前かぁ……。

「タマ」

「「「却下」」」

…これもこの町で流行ってるんだろうか?もしかしたら流行の最先端にいる町なのかもしれない。ってか却下かぁ、タマって猫らしくていいと思うんだけどなぁ。

「なら結衣は案あるのか?」

「もちろん!」

まるで聞いて欲しかったかのように即答された。さてさてどんな名前なのでしょうか。

「あのね、雨の日に拾っちゃったから、晴れって字でハル!」

自信満々で発表する結衣。

「いいじゃないか」

「いいわね」

「いい名前だよ」

加奈子さんも香奈ちゃんも同意してくれた。結衣は意外にもしっかりした名前を考えていたようだ。

「でも、今のは男の子の名前なんだけど、女の子の名前が思い付かないんだよ〜。というわけで、香奈ちゃん案だして」

「え?私?ん〜」

いきなり話を振られた香奈ちゃんはお困り顔だ。う〜ん、ってかさ、こんなことしてたら飯食えないんですけどぉ!育ち盛り?の俺にとって朝昼晩のご飯はかかせないものだ。

「…タマ」

散々悩んだ末に俺と同じ答えにたどり着いた。ここは共感せずにはいられない。
ってかね、タマの何が悪い。その名前を口にしたら一発で猫だってことが相手に伝わる上、なんだか愛嬌のある名前じゃないか。

「やっぱタマになるよね」

「なりますね」

なんだか香奈ちゃんとは気が合いそうだ。

「女の子はタマで決定だな」

「え〜!」

「文句なら香奈ちゃんに言ってくれ」

「ええ!?」

俺の土壇場の裏切りに香奈ちゃんはよっぽど驚いた様子。
俺はこういう奴なんだ。よく覚えておいてもらいたい。

それで会議は終了し、普通の夕食になった。今晩の夕食はオムライスで、これがなかなか美味しかった。いや、かなり美味しかった。
この家は金持ちだけど、家が大きい以外は普通の家庭とさほど差はない。
毎食無駄に豪華にしたりしないし、無駄なお金がかからないようちゃんと節約だってしている。

夕食が終了し、俺と加奈子さんが食器を洗っていると、リビングの方から「みゃ〜ん」と子猫の鳴く声が聞こえた。そのあとに、結衣と香奈ちゃんの歓声が聞こえる。俺は安心のため息をついた。

「気が付いたみたいね」

「うん。うまくなついてくれるといいんだけど」

「あら、蓮ちゃんは動物に好かれるって院長が言ってたわよ」

「昔は……動物しか友達がいなかったから」

そういうと、加奈子さんは少し寂しい顔をした。

「今は、加奈子さんと訓さんのおかげで友達もできた」

これでは取り繕っているように聞こえるが、これは本当のことだ。俺は、藤宮夫妻には心から感謝してる。

「俺、なぜか動物がよってくるんだよね。でもあんまりなつかれると結衣に嫉妬させるかもな」

その一言で、やっと加奈子さんは笑ってくれた。

「そうね〜。女の子の嫉妬は怖いわよ?ほら、あとはいいから、子猫の様子見てきてちょうだい」

「了解」

俺が子猫の様子を見に行こうとしたとき、加奈子さんが俺に言った。

「こっちにきて………本当によかったと思ってる?お母さん、またなくてよかった?」

俺は迷いなく答えた。

「今はあなたが母親だよ。母さん」

そう言って俺はリビングに急いだ。


***



リビングに行くと、なんだか子猫の様子がおかしかった。

「どうしたんだ?」

「なんだか警戒してるみたいなんです」

結衣がもう一度手を伸ばすと、ハルは「ふしゃあ」と威嚇の声を出した。
目覚めたら知らない人が目の前にいたんだ。
警戒してとうぜんかもしれない。
それに、この子たちは人間に捨てられたんだから………。

「さっきからこの調子なの」

「そっか」

ハルが、後ろの怯えているタマを守るように立っている。きっと必死に妹を守ろうとしてるんだろうな。

「お前、いいお兄ちゃんになるよ」

そう言って俺はハルの頭を撫でた。最初は嫌がるようにしていたが、すぐに気持ち良さそうに鳴いた。それを見たタマも、警戒を解き、俺の足元まで歩いてきた。

「え〜!なんで〜?」

「すごいですね!」

2人が歓声を上げる。

「ほら、もう大丈夫だから」

俺は、タマを結衣の膝の上におき、ハルを香奈ちゃんの膝の上においた。

「ほんとだ〜。ほんとになんで?」

子猫たちの豹変っぷりに結衣も香奈ちゃんも驚いている様子。

「昔から動物にはなつかれるんだ。なんでかわからないけど」

「そうなんだ〜。いいな〜。私が触ろうとしたら、ふしゃ〜ってなったんだもん」

ちょっとしょぼくれている結衣。ソファーに座りながら、子猫に話しかけている。早速結衣が嫉妬しちゃったみたいだ。

それから5分ほどたってから、香奈ちゃんがつぶやいた。

「あ、私そろそろ帰らなきゃ」

時計を見てみると、時計はもう9時をさしていた。

「もうこんな時間か、送ってくよ。結衣…あれ?」

ソファーの上でさっきまで起きてたはずの結衣が、寝息をたてていた。

「寝たのか」

あどけなくて幸せそうな顔で寝ている結衣。それがともて愛しくて、壊したくなかった。今日はいろいろあったし、結衣も疲れてたんだろうな。

「香奈ちゃん、結衣ここまま寝かせておいてくれない?俺が送ってくから」

「それはいいですけど。いいですよ?送ってもらわなくても」

「そういうわけにはいかない。ちゃんと送らないと結衣に怒られる」

「あははっ、じゃあよろしくお願いします」


俺たちは加奈子さんに挨拶をして、家を出た。


「やっぱり夜はちょっと冷えるな」

「そうですね」

「今日はほんとに世話になった。ありがとう」

俺は香奈ちゃんに向かって軽く頭を下げた。

「いいですよ。気にしないで下さい。私も結衣ちゃんのお兄さん見れたし」

俺ってそんなに有名?照れるな。

「結衣ちゃん、いつもみんなに自慢してるんです。優しくてかっこいいお兄ちゃんができたって。あ、でも結衣ちゃんから口止めされてるから今のは言っちゃだめですよ?」

「了解。内緒にしとく」

結衣が……ね。ますます照れるな。あとでどんな顔して合えばいいんだろう。まぁいつもどうりが一番だろう。

「でもいいなぁ、結衣にもお兄さんできて」

「え?」

「あ、私の友達に一ノ瀬 桜っているんですけど、その子にも3年くらい前にお兄ちゃんができたんです」

一ノ瀬?ってあの一ノ瀬?彼方?

「それって彼方のこと?」

「そうです。知ってるんですか?」

「あぁ、比較的仲が良いやつだ。香奈ちゃん、兄がほしいのか?」

「はい!ずっと前から憧れてて、最初は私と桜と結衣ちゃん3人ともお兄ちゃんがほしいって言ってたんですけど、なんだかみんなお兄ちゃんできちゃって……」

少し寂しそうに言った。俺は何か元気づける話題はないかと思ったが、ありきたりなのしか思い浮かばない。それでも一応言ってみる。多分断られると思うんだけど。

「俺でよかったらいつでも兄変わりになるよ」

「ほんとですか?それじゃお言葉に甘えて…って言いたいとこですけど、結衣が怒るんでやめときます」

やっぱり断られた。香奈ちゃんはかなり空気の読める子だ。俺の中で空気読めるってことでKYとしておこう。ちなみに空気読めないのKYはまだ登場していない。登場するかも怪しいが。

「あ、私の家あそこなんです」

香奈ちゃんは1つの高いマンションを指差して言った。何階くらいあるのだろう。見上げていると首が痛くなった。

「何階?」

「15階です」

「……がんばって」

「え?」

「いや、別に」

何を隠そう俺はちょっと高所恐怖症なのだ。前に東京タワーを登った時なんか死にそうになった。あれは冷静でクールな蓮ですら歯が立たなかった。まじで東京タワーは怖い。さすがは日本を代表する建造物。

「じゃあ、今日は本当にありがとう」

「はい、何かわからないことがあったらいつでも聞いてください。送ってくれてありがとうございました」

香奈ちゃんは俺に一礼してからマンションに入っていった。



***



家に帰ると、タマが出迎えてくれた。

「みゃ〜ん」

「ただいま」

リビングに行くと、加奈子さんも結衣と一緒にソファーの上で眠っていた。その横で何気にハルが寝ている。

「タマだけか、起きて待っててくれたの」

俺は深いため息をついてタマを撫でると、タマは気持ち良さそうに目を細めた。その時、結衣が起きた。

「お兄ちゃん…あれ?香奈ちゃんは?」

「さっき帰ったよ。今送ってきたとこ」

「起こしてくれればよかったのに…あ!香奈ちゃんなんか変なこと言ってなかった!?」
いきなり香奈ちゃんの心配が的中した。結衣って何気に勘がいい。

「……言ってない」

「ほんとに〜?今の間は何?」

「気のせいだ。間なんて無い」

なんだか訝しげな目で見てくる結衣。もしや嘘がばれた!?

「……お兄ちゃん、香奈ちゃんには優しいよね」

嘘はばれてなかったけど、結衣が思いもよらない発言をした。なにそれ?俺は完璧分け隔てなく接してますけど。

「そんなことないよ」

「ほんとにぃ?」

「ほんと」

これ以上疑われるのは嫌なので、できるだけ優しく言った。嫉妬している結衣もまた可愛い。

俺が頭を撫でると、結衣は気持ち良さそうに目を細めた。それがタマと似てたのは、言うとまた機嫌を損ねるので内緒だ。

なにはともあれ、藤宮家は2人、正確には2匹の家族が増えた。









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