その輝くような笑顔、俺にも向けてくんねーか?
俺のこと、もう少し見てくれよ。
顧問の急な用事で部活が中止になり帰路に着いた山本は、前方に獄寺の姿を見付けて口角を上げ駆け寄っていった。
「うぃーす、獄寺! ツナはどうしたんだ? 一人で帰るなんて珍しいんじゃねー?」
声をかけながら肩を叩くと、煙草を咥え眉間に深く皺を刻み不機嫌さを露にした獄寺が振り返る。
「十代目は笹川とお帰りになるって言ってたんだよ。お邪魔するわけにいかねぇだろーが」
「ずいぶん機嫌悪そうな。少しは笑ったらどうだ?」
「なんで楽しくもねぇのに笑わなきゃなんねぇんだよ。ざけんなッ」
笑顔で顔を覗き込んだ山本だったが、ギロリと睨まれるとハハと乾いた笑い声を上げ姿勢を正した。
少し歩くと公園が目に付き、山本が獄寺の手首を掴むと走りだす。獄寺は掴まれた手を振り払おうと手を引いたが、山本の力は思ったよりも強くてほどけずに、二人は公園の敷地内に入った。
「テメェいきなりなんだよッ、離せ野球馬鹿!」
立ち止まった山本の背に向かって怒鳴りつけ、己の手首にある山本の手首を掴んで離させようとする獄寺。山本は獄寺の手首を離すことなく肩越しに振り返りベンチを指差した。
「ちょっと座って話していこうぜ?」
「はぁッ?! なんでテメェなんかと。いいから離せってんだよ! ぶっ飛ばすぞ!」
ポケットからダイナマイトを取り出す獄寺を見て目を丸くする山本。すぐに声を上げて笑うと獄寺の手を引いてベンチに歩む。
「こんな明るいうちから花火したってつまんねーだろ。いいから座ろうぜ。そしたら手ぇ離すからよ」
「花火じゃねェッ!……ったく、少しだけだからな!」
ベンチを前にした獄寺は暫し山本を睨み付けていたが、溜め息を付くと諦めた様子で乱暴に腰を下ろした。嬉しそうに口元を緩めた山本も獄寺の手を離して隣に腰を下ろす。
獄寺は相変わらず不機嫌そうに顔をしかめて休みなく煙草を吸い、山本はその様子を膝に頬杖を付いて眺めている。
「なあ、獄寺……」
「あァ? なんだ、よ……」
声をかけられ険しい表情で山本を見た獄寺は、山本のいつになく真剣な表情に言葉を詰まらせ視線を逸らした。
「ちゃんと俺の目ぇ見てくれよ」
「なんでだよ……見たくねぇ」
フンッと更にそっぽを向く獄寺に苦笑いを浮かべる山本。そっと獄寺との距離を詰めると上体を傾け獄寺の顔を覗き込んだ。
「……好きだぜ」
驚きに目を見開く獄寺。口から煙草を落とし、パクパクと開閉させ言葉を失っている。そんな獄寺を山本は僅かに眉尻を下げ、言葉が返ってくるのを待った。
獄寺の目元がジワジワと赤くなり、勢い良く立ち上がった。
「バカかテメェはッ! 俺は男だッ! 気色わりぃこと言ってんじゃねぇよッ!」
「そんなことわかってる。でも好きなんだ。仕方ねぇだろ?」
凄い剣幕で怒鳴り散らす獄寺に、山本はやっぱりと苦笑いを浮かべた。
でも獄寺の頬は赤く染まっていて、山本に期待を持たせる。
「あれ? 山本と獄寺君」
京子と連れ立って歩いていたツナが二人を見付け公園に入って来た。
その声を聞いた途端、獄寺は明るい笑顔を見せツナに駆け寄って行った。
「十代目ェッ! こんな所で会うなんて奇遇ですね! 一緒に帰りましょう! 十代目と、ついでに笹川も俺がお守りしますッ!」
「え? でも獄寺君、山本と……」
「いいんですよ野球馬鹿なんてほっといて行きましょう!」
困惑の表情を浮かべるツナを促し公園を出て行こうとする獄寺。
山本はその笑顔を見て溜め息をついた。
「相変わらずだけど、すっげー違い」
立ち上がった山本は、短く、力強く息を吐いて三人の後を小走りで追った。
「おーい、置いていくなよ!」
「うっせェッ! ついてくんな馬鹿本!」
相変わらずの冷たい態度としかめっ面。
だけどいつかは、それが笑顔になるって信じてる。
fin
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