「獄寺ー!」
「あん?」
学校の帰り道、振り返ると笑顔の山本。
俺は見なかったフリをして歩き続けた。だけど山本は無視を無視して俺の肩に腕を回して捕まえる。
「なんだよ、ちょっとくらい止まってくれたっていいだろ」
「んだよっ離せ! こんの野球バカ! 気安く触んじゃねーよ!」
山本の手を振り払おうとしたら、思ったよりも力が入っちまってバチンといい音を立てて叩いてしまった。
「あ……」
俺が悪くて謝らなきゃいけないのに、素直じゃない俺は何も言えない。気まずい空気。でも山本はそんなことを気にしていないのか、俺が叩いた手をヒラヒラと振っている。
「いってー。獄寺って案外力強いのな」
「──ふ、ふんっ」
調子が狂う山本の笑顔。
俺は山本を置いて歩きだした。すぐに山本が後を追ってくる。
「待てよ。一緒に帰ろうぜ」
何も言わない俺の頭をポンポンと叩く山本。睨んでやろうと振り返ったら、笑顔。
山本は俺が叩いて赤くなった手を俺に見せた。
「こんなの痛くねーぞ。だからんな顔すんなって!」
ヘラヘラと笑いながら、今度は俺の髪をクシャクシャにする。
俺がどんな顔してるってんだよ。確かに手を叩いたのは悪いと思うけど……。
「ほら、帰ろうぜ」
俺に差し出された山本の手。
「──き、今日だけだからな!」
俺はその手を握り返した。多分、俺の顔は真っ赤なんだろう。
「ん、今日だけな。俺ん家寄ってくか? 飯食ってけよ」
「誰がんなマズイもん……食ってく……」
山本のペースに飲まれるなんて嫌なのに、この笑顔。
俺が何を言おうと、何をしようと変わらない山本の笑顔。
調子が狂う。ああ、調子が狂う。
fin
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