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不穏な影

「……もう一度言ってくれないか?」


「何度聞いても同じだ。被害は王宮騎士と兵士数名が亡くなっただけだ。王都どころか王城さえ無事だ」


「どういうことだ? アレは失敗したのか?」


「分からん。青黒く変色して黒い煙を吹き出してたバカ王子は居た。だが亡くなっていたはずのロイスブルッグ伯爵が、あの世から舞い戻って神の奇跡で倒した」


「そんな馬鹿な話があるか!」


「疑うのならば自分で王都に見に行くといい。王城には伯爵が神の奇跡を起こした際に空けた穴があるし、今日伯爵の国葬が行われてる。それに私だって見たのだ! 天使に付き添われて天に帰る伯爵を!」


「有り得ん……」


「あのプライドの塊のようなミューラー公爵が、ロイスブルッグ伯爵に跪き泣いて詫びてたんだぞ! それに公爵は確かに伯爵から貴様の名前を聞いたと言ってる!」


 いったい何が起きたというのだ。


 アレは今のワイマール王国に止められるはずがない。


 そもそもロイスブルッグ伯爵はいつ亡くなったのだ!


「陛下も目を醒まされた。オルボア公国と隣接する国境は封鎖され。更に戦争を想定して、帝国に頭を下げてまで支援を頼んだ。帝国の返事も悪くない。オルボア公国の動きには、帝国の方が神経質になっていたからな」


 陛下が目を醒まされた?


 あの節穴の人形が?


 帝国と手を組んだだと?


 妙なプライドが先行して勝手に忌み嫌っていたのに?


 有り得ん。何もかもが有り得ん。


 ミューラーの捨て身の策か?


 いや、奴はそんな策を取るはずもないし、必要もなかったはずだ。


 ならばロイスブルッグは本当は神の使徒だったのか?


 まさか二十年前も、ワイマール王国を救うために神の奇跡を?


「次の王は暫定だがミューラー公爵だ。仮に陛下と公爵に何かあっても、こちらの息がかかった連中は外すと陛下が決められた。貴様の浅知恵のせいで全てパアだ」


 馬鹿な。この計画にどれほどの金と時間を注ぎ込んだと思ってるんだ。


「だから大人しく王太子が王になるまで、待てば良かったんだ。せっかく王妃共々精神魔法と薬で人形にしたのに」


「それは私の一存ではないわ! 東の国で進めていた計画を邪魔した者が居るのだ! 盗賊に擬装させた近衛兵二千を、見たこともない小型の飛行船で焼き払った奴に言え! あの国のエルフが手に入らなかったせいで公王陛下が方針転換されたのだ!」


 この売国奴が!


 全ては公王陛下の指示なのだ!


 空の勇者などと言われているおかしな男。


 恐らくは異邦人だろうが、奴が二度も我が国の邪魔をしておるのだ!


 まさか、ロイスブルッグにも空の勇者が?


 いや考え過ぎか。


 空の勇者は東の死の砂漠のデスワームを倒していたはず。


「まあいい。オレは見つかる前に逃げる。貴様の手配書はすぐに周辺国にも回る。この国を脱出するなら早くするんだな」


 クッ。マーチスがしくじらなければ。


 あの役立たずめ!


 陛下から多額の資金を援助されていたにも関わらず、ゴロツキ共すら手中に収められなかった奴のせいで。


 ヴェネーゼを手中に収めていればこんなことには!


 落ち着け。


 ここは我慢の時だ。


 どうせ公王陛下には誰も敵わぬのだからな!


 例え神の使徒だろうが、空の勇者だろうがな!





 ロイスブルッグの神の奇跡か。


 一応陛下には報告をしておくか。



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