かゆい
かゆい。かゆい。かゆい! かゆい!
猛烈にかゆい!!
背中の、どうしても指が届かないところ。
うーっ! ひーっ! くーっ!
ダメだ。
精一杯頑張ってみたが、どうしても届かない。
柱の角で擦ってみた。
難しい。うまくそこにヒットしない。
とにかく、ピンポイントでかゆいのだ。
あ、今かすめたのに。ダメだ、またずれた。
ますます我慢できなくなる。
何なんだ、このかゆさは?
鏡で見てみよう。
ゲゲッ、かゆいところ以外が、引っかき過ぎて酷い事になってるよ。
原因わからないな。鏡で見たのでは無理なのか。
そうだ、相棒に見てもらおう。
それが一番だ。
「なあ、俺の背中、凄くかゆいんだけど、どうなってる?」
相棒はチラッと俺の背中を見て、
「小さい虫に食われてるよ。そのせいだろ」
「ええ? 虫に食われてるのか? そいつは大変だ」
「おい、誰か来たぞ」
相棒の声に俺はハッとして明かりを消し、定位置に戻った。
コツコツと足音が近づいて来た。
警備員だ。巡回の時間か? いつもより早いな。
やばかった。
お、入って来たぞ。いつもは通り過ぎるのに。
「誰もいないよな」
奴は俺達の方に懐中電灯の光を向けた。
でも大丈夫。ばれたりしないさ。
警備員は立ち去りながら、
「いつ見ても理科室の人体模型と骸骨は気味悪いよな」
と俺達の悪口を言った。