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切ないくらい。
作:CHE.R.RY



06:闇の中の少女








――ピンポーン



「…はい」



俺がインターフォンを押すとしばらくして、ゆっくり玄関が開き灰原が出て来た



「来たぜ」

「呼んでないわ」



俺の台詞に即答で答える灰原。…やっぱコイツはコイツだな…。



「博士に留守番を任されたんだよ」

「…全く。一人で大丈夫だって言ったのに」

「博士も心配なんだよ。わかってやれよ」

「………はあ」

「入るぞー」

「よう、ねーちゃん。えらい久々やな」

「あら、西の探偵さん。…工藤君、服部君が来てるならこんな所に来ないでどこかに行きなさいよ。せっかく大阪から来たのに失礼なんじゃないかしら」

(ねーちゃん!よおわかっとるやんけ…!!)

「いーんだよ。服部はトランプしてぇらしいし」

(……しもた。トランプしようなんて言うんやなかった…出来れば来とうないわ)

「…変な人ね。トランプなら毛利さんとしたら?私は遠慮わ」

「…いいんだよ。蘭は遠山さんといるし」

「遠山さん?」

「ああ、コイツの…」

「ああ、彼女ね」

「ちゃう!ただの幼なじみや!!!!」



俺と灰原の会話に凄い勢いと早さで服部がツッコんできた。

関西人はホントすげぇよな…こーゆうテンポの事に関しては。



「四人ですればいいじゃない」

「…オメーはどうしても追い出してぇのか」

「追い出すもなにも、まだ家に入れてないわよ。正確には追い帰すかしら?」

「どのみち来んなって事だろ?」

「ええ、そうね。わかってるなら帰って。博士には私が言っとくから」

「おじゃましまーす」



俺は少し開いているドアを強引に開き、中に入った。



「ちょっと!?工藤君!」



こうでもしないと、俺達が帰るまで灰原も引かないだろうから。


…やっぱ女一人で留守番するのはマジーからよ…。



「スマンなあ、ねーちゃん。邪魔するで」

「ちょっ…貴方まで…」

「ええやん。工藤は絶対帰らへんで?もう諦めとき」

「…………。」



流石に灰原も観念したのか服部とリビングに来た。



「灰原ぁー」

「なによ」

「腹減った」

「そう」

「飯今からだろ?」

「私一人だから作らないつもりだったんだけど?」

「じゃあ三人分作らなきゃなんねーな」

「………だから嫌だったのよ。世話が倍になるもの」

「気にすんなって」

「張本人の貴方が言わないでちょうだい」



灰原はそう言うとキッチンへ歩いて言った。


俺は服部と一緒にリビングのソファーに座りテレビをつけた。



「えらいストレートな嬢ちゃんやな」

「ハハっ確かにな」

「キッツイわ〜」

「慣れだよ慣れ。あんなんだけど…優しいよアイツ」

「どこがやねん。毒吐きまくりやんけ」

「わかってねーな。…あんな事言いながら、ちゃんと三人分の飯作るんだよ」



見た目や言葉で隠れてるけどアイツは優しい奴なんだよ。



「灰原ー」

「なによ」



俺はソファーから立ち上がりキッチンへ行く。

ヒョコッとキッチンに顔を覗かせて冷蔵庫を眺めている灰原に話しかける。



「何か手伝おうか?」

「余計な事を考えないでちょうだい」

「なんでもするって」

「…そう。ならコレみじん切りにしてもらえるかしら?」



そう言って灰原は俺に玉ねぎを投げた。


………げっ。



「あら嫌そうな顔ね。なんでもするんでしょ?」

「……………はい」



後には引けなくなった俺は玉ねぎのみじん切りを始めた。

目が痛くてボロボロ涙が出てくる。

チクショー!!変な成分飛ばすんじゃねーよォォ!!にゃろー…!!!!



「…おわっだ…」



鼻水でグズグズになった所で、玉ねぎはバラバラになった。



「ありがとう。もういいわよ」



そう言われスタコラとキッチンを離れた。

あそこにいたら、いつまでも目が痛い気がする。



「工藤〜お前なに泣いとるん〜」

「うるぜぇー…アイツらの攻撃が……」

「は?アイツら?何言うてんねんな」

「玉ねぎだ、玉ねぎ」

「ああ、パシらされてたんか」

「…俺が手伝うって言ったからな」

「へぇ〜〜〜」

「…なんだよ、服部…何か言いたそうだな」

「い〜〜や〜〜?べぇっつにー?」

「んだよ、それ」

「…やっぱあかんわ」

「なにがだよ?」

「あのねーちゃん…なんやしらんイライラするわ」

「じゃあ帰ればいいじゃねーかよ。別に無理強いした覚えはねーよ」

「それはあかん!!それは出来へん!!」



さっきから服部はワケのわからねー事を言う。

じゃあどうしてぇんだよ。無茶苦茶な奴だな。






「…なあ、工藤」

「だから、なんだっつんだ」

「お前は、あのねーちゃんを何で庇うんや?」

「何でって…当然だろ?」

「当然やないやろ。だってあのねーちゃんは…」



なんでだろう。服部の言いたい事がわかっちまう。

その先の言葉は聞きたくない。お前にその先は言ってほしくない。



「言うてまえば」



言うな。禁句だぞ服部。アイツも隣のキッチンにいんだぞ?



「服部。それ以上は言うな」

「なんでや?」

「…言うな」

「せやかて!!お前も思ってんねやろ?」

「んな事、思ってねーよ。…そりゃ最初は思って攻めちまったけど。今はそんな事思わねぇよ」

「なんでや?あのねーちゃんは、お前を小さくさした薬を作った張本人やねんで!?あのデカイ組織の一員でその薬で何人も死んで――…」

「服部ぃ!!!…やめろよ」

「…スマン。言い過ぎたわ…」

「…ああ。服部、もう言わないでくれ…それを1番気にしてるのはアイツだから……」



…だから宮野志保に戻らねーんだよ…。罪を感じてるから…

アイツが1番わかってるんだよ…だから俺は…



「俺、アイツに『守ってやる』って約束したんだ。だから…」

「…いつまで守る気や?何から守る気や?もうあの組織はないっちゅーに、お前は一体何からねーちゃんを守る気なんや?」

「…………わかんねーけど…守ってやらなきゃいけねーんだよ…」



じゃないと、アイツが壊れてしまいそうで。

消えてしまいそうで。



「……話し込んでるとこ悪いわね」



灰原の声で俺と服部は勢いよく顔をあげた。



「灰…原…オメーいつから…そこに、いたんだ?」

「…もしかして…聞いとった…か?」

「そうね。服部君が『それはあかん!!それは出来へん』って言った辺りからかしらね」



聞かれちまったのか…。



「ね、ねーちゃん…あれはやな…その…」

「いいのよ。貴方の言ってる事は正しいわ。それより食事の用意出来たから食べちゃってくれないかしら?」

「あぁ…エライすんまへん…」

「灰原…服部はな…」

「気にしてないって言ってるでしょう?それより貴方も早く食べてよね?片付かないから」

「あ…あぁ…」



ホントに気にしてない?そんなワケねーだろ…。

1番怖かったのに。灰原が傷ついてしまう事が。

自分を攻めて、攻めて攻めて…闇の中をさ迷う事。


…服部には、土下座してでも謝ってもらわねーとな…



そして会話のない気まずい夕食を終え、ソファーに座りテレビを見てた。

灰原は向かいのソファーに座り雑誌をめくっている。

服部はさっきの事を気にして、チラッと何回か様子を伺ってる。



「ね、ねーちゃん…」

「なにかしら」

「あ、あんな、飯…旨かったわ…」

「あら、ありがとう」

「あの!さっきは、ほんまに…」



――ピリリリ、ピリリリ



……………。

タイミングが悪いときに俺の携帯が鳴った。

ますます微妙な空気になっちまったな…。


俺は携帯のディスプレイを見た。…着信は蘭からだ。


通話ボタンを押し耳に当てた。



「なんだ?」

『新一ぃ!!どうしよう…』

「なんだよ蘭。落ちつけよ。何かあったのか?」

『和葉ちゃんが…!!…和葉ちゃんと買い物してたんだけど、途中ではぐれちゃって…!!探したけど見つからなくて…っ、携帯にかけても電源が入ってなくて……っっ!どうしよう!!もし和葉ちゃんに何かあったら……!!何かの事件にでも巻き込まれてたら…!!』

「蘭、落ちつくんだ。今どこだ?今すぐ行くから」

『今は米花駅の近くのデパートの前…新一ぃ早く来てよーっ』

「ああ、すぐ行く、待ってろ」



俺は電話を切り、上着を羽織った。



「なんや工藤?なんかあったんか?毛利のねーちゃん…」

「遠山さんがいなくなったらしい」

「!?な、なんやて!?和葉が!?」

「ああ。携帯も繋がらねーとよ、俺今から蘭と探してくっからオメーは留守番しててくれ」

「アホか!!俺も行くで!!」

「オメーはここにいろ。…ここを開けるのは危ねーよ…灰原を一人にするのは危険だろ」

「せやったら俺が行く!!工藤がここにおればええ!!」

「こっちの地理は俺の方が詳しいだろ?…頼む。遠山さんは見つけてくるから…オメーはここにいてくれ」

「工藤………。……わかった。和葉を頼んだわ…」

「ああ!」



俺は阿笠宅を飛び出し、蘭のいる場所へ向かった。






□■□■□■□.









工藤が出て行ってから、しばらく俺は勢いで立ち上がったまま玄関の方を見ていた。



「…行きなさいよ」

「え?」

「行きたいんでしょ?行けばいいじゃない」

「でも……」

「私なら一人で平気よ?それより彼女を探してあげたら?」

「……………。」

「ほら、早く行きなさいよ」

「……………。」

「どうしたの?早く行ってあげなさいよ」

「…工藤に頼まれたからな…行くわけにはいかへん」

「頑固なのね。…じゃあ私も行けばいいんでしょ?」

「!?」

「それなら文句はないわよね?」



ねーちゃんは、そう言って雑誌をテーブルに置いた。


ふと、工藤の言った『アイツは優しい奴だよ』という言葉が頭に浮かんだ。


俺が思とるより、人間らしい奴なんかもしれんな、このねーちゃん…。



「やめとこ」

「え?」

「工藤が帰ってくるの、待ってよーや」

「え、でも貴方…心配じゃないの?」

「心配や。けど、ええねん。和葉は…きっと工藤が見つけてくれる。信じて待ってよーや」

「………変な人ね。一緒に探せばいいのに」

「ええねん。待つっちゅーたら待つんや」

「…そう。事件に巻き込まれてなきゃいいわね、彼女」

「……せやな」



和葉の事は心配や。ほんまは今すぐにでも探しに行きたいくらいや。


けど工藤に頼まれたし、ココを空けるわけにはいかへん。


それに知りたくなってもうた。このねーちゃんの事を。


俺が思てるような人やないんかも、しれへん…。



「…なあ、ねーちゃん」

「なにかしら」

「…俺にさっきあんな事言われて腹立ったか?悲しかったか?」

「どちらでもないわ。貴方は正しいもの」

「正しいって何や。確かに俺は俺が間違ごーてるなんて思ってへん。けど、ねーちゃんは自分を犯罪者って呼ばれて『正しい』って言うてまうんか?」

「あら、だってそうじゃない。貴方は間違ってないわよ。だから気にしてないわ」



なんやねん。なんで自分のこと、そないな風に言えんねん。



「…納得できないって顔ね」

「ああ、でけへん」

「何が納得出来ないのかしら?」

「酷い事言うかもしれへんけど、言わしてもらうで」

「ええ、どうぞ」



俺はきっと、このねーちゃんにとって残酷な事を口にしようとしてる。


工藤がいたら殴られてるやろな…。


でも、黙ってなんかおれへん。コソコソ陰口みたいなん事するよか、本人に言うてまう方がええやろ。



「俺ははっきり言うて、ねーちゃんの事嫌いや」

「でしょうね」

「工藤から時間を奪って、毛利のねーちゃんにも辛い想いをさせた張本人やからな」

「そうね」

「ほんでぎょうさんの人の命も奪った」

「そうね…」

「俺から言うたらアンタはただの『犯罪者』や。そんなアンタを庇う工藤がわからへんし、そうやって幸せに暮らしてるアンタも信じられへんのや」

「……………。」

「すんません、じゃ片付けられへん事をしたっちゅーに悪いとも思とらんのか?」



しゃべりが止まらない俺にねーちゃんは、なんも言わずにただ聞いていた。


その際も表情をイチミリも変えずに。



「アンタにとって人の命なんかそんなもんなんか?誰が死のうが関係ないんか?工藤が優しいから自分の罪すら消えてしもたんか!!アンタは…今まで俺が出会った誰よりも冷たい人間や」



俺は思とった事を全て吐ききり息をついた。



「…言いたい事はそれだけかしら?」



それだけ、やと?それだけってなんや。

そんなちっぽけな事とでも言いたいんか。

たいしたことないって言いたいんか。こないに罪深い事をなんて言い草や。



「言い返す事は一つもないわ。最初に言ったけど、貴方の言ってる事は全て正しいわ」

「ほんなら、なんでそないに普通にしてられんねん…!!」

「そうね。本当にいくら謝っても許される事ではないわ。私が死んだってこの罪は許されないし、消えないわね。死んで許されるならとっくに死んでるわ」

「!?」

「私のせいで亡くなった人達が私の死を望んでいるのなら喜んで死ぬわ」



…自分の命…なんやと思とんねん…そんなあっさり死ぬやなんて言うてまえるもんなんか…



「…でも私が死んでも、亡くなった人達が報われるわけじゃないわ。だから私は自分の罪と向き合う事にしたの。どうしたって私の罪は消えない。…死ぬ時まで犯罪者としての罪に埋もれて行くつもりよ」



このねーちゃん……

もしかして……



「私は許されない人間なの。罪の重さに耐えきれずに何度も死のうとしたわ。…けど、その辛さから逃げてしまったら、私のせいで亡くなってしまった人達はどうなるの?そう思うことで逃げずに済んだわ」



いつも、冷たい表情で何も感じてない、みたいな顔してて…



「私が逃げてしまったら亡くなった人達に申し訳ないわ」



自分が当たり前みたいに思っとると思うてた。



「…でも、やっぱり思ってしまうわね。『誰か私を殺して』って」



ほんまは違ったんや…。

このねーちゃんは誰よりも悲しい人やったんや…。



「フッ。本当に弱いわね…私。自分の撒いた種から逃げ出したいなんて」



罪から抜け出して、のうのうと暮らしとると思とったけど……


ずっと…今もまだ闇の中におったんや。


俺は…なんで、こんな人が何食わぬ顔をして生きていられるんやって思とった。


でも…死ぬ事ほど楽な事はないんやな…。全てから開放されて無になるより、全てを抱えて闇の中を歩く、何よりも辛い道を…ねーちゃんは選んだんやな…。



「…でも確かに少し工藤君の優しさに甘えていたのかもしれないわ」



それやのに俺は…



「私なんかが幸せになんかなっちゃいけないのに、幸せだと思える日々を過ごしてしまったもの」



こんな悲しい人に…



「…そしてそれが大切だとも思ってしまったわ」



俺は………



「…最低ね。」

「………最低なんは俺の方や……」



なんちゅー事を言うてしもたんやろ…。


ほんまに自分の罪を1番わかっとる人に俺は…なんちゅー事を言うてしもたんや…。



「え?」



なんも知りもせぇへんのに、ただ感情に任せて、こないに小さいねーちゃんを傷つけてしもうた…。


信じられへんのは、俺の方やな……。



「…ねーちゃん、ほんまにスマン……ッッ!!」

「どうして貴方が謝るのかしら?」

「俺…アンタの事なんも知らんと、ほんま酷い事言うてしもた…えらいスマンかった…!!!!」

「何を言っているの?酷い事なんて言ってないわ。貴方の言った事は『普通』の事よ?誰もが、そう思う事よ。貴方は間違ってないわよ…だから謝ったりしないでちょうだい」

「ちゃう…!!俺は間違ごうてた…」

「間違ってなんかないわ」

「アンタを攻めた俺が1番最低なんや…」

「何言ってるのよ。最低なんかじゃないわ」

「許してくれとは言わへん!!ほんまスマン!!!!」

「許すも何もないわ。謝らないで」

「…スマン」

「やめてちょうだい」



…工藤が庇う理由がわかったかもしれへん。

このねーちゃんは…いつも今にも崩れ落ちそうな断崖の際をずっと歩いてんねや

だから、手を伸ばして落ちんように捕まえてなあかんと思とったんか?なあ、工藤…。

いつ落ちてしまうか分からん、このねーちゃんを…守りたかったんか?…『守る』理由っちゅーんは、そういう事やったんか?

…お前のその気持ち…今なら分かるかもしれへんな…


でも、俺はそんなねーちゃんを突き落としてしもたんやないか?

最悪やな…。俺は最低や………。



「…スマン…ほんまスマン…!!」

「やめて…謝ったりしないで」

「ねーちゃん…?」

「お願いだから…攻めていて。貴方まで、変な事言わないでちょうだい」



攻められへん。もうアンタを攻める事は出来へん…

アンタの事、少し見えてん。

誰よりも辛い想いしとったのはアンタなんやな。

それでも、そんな事周りに気ぃつかれんように、辛さも出さんと…一人で耐えてんねんな…俺もそれに気ぃついてしもうてん…。

だから、攻められへんわ。

工藤の気持ち、わかってしもうたわ…。



「…1番辛いのは、ねーちゃんやねんな…ほんま分かってやれんくて、酷い事言うてスマンかった…」

「…どうして?どうしてそんな事言うの?工藤君も貴方も…何故、そんな事を言うの?1番辛いのは私のせいで亡くなった人達よ…お姉ちゃんも…私なんかより、もっともっと、ずっと辛いはずよ。なのに何故そんな事を言うのよ…」



自分より他人の事ばっか優先すんねや…。

自分より辛い人はいるから自分にはもっと辛い事を望む………ほんまは優しいんやな。

誰よりも見えない優しさ持っとったんやな…。

冷たくなんかない、このねーちゃんは…切ないくらい優しい人なんや…。



「お願いだから攻めて」

「………無理や」

「どうして。私は犯罪者よ…探偵なら犯罪者を許さないで」

「…探偵やからこそ、わかってまうんかもしれへんな…工藤も俺も…アンタの心の闇が…やから、無理や…………ねーちゃんが幸せになれるように協力は出来ても、攻めることはもう二度と出来へん」

「優しくしないで。貴方まで工藤君みたいな事、言わないで。…攻められてた方がどれだけ楽になれるか………」



なあ、ねーちゃん。

アンタはそのちっさい身体で…

一人でどんだけの不安抱え込んどる?

どんだけの孤独背負っとる?

どんだけ一人で全て抱え込んで、周りの幸せを願っとる?

どんだけ自分を傷つけたら
その闇は消えるん?


もう ええから。


一人で抱え込まんといて。手ぇ伸ばして。



「…なあ、ねーちゃん」

「…なによ」

「アンタが手ぇ伸ばさへんのやったら、俺が手ぇ伸ばしてもええか…?」

「……………?」



これでアンタが断崖から落ちたら俺のせいや。

だからアンタを掴んどいてもええか?

落ちんように…消えてまわんように。



「笑って欲しいんや」



心からおもいっきり笑って欲しいんや。



「笑ってるわよ」

「ちゃう……」



闇から抜け出して、アンタのほんまの笑顔が見たいんや…。



「そんなんやなくて」



だから、アンタを引っ張りあげたいねん。



「手ぇ伸ばしてもええか?」

「その意味が分からないけど、私に関わるのはやめなさい」

「なんでや?」

「私は疫病神なの。だから近付かないで」



『辛い事は全部一人で受け止めるから』?

『貴方達は幸せになりなさい』?

そう言いたいんか?



「一人で抱え込まんといてぇや」

「あら、私のことよ。私で解決するのが当然じゃなくて?貴方は…貴方達は関係ないの」



関係ないなんて言わんといて。…関係ないんかもしれへん。

俺は工藤以上に関係ないんかもしれへん。

けど、無理や。

だって俺……………アンタのこと……



「…嫌いちゃうで」

「はあ?いきなり何よ。話が全く見えないんだけど」

「ねーちゃんの事、嫌いちゃうで。これだけは言わしてぇな」

「…ワケの分からない人ね」






工藤…スマへん…。

俺、このちっさいねーちゃんを………

『守りたい』と思うてしもた…。












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