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切ないくらい。
作:CHE.R.RY



05:西の探偵参る








金曜日。俺は学校に行かずに駅に向かった。



「えーっと、東京行きは…と」



新幹線が来るのをホームをさ迷いながら待っているとトントンと肩を叩かれた。



「なん――って和葉!?お前こんなとこで何しとんねん!」

「なにが『何しとんねん』や!おばちゃんに聞いたで?東京行くんやってな!!」

「…あのババアほんまお喋りやのう」

「ズルイやんか!ウチも行くで」

「はあ!?お前学校はどないしてん!」

「平次かてサボりやんか!ええやん!東京久々なんやし!」

「………はあ…」



俺は工藤に会うため、学校をサボり東京に向かおうとしていた。

和葉がついて来たのは予定外やったが、東京につき工藤ん家についてしばらくして工藤は帰ってきた。


毛利のねーちゃんと歩いてる工藤を見た瞬間に、まだ言うてへんっていうのは分かった。


工藤の顔があまりにも曇っとったから。


何考えとるんかはサッパリわからへん。


けど抜け殻みたいな工藤を見たんは初めてやった。


工藤ん家に入ってしゃべっていても、曇りっぱなしやし。本人は気ぃついてへんみたいやけど。



「なァ工藤」

「ん」

「お前、ちっこかった時のが生き生きしとったで」

「……………。」

「何を考えとるんか知らんけど…あんま考えすぎてもしゃあないで?」



なんも考えんと、毛利のねーちゃんに好きや言えばええねん。


それで悩んどるんやろ?恋愛に関しては奥手やねんなー…事件ときは強引なクセして…。



「…たしかに、コナンだった時の方が少なくとも今よりは楽しかったかも、な…」

「そんなんなるまで悩まんでええやろ?ねーちゃんの気持ちはわかりきっとるやんけ。お前が好きやって言えばハッピーエンドや」

「…そうなんだけど…。言うチャンスはいくらでもあった。蘭も俺が言うのを待ってるんだと思う」

「せやったら何を悩むねん!」

「…わかんねーけど、言ったら後悔しそう、じゃねーけど…言えねえ…いや、言いたくないのかもな…」



何を言うとるんや?工藤は。あんだけ戻ったら伝えたい事があるって言うてたのに。

なんや今の工藤は…。いざ告白を前にして怖じけづいてるってわけでもなさそうや…。

コイツ、何考えてんねん。



「最近、蘭の声も耳に入らねーし」



そら何か考え事してるからやな。工藤は考え事をしとる時、人の事は忘れたようにほったらかすからな。

ま、それは俺もやけど。



「事件の事じゃねーぞ。そんな難しい事件なんて起きてねーからな。ま、蘭には事件の事だって言ってあるけど…」



事件やない?ならなんや?しかも毛利のねーちゃんには言えん事なんかいな。

事件の事、と嘘ついてまで言えん事なんかあるんか?

工藤、お前は…毛利のねーちゃんには全部話すんじゃなかったんか?

アイツに嘘つくのは辛いって言ってたのはお前やないんか?

なのになんや?平気で嘘ついとるやん。

なんでそんな嘘つかなあかんねん。それにコナンの事も話してないみたいやしな。

全てが終わったら全部話すさ、と言ってたよな?工藤。…でも、なんで何も言うてへんのや?

俺は今のお前が考えとる事サッパリわからへんわ…。


まあ、まず一個づつ解決してくしかないな!



「工藤。俺の質問答えてくれるか?」

「…ああ、なんだよ」

「まず…なんで毛利のねーちゃんにコナンやった時の事、話さへんねん」

「…………。」

「言うてへんやろ?さっき和葉に『コナンくんがいなくなって寂しかった』って言うてたって事はやな、コナン=工藤やって知らんねんろ」

「ああ…言ってねぇ」

「なんでや?」

「…さあな。明確な答えは出せねーけど、言う気がしないだけだと思う。説明すんの、めんどくせーし」

「…………。」



めんどくさいやと?コイツが毛利のねーちゃんに関する事で、今までそんなん聞いた事ないわ。



「…自分でも不思議なんだよ。話すのがめんどくさいなんて。…昔から蘭にはどんな小さい事件だって事細かに話してたってのに」

「ほんまやな。なんでそんなんなってしもたんや」

「…わかんねーよ」



…コイツん中で何かが変わってしもたんやな。

何があったんや?少しの間にどんなおっきい変化があったんや…。



「なら違う事聞くわ」

「……………。」

「お前――最近、ねーちゃんの話し耳に入ってへん言うたやろ?事件の事考えてるわけやないけど、そう言ってごまかしてるやつ。あれ、ほんまは何を考え―――――……」

「……………。」



工藤はある一点をぼーっと見つめている。

俺の質問どころか、声にすら反応してへん。



「…おい、工藤」

「…………あ?」



返事はした。でも目線の位置は変わってへん。…コイツ俺の話し聞いてへん!!


俺はおもいっきり息を吸い込んだ。



「く――――ど――――う――――!!!!」

「うおっ!!…なんだよ服部!でけー声出すんじゃねーよ!!」

「お前、話し聞いてたか?」

「へ……?…あ、わり…聞いてなかった…で、なんだ?」



なんだ?やないわ!!腹立つわー…こっちは真剣に相談乗ったってんのに。



「あーもう!!今まさにそれや!!今何考えとった?」

「あー…アイツなにしてんのかなー…と」

「アイツ?毛利のねーちゃんか?」



さっき別れたばっかやのに、もう気になるんかいな。



「ちげーよ」

「……違う?」



俺は自分の眉毛がピクンと上がるのが分かった。

…じゃあ誰の事を考えてるんや…コイツは…。



「ああ。…灰原なにしてんのかなーって」



は………………?

なんやて?灰原?灰原てあのちっこいねーちゃんやんけ…。

なんでや?なんで、毛利のねーちゃんやのーて、あのちっこいねーちゃんやねん



「…なあ、もしかしていつも、ちっこいねーちゃんの事考えとるんか…?」

「ん?………そうだな、そういや…そうかも」



…はっ…

無意識に考えてる相手ちごーてるんちゃうか?なんで、あのちっこいねーちゃんやねん。

なんでそないに気にしとんねん。



「灰原がさ、元に戻ろうとしねーんだよ。…いつ戻んのかなーと」



あのねーちゃんがどうなろうが、どう生きようが工藤には関係あらへんやろ?

まあ、工藤は優しいやっちゃから気にするかもしれへん。…でも、度が過ぎとるんやないか?



「まあ、本人は戻る気はねーみてぇだけどな」



そんならええんちゃうん?本人が望んだ生き方なんやから。姿はどうであれ、中身が変わるわけやない。

本人がええなら、それでええやんけ。



「でも、やっぱ…戻った方がいいと思うんだよ。アイツはアイツだし、灰原でも問題はねーけど…灰原ってのは偽りの姿で、偽りで宮野志保を消ちまうのは勿体ねえ…」



宮野志保?ああ、あのねーちゃんのほんまの名前か。



「明美さんも本来の姿になるのを、灰原哀じゃなくて宮野志保の幸せを願ってると思うし」



明美さんちゅーのは…アレやな。前に工藤が言うてた『助け』てやられんかったっちゅう、あのねーちゃんの姉貴やな…。



「服部はどう思う?」

「なにがや」

「アイツが戻った方がいいかどうかだよ」



あのねーちゃんが戻ろうが戻らんやろうが、俺はそんなんどっちでもええわ。

関係あらへん。

なあ、工藤?

お前なんでや?なんであのねーちゃんの事を話してるとき、晴れ渡ったような顔してるんや?それじゃあまるで……――――!?

まるで?俺いま…なにを思った?ものっそい怖い事思ってしもたわ…。


そんなんない。そんなわけないやろ。


…いや、でも…そうやとすれば全部つじつまが合うねん…。

もし、そうやとしたら…全て…全部に理由が存在して全部、納得できてしまうやんけ…………。

そうなんか?

そういう事なんか?

お前…あのねーちゃんの事…好きなんか……?



出来れば俺は認めたくない、違うと信じたいと思った。

でも思えば思うほど、そうとしか思われへんくて…



「おい?服部?なに怖い顔してんだよ」

「え………あ、ああスマンスマン!」

「どうかしたか?」

「…どうも…せぇへんよ」

「そか?…やっぱアイツにもう一回、戻らねーのか聞いてみっか」



…なあ、工藤。

お前にとっての『アイツ』って毛利のねーちゃんやなかったんか?

いつからお前にとっての『アイツ』が、ちっこいねーちゃんになったんや?



「な、なあ!くど…っ」



俺は、俺の勘違いやって思いたくて確かめようとして顔を上げて工藤の顔を見た。


でもその瞬間、疑惑が核心に変わってしもた…。


こんなん探偵やなくても気付いてまうで…?


誰かを思い出しながら、穏やかな顔でほくそ笑んでたら誰だってわかってまうで…。


工藤、お前は毛利のねーちゃんやのうて、あの片側犯罪者のねーちゃんを想っとんのか…。



コイツは全て無意識で。

だから毛利のねーちゃんの笑顔を見て胸が痛んだ。…俺は散々待たせてしもうた後ろめたさやと思うとったけど、真実は…心ん中に違う奴がおったからなんやな…。

いつまで経っても告白せぇへんのも、ほんまは想ってる奴がちゃうからや。

学校がつまらへんのは高校にはあのねーちゃんはおらへん。

工藤に戻って会う機会も減ったからやないんか。

………工藤、お前どないするつもりなんや?

毛利のねーちゃんは、お前の帰りをずっと待っててくれててんで?



そんな人をお前は傷つけられるんか?

お前はどんな想いで毛利のねーちゃんが待っててくれたか、1番近くで見てて分かってんねやろ?

そんな優しい女を、お前は傷つける事が出来るんか?

優しいお前には出来へんやろうな。…だから無意識なんや。気付いたらアカンと本能が言うてるんや。

毛利のねーちゃんには愛とかいう気持ちはない。かといって傷つけられへん。

だから何も言わんと曖昧にしてごまかしとる。

自分自身も一緒にごまかしとるんや。

それに俺も、毛利のねーちゃんには傷ついて欲しいない。和葉も悲しむ。

…あのちっこいねーちゃんは、言い方悪いけど好きやない。…だって工藤は庇っとるけど…言うてまえば犯罪者やんけ。



俺ん中で全てが繋がった。パズルが組合わさって答えが出た。



…でも、あかん。

工藤には言えへん。工藤は気付いたら、どうしようもでけへんやろ?

苦しむやろ?別の女を想いながら、幼なじみの女を傷つけんように傍におるのは、苦しいやろ?

…俺はどないしたらええんやろう…。

本人より先に気ぃついてもうた。俺はお前になんて言うたらええんや?

真実か?嘘か?それとも、お前が毛利のねーちゃんにしてるように曖昧にしたらええんか?



…そうや。幸い工藤は気付いてへん…このまま永遠に気付かんて事はないやろう。いつかは気付いてまう。


やけど、それまでは…俺からは言わへん。


スマンな、工藤。

お前の言う、その変な気持ちっちゅーもんは俺の口からは答えてやられへん。



毛利のねーちゃんにも、お前にも苦しんで欲しーないねん………。



なんでこんな事になってしもうたんや。

運命なんか?…そんなもん信じたないけど…

あのねーちゃんに会わんかったらこんな事にはならへんかったんや…。

あのねーちゃんを攻めるのはお門違いかもしれへん。

でも、普通…思ってまうやろ…………?



「服部?オメー本当にどうしたんだ?」

「…いや、なんでもあらへんよ!!」



今は隠しとくわ。工藤…。



「…?そうか?」

「もう、考えてもわからへんし!!また今度にしよーや!それよか!今からどおする?俺、日曜までいるつもりやさかい、どっか行こうや!」

「げっ。日曜までいる気かよ」

「ええやんけ」.

「はあ〜…。ま、オメーにゃ何言ってもダメだな」

「わかっとるやーん」

「…アイツら、和葉らはほっといてたまには男二人で騒ごうや!」



息抜きに、な?



「ぷっ。虚しい台詞だな!でも、たまにはいいかもしんね…」



――ピリリピリリ



「電話だ。ワリーちょっと待ってろ服部」

「おう、事件の呼び出しか?」

「バーロ。ちげーよ博士からだよ」



――ピッ



「博士?どうかしたか?もしかして灰原になんかあったか?」



博士からね〜…なんや嫌ーな予感すんねんけど…。



「え?なんだよ急に。ってもう?一晩も留守にすんのか?」



留守?…留守番しといて〜とか言うのは勘弁してくれよ〜じーさん。



「ああ、わかった。服部もいるしな!任せろよ」



なにをや?何を任されたんや?頼むから『違う』であってくれ。


工藤は用件を終え電話を切った。



「あー…服部ワリィ。なんか博士が急に学会に行くらしくて、今晩は帰ってこねーらしい」



うわ、きた!!



「…で、灰原一人にさせるのも危ねーから留守を頼まれたんだけど…」



せやと思うてんんん!!



「中身は大人とは言え、見た目は小学生だし、心配だから今晩は博士ん家行く」



お前はほんま勝手に決めるやっちゃな!!!!

俺わざわざ大阪から来てんで!?

勝手に決めて『任せろ』なんてよう言うわ!!!!



「…で、オメー灰原をあんまよく思ってねーみてぇだし、ここに泊まってもいいし蘭とこ行ってもいいし…好きにしろよ」

「…お前、もう行くんか?」

「ああ、博士はもう家出たらしーしな」



俺をここに一人置いてく気か!!!!めっちゃ暇やんけ!



「…ああ、ほんなら毛利のねーちゃんん家行って、夜はここに泊まるわ…ちっこいねーちゃんに会うと気分ワルーなる気ぃするし…」

「そか!じゃあこれカギ渡しとくぜ!」

「……なんや…やけにイキイキしてるやんけ…」

「なんか言ったか?」

「い、いや〜;なぁーも言うてへんよ〜。ほな、明日はどっか行こな〜ハハ」

「おう!じゃーな!」



工藤はそう言うとリビングを出て行った。



「…俺も毛利探偵事務所に向かおー…」



はあ〜…ほんま工藤のテンションの上がり方ハンパなかったなー…

ビックリやわ…。

はあ、…ため息出るわ。


そもそも、あのねーちゃんも見た目は小学生ちゅーても中身は大人やねんろ?

なんか工藤が18やら84やら言うてたし。

せやったら一晩くらい留守番出来るやろ!あのじーさんも過保護やな〜…。

だいたい、男と二人っきりで一晩越す方が危険やとは思わ……………!!!!??


一晩中二人っきりやて!?


あかんあかんあかーん!!何か間違いがあるかもしれへん!!工藤が自分の気持ちに気ぃついてまうかもしれへん……!!!!

一晩も二人きりやったら何も芽生えんて保証はないやろ…!!!!



これはあかんで!!



俺は急いで工藤邸を出て隣の家の玄関ドアを開けようとする工藤に叫んだ。



「くーどーうー!!ちょお待ってーな!!」

「ん?なんだよー」



俺に気付き中に入らずにこっちを見た。急いでカギをかけて、工藤のとこまでダッシュした。



「やっぱ俺もこっち泊まるわ!」

「へ?でもオメー…」

「ええからええから!俺やったら大丈夫や!好いてへんけど、顔めみたくないほど嫌いとちゃうで!」

「そ、そうか?」

「せやせや!三人でトランプでもしよかー!三人で!!三人でな!!」

「あ、ああ…別に三人を強調しなくても誰も呼ばねーよ」

「アハハハ〜三人やったら楽しいもんな!三人やったら!!」

「あ、ああ…そうだな……………??」



二人っきりにはさせへんで!!!!!!!!!!












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