30:私に出来る事
蘭が出て行って静かになったリビング。
俺はハァと肩の力を抜いた。泣かせてしまうんだろう、とは思っていたけど、思っていたより反応がでかくてビックリした。
「…疲れた」
30分も話してはいないのに、異様に疲れた。
俺なりに考えた結果、ああいう伝え方になったんだ。
別に蘭とは付き合ってた訳ではないし、好きだと言った事もない。でも何となく通じていたんだと思う。だから何て言えばいいのか、悩んだ。
いきなり『ゴメン』と言うのは違う気がする。付き合っていたならば、そうなるけど…。
『好きな奴が出来た、だからお前とは…』なんてのも直接、好きだと言われた訳じゃないからおかしい。
いろいろ考えた結果、辿り着いたのは、相談みたいな形で蘭に伝えるやり方だった。
まあ…結局それで良かったのかは分からないけど。
…でも、コナンだった事を話す前に帰っちまった。出来れば話したくはないと思う俺もいて少しホッとしている。
アイツの事をあまり話したくはないからだ。絶対、簡単には理解出来ないだろうから…。
宮野がもし、責められるような事があったら?って考え出したらやっぱり、話したいとは思わない。
でも全てに向き合わなきゃ前には進めない…。
まず蘭と向き合って解ってもらってからじゃないと…宮野は俺と向き合おうともしない。
そんな事を考えていて、時計の針はあっという間に進んで、あれから何時間か経った時ピンポーンと呼び鈴が鳴った。
俺は重たい腰を上げて玄関に向かい、ガチャリとドアを開けると息を切らした遠山さんがいた。
「服部ならいないぜ?」
俺がそう言うと遠山さんは俺をキッと睨みつけた。
「知っとる。ウチは工藤君に用があるんや」
「…そ。あがる?」
「ココでええわ!!工藤君どういうつもりやねん!!」
「どういうつもりって何がだよ」
「…な、によ!!なんでそんな態度とれるん!?蘭ちゃんが今どうなってるか解っとるん!?」
「泣いてるんだろ?」
自分でも驚くほど冷静に言葉が出てくる。どうしてかは分からないけど。
「…っ!自分が泣かせてるんやろ!!なんでそんな顔出来んの!?工藤君がそんな冷たい人間やと思ってんかったわ!!」
俺だって苦しい。何も思わなかったら、こんなにも考えない。
でも、そんな事責められても俺にどうしろって言うんだよ。精一杯、蘭の事考えて話したんだ。それ以上良い言葉なんて浮かばなかったんだよ。
「何なん工藤君!!勝手にどっか行って、ずっと蘭ちゃんを待たせて…蘭ちゃんが辛い想いをしながら待ってた間、工藤君は女の子とおったって…どういう神経してたらそんな事が出来るんや!!」.
「簡単になんか言ってねーよ。俺だって何度も迷ったし悩んだ。でも自分の気持ちに嘘なんかつけねーから蘭に言ったんだよ」
「そんなん…っ!!工藤君酷すぎるわ…っ」
「酷いのは知ってる。でも蘭も、こんな男よりもっと大事にしてくれる奴の方が幸せになれるだろ…」
「言い訳にせんといて。…蘭ちゃんを言い訳にせんといて!!それを理由に自分を正当化せんといて!」
胸ぐらを掴みそうな勢いの遠山さんに俺はただ黙った。
きっと何を言っても今の彼女には全て言い訳にしか聞こえないだろう。
それに、これは俺と蘭の問題であって彼女には関係ないのだから。
「黙ってんと何か言ったらどうなんやっ!!」
遠山さんは俺の肩を揺らした。
「和葉。その辺にしとき」
ガクンと体が前後に動いて、思わず遠山さんの手を叩こうとした時、服部が帰ってきて、そう言った。
「平次!でも…!!」
「でも、やあらへん。止めぇや」
服部は俺の肩を掴んでいた遠山さんの腕を掴んで、俺から離した。
「工藤、スマンかったな。コイツ許したって」
「…ああ。別に、気にしちゃいねーよ」
俺がそう言うと服部は遠山さんの腕をグイッと引っ張った。
ヨタリと体勢を崩した遠山さんは、何すんの!と声を上げたが服部は無視して遠山さんを連れて、どこかに歩いて行った。
俺はそれを見送り、また家の中へ戻った。
□■□■□■
工藤君に蘭ちゃんの辛さをわかってほしくて、怒鳴っている途中、平次が帰ってきてウチを止めた。
そのまま、灼熱の中歩いて人の少ない茶店に入った。
いくら話しかけても平次は何も言わんと、ただウチの腕を引っ張ってた。
茶店に入り、飲み物を注目した後、ようやく口を開いた。
「お前はアホか」
その第一声はウチを腹だたせるのに十分やった。
「アホって何よ!!」
「アホはアホや、ドアホ」
「はあー!?なんでいきなりそんなん言われなあかんねん!!」
「…お前な、もっと周りをよぉ見んかい」
「意味わからん!なんやの、それ!!」
平次が言いたい事が分からんくて、冷静な平次にイライラするばかりで…
「毛利のねーちゃんの味方するのは勝手やけどな、やからって工藤に当たり散らすんは、どうかと思うで」
「あ、当たり散らしてなんかない!ほんまに工藤君が悪いんやんか!!」
「そんなんやから周りをよく見ろ、言うてんねん」
だって、どう考えたって蘭ちゃんが悲しい想いしてんのは工藤君のせいやん。
友達として、文句くらい言うてもええやんか!!
「工藤と毛利のねーちゃんの事に関してお前は無関係やろ。口出しすな」
「む、無関係って何やの!!ウチは蘭ちゃんが泣いてたから…!友達として当然ちゃうんか!?」
「…あんな。まちごうたらあかんで?確かに和葉は毛利のねーちゃんから話し聞いて、そらねーちゃんの味方になるのは当然やと思う。だからって、何も知らんお前が、そこに口割ったらあかんやろ。お前に出来る事は毛利のねーちゃんの代わりに工藤を攻める事やなくて、毛利ねーちゃんを元気付ける事やないんか?」
「でも…!!許せんかってん…!!蘭ちゃんは何も悪い事ないのに…!ウチ、許せんくて…」
平次の勢いに、ウチはなんか泣きたくなってきた。
ウチは蘭ちゃんの為にと思ったのに、平次にこんな事言われるなんて思ってもなかった。
淡々と話す平次が、なんか遠い人みたいに感じた。
「別に、お前に許してもらわんくても工藤には何のこっちゃないで」
確かにウチは関係ないんかもしれん。
だけど、だからって見てるだけなんて無理や。
無関係なんかとちゃう。
「平次は…何で工藤君の味方が出来るん?酷い事をした工藤君につくん?」
「別に味方になったつもりはない。けど、和葉はまちごうてると思う」
「なんでなん!?」
「…確かに、毛利のねーちゃんからしたら辛い事やったかもしれんし、受け入れたくない事なんやろうけど、工藤に好きな奴がおる事が、なんで悪い事なんや?」
「だって蘭ちゃ…」
「毛利のねーちゃんが何やねん。ねーちゃんを中心に世界は回っとるんか?」
「……………。」
「なんで工藤が毛利のねーちゃんを好きやないとアカンねん」
「……………。」
「誰が決めたんや、そんな事。別に付き合うてた訳やないんやし、恋愛は自由なんやないんか?」
「…せ、せやけど…」
「けどなんや?」
「ら、蘭ちゃんは、工藤君を信じて寂しくても辛くても待ってたんやで?平次も知っとるやろ…?それやのに、こんなんあんまりや!」
「それは、ねーちゃんが自分の意思でそうしてただけやん。工藤かて、昔はねーちゃんに惚れてたかもしれん。けどな人生生きとったら、気持ちが変わる事も普通にあるやろ。それが許せんて思うのは勝手やけど、攻めるのは違うんやないんかって言ってるんや。そら自分勝手過ぎるで」
「…っ!自分勝手なんは工藤君やろ!!待っててなんて言うといて、気持ちが変わりました、で蘭ちゃんほっぽり出すんか!!どっちが自分勝手なんよ!」
「ほっぽり出してへんやろ。ほっぽり出すんやったら付き合うてもない奴にワザワザ話しなんかせぇへんし、ほっとくやろ。それが出来んからちゃんと話したんやないんか?」
平次が言う言葉に反論出来なくなってきた。
平次が言う事が悔しいけど正しく思えてしまう自分がいて、それに苛立ちを感じた。
「それに人を好きになるのに、自分勝手とかあるんか?なんや、人を好きになんのに誰かの許可が必要なんか?工藤が別の人好きなるのが、そんなに悪い事なんか?」
悪いと思ったから工藤君に怒った。あかんと思ったから、あんな事言うた。
そうや、待ってた蘭ちゃんの身になったらアカン事なんじゃないんか…?
「お前、工藤を何やと思うてるん?絶対に毛利のねーちゃんを一生好きでおらなアカンと思うてるやろ?それ以外は有り得んて?工藤は神でも何でもないんやで?人間なんやで?そんな完璧な奴、おらん。工藤かてただの人や、いろいろ思う事もあるやろ」
「ウチは…工藤君ならって信じとっただけや…」
「工藤なら?…何を勝手に工藤に期待してたんか知らんけど、工藤も普通のその辺にいるような男ねんで?勝手に期待して理想押し付けられたら工藤も迷惑やろ」
もう何て言えばいいのか、わからなくなって、声がどんどん小さくなる。
確かに工藤君の事は全然知らんし、蘭ちゃんから聞いた話しで勝手に理想を押し付けていたのかもしれない。
「…で、も…蘭ちゃんは…蘭ちゃんはどうなるん…?工藤君がおらんくなった蘭ちゃんは…!!」
「お前はほんま話しの分からん奴やな。やから、さっきから周りを見ろって言うてるやろ。毛利のねーちゃん側からしか見んから、周りが見えんのやろ」
「そんなん言われても分からん!!」
「やから…毛利のねーちゃんがどうなるかなんて、思う方がオカシイわ。どうもならんやろ?前に進むだけや、なんで工藤が傍におらんと、どうにかなるんや。そんなん立ち治ってまえば、何て事ないやろ?だいたい、なんで工藤が毛利のねーちゃんの傍におらなあかんねん。工藤は毛利のねーちゃんの為にいるんか?毛利のねーちゃんの為に存在するんか?…ちゃうやろ。工藤は自分の為に存在するんやろ。自分の気持ちで動くんやろーが。それを外野から責められてみ。どう思う?工藤の気持ちを考えた事あんのか?…毛利のねーちゃんの気持ちだけやなくて、工藤の気持ちも考えたら…お前には攻めたりなんか出来へんはずや」
工藤君の気持ちなんて考えようともせんかった。ただ悪いって思ってた。
やっと平次が言った『周りを見ろ』の意味がわかった。
「…なら…ウチはどうしたらいいん…、蘭ちゃんに何を…したらええの…」
子供過ぎた自分が情けなくて、自分の無力さを痛感したとき涙が溢れてきた。
「お前に出来る事は、毛利のねーちゃんが折れんように支えてやる事しかないやろ」
一方でしか物事を捉えられなかった愚かな自分が情けない…。
初めて、平次が大人に思い、遠くに感じた。
きゃーっ。30話突入〜。あ、ありえねー。まじでもう早く終わらせたいです。そして久々の更新で、会話ばかりの浅い話ですいませんでした!伝わりにくいし背景ねーし!とりあえず眠いので寝る。
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