「(よーし、アラビア語で話すぞ)あ、あっさらーむあらいくむ」「ケーファク?」「は?」「エンタ・ミン・フェーン?」
アラビア語が各国の言語を押しのけて最高難易度を誇る理由 そのさんっ
地域によって全く違う上にフスハー喋る人はいない
アブクール「やっぱシリア方言って可愛いよね」(*´ω`*)
中原「(何言ってんだこいつ)そういやアラビア語に方言ってあるの?」
アブクール「あるよ。正則アラビア語はフスハー、方言はアーンミーヤって呼ばれてるんだけど、一番有名なのはエジプトのアーンミーヤかな。エジプトアラビア語は大阪弁みたいな感じで、かなり市民権を得てるアーンミーヤだね」
中原「確かに本屋とか行くと、大体エジプトアラビア語の教科書が置いてあるな」
アブクール「でもこのフスハーとアーンミーヤの違いは日本語の標準語と方言みたいなものじゃない。フスハーを日常会話で喋る人はほぼいない上、アーンミーヤはフスハーとかなり違う」
中原「まさか中国語並みにダイグロシアが……」
アブクール「その通り。モロッコのアーンミーヤとか発音や文法、語彙がかなり違うものもあるから、お互いに通じないレベルだよ」
中原「マジかよwじゃあ今まで習ってきたやつは?」
アブクール「もちろんフスハー。でもフスハーはニュースや小説とかでしか用いられないんだ」
中原「それじゃ覚えても意味なくね?」
アブクール「まあまずフスハーを覚えてから、アーンミーヤに移った方がいいかもしれない。クルアーンがフスハーで書かれてることもあって、どんなアラブ人でも一応フスハーを聞いて理解することはできるから。喋るの下手な人も多いけどw
でも、実際にアラブのどこかの国に行くならそこのアーンミーヤが必須だろうね」
アラビア語も口語と文語がかなり乖離している言語のようだ。中原はこの点、香港みたいなものかもしれないと思うのであった。香港人は文を書くときとニュースのみで普通話を使用し、普段の会話は全て広東語だし普通話で書いてある文章を声に出して読むと広東語になる。
日本は沖縄や東北を除いて通じないほどひどい方言がないので、ちょっとそういう状況を想像するのが難しい。
中原「フスハーとアーンミーヤってどれぐらい違うんだ?」
アブクール「発音は地域によって色々違うね。例えばフスハーの『anta あなた』は『enta』になる地域が多いし、qは色んな地域でgになるから月のことをアル・ガマルみたいに発音する人も多い。サウジもそうだね。
他にもエジプトだとジームがギームになるから、jの音が全部gになる。ギザのピラミッドで有名なギザも、正則アラビア語だとアル・ジーザなんだ」
中原「そうだったのか」
アブクール「エジプトだとthはtになるしqは落ちるけど、サウジではこういうのはないね。
モロッコのアーンミーヤはフランス語の借用語使いすぎ&発音が大幅に違う(イントネーション、母音をやたら落とすetc)のせいで、サウジ人の僕はほとんど何言ってるか分からないレベルかな。
文法に関しては、基本的に格変化は全部落ちてしまう。名詞の単数形に関しては格変化の語尾を落とした形、双数形・複数形に関しては常に属格・対格形を使う。動詞の人称活用も8つにまで減るし、かなり簡単になってると言える。
んー、あとサウジのアーンミーヤだとフスハーにはない現在進行形があるよ」
中原「كيف حالك؟ kayfa Haaluka(お元気ですか?)とか、こういうのは同じなのか?」
アブクール「いいや、全く違うよ。エジプトのアーンミーヤなら「お元気ですか?」はإزيك ezzayyak だし、サウジならkeefak?になるよ。
他にもサウジのアーンミーヤ、ヒジャーズ方言では『اَيْنَ اَنْت؟ ayna anta? あなた(男)はどこにいるの?』は『فينك؟ feenak?』だし『لَيْسَ هُنَاكَ مَوْز laysa hunaaka mawz バナナががない』は『مافي مُوزْ maafii mooz』になるね」
中原「おそろしく発音が変化してないかw」
アラビア語もかなり地域差が激しいようです。