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どこかひっそり繋がっている短編集

見つからないと知っていても探してしまうのです

作者: 雨月

読んでて 合わない! っと思われたら逃げてー!超逃げてー!!無理はダメよー!!


一応、短編「見つけにくいもの」の後日編 という感じです。

読まれた方が楽しめる?かな??

鞄の中を漁る。

・・・ない。

今度は、本や紙が乱雑に積まれている机を探す。


「えー。ない・・・。」


ぽつり とつぶやく声に、ノックと同時にモリスの部屋の戸を開けて入ってきた友人はきょとん とモリスを見つめた。


「何を探してるの?」

「恋心。」


腕を組み、机を眺めるモリスに友人であるアーレは怪訝そうに首をかしげ、歴史上の人物の語り続けられる物語の一節を思い出した。


「リヒタルフのアレ?」

「そう。『鞄の中も机の中も』」

「『探したけれど見つからないのに』」


続けて言ったアーレに振り返り目を合わせて


「「 『 それでも、私は探してしまう 』 」」


「・・・世界最高の魔術師であり破壊兵器の生みの親リヒタルフ。そして、」

「愛する女の為に兵器を破壊し続けた男リヒタルフ。」

「なんで今、リヒタルフ?というか、恋心ってもしかして好きな人が!?」

「うーん?」

「何その反応は。」


面白くないと言わんばかりにモリスのベッドへと腰掛けた。


「なんと言ったらいいのやら。」

「まぁ、いいや。これ。届いていたんだけど・・・」


アーレから手紙を渡され、差出人の名前を見て僅かに身体を固くする。


「モリス、その手紙のディートルフ商会に襲われたって、聞いたんだけど・・・。」


私、何も聞いてないんだけど? そう強い目線で促され、モリスはため息をついた。


 心配させたくなかったんだけどなぁ。


「事情を知らされない方が心配するって、学んでくれると嬉しいんだけど。」


内心のつぶやきを読んだかのように言って、アーレは促した。


「うーん。まぁ、アーレならいっか。・・・と、その前に。」


簡単に防音の結界を張るとアーレの目線がよりきつくなった。


「一応、ね。そんな大事じゃないのよ。」

「一応かけなきゃいけない事が起きてたってことでしょ。」

「うぅ、こ、今度からはちゃんというから、ね?」


姉に次いで責められると弱いアーレの言葉に、モリスは身を縮ませて上目遣いでアーレを見つめた。


「絶対よ?さぁ、話して。」

「うん。実は姉さまと相談して、兄さまとお父様の為にとある薬を作っていたの。その情報がどこかで漏れたらしくて・・・」

「それで、ふた月前の休みに街へ遊びに行ったときに襲われた、ってことね。」

「そ、そうなんだけど・・・」


モリスとアーレのいる魔法学院は国中から才能のある生徒が集まってくる国が誇る大規模学院だった。

規模の大きさと相まって魔法学院のある都市は、学院都市と周知され生徒たちの過ごしやすい街となっている。

七日で一週間。

週に二日の授業のない日は、一日はクラブ活動や補習や自由参加の講義。

一日は完全に休養をとる日となっており、街に遊びに行く生徒も多い。

他国の貴族の子女が留学生として学ぶこともあり、当然の如く生徒が出歩く街の治安にも力を入れている。

その中での犯行。

大きく噂で流れるような事件にもかかわらず、モリスの面倒を見ていると自他共に認められているアーレにさえ、先ほど渡した手紙を寮の管理人がこぼした一言を問い詰めて問い詰めて問い詰めて、よーーーーうやく知ったのである。

もみ消すことが出来る程の権力を持っている相手に襲われたなど、大事以外の何事でもないとアーレは内心沸々と怒りつつ、表面上は冷静に話を聞こうとしていた。


「いつものように、いい実験材料がないか街をふらふら歩いてたら、いきなり薄暗い路地に出ちゃって」

「モリス。それは迷ったというのよ。いい加減、自覚しなさい?」

「三本道を間違えただけだもん!・・・あ、それで、道を間違えちゃったから引き返そうと思ったんだけど、男の人が数人どこからともなく現れて・・・」


うつむくモリスに、アーレはごくり と息を呑む。


「私の目の前で、すごい勢いで・・・」


まさか、まさかモリスの身に大変なことが起こって・・・!?


「土下座したの。」


・・・・・・・。


「それで、」

「ま、待った!」

「え?」

「土下座?」

「うん。土下座。すごいんだよ!額が思いっきり石畳にくっついてて、すっごい痛そうだったの!もう、ビックリしちゃったよぅ!」


確かに大変なことが起こっていたようで、アーレは脱力し、そのままベッドに寝転んだ。


「・・・で?」

「うん。そのあと、困っている私がいる路地に馬車が来て、男の人が一人降りてきて・・・」


モリスが何かを思い出すように手元を見つめながら話す。


「その人が、ディートルフ商会のエグマール様だったの。」

「ディートルフ商会のエグマール様って言ったら、最近台頭してきた商会の次の後継者と名高い、あの・・・!?」

「うん。そのエグマール様。まず、土下座してきた人がディートルフ商会の従業員だって謝って、半泣きになってた土下座の人たちを立ち上がらせて、それからお話がしたいって、一緒に馬車に乗って・・・」

「馬車に乗ったの!?」

「えっ、うん。」

「危ないとか、危険とかは思わなかったの!?」

「・・・?アーレ?」

「なによ!」


きょとん とした顔でモリスが呼べば、噛み付かんばかりに上体を起こし激しく返された。

そんなアーレに、モリスは嬉しそうに、嬉しそうに笑った。


「そう心配してくれるのはアーレと家族だけだなぁ って思って。」

「っ・・・!!」


モリスは、発明の天才と呼ばれていた。

それと同時に、魔力の扱いの巧さも有名だった。

大規模な破壊魔法や派手な魔法ではなく、魔術の緻密な構成。

そして発明によって出来た魔法具との連携で、力試しとなる魔術大会でも上位に食い込む実力者だった。

天才などともてはやす輩も多かったが、同時に化物と奇人と口さがなく罵る輩も多かった。

学院におけるモリスは、「寄るな危険!発明の天才、そして魔術の奇人」だった。

・・・あながち間違ってもいないのだが、大抵のことは一人で処理してしまうので、襲われたとしても、危険な状況に陥ったとしても心配されるのはいつも巻き込まれる&襲った方だった。

えへへ と恥ずかし気に笑うモリスに、襲い来る脱力感とこそばゆい気持ちを振り払うように続きを促した。


「話によると、エグマール様は家系的な遺伝を心配されていたの。

 エグマール様のお母様のお父様が・・・だった、らしく、て・・・」

「そ、それって、もしかして、ね、狙われたのって・・・」

「そう。狙われた薬は・・・」



ごくり



「育毛剤なの。」


やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


アーレは思わずベッドに突っ伏して叫んだ。


「まだまだ試作段階だから、そんなに効能とかは確認されてないって言ったんだけど、土下座してきた従業員の方たちは皆さん、まだ若いのにそれはそれは薄くて・・・。」


彼らを思い出したのか、切なそうに遠くを見るような目になる。


「あ、エグマール様は大丈夫よ!髪質的に今後が心配だけど・・・。

 とにかく、土下座してきた従業員の方たちが被験者として協力してくださることになったの。もうそろそろ商品として売り出す段階になるはずだから、そのお手紙、だと・・・思うわ。」

「そういうことだったのね・・・。」


アーレは寝転がったまま、モリスを見上げる。


「事件のことはわかったわ。でも、その手紙はそのことだけじゃないでしょ?

 今までだって、薬が商品化したことだってあったでしょ。貴女はそんなことじゃ動揺しない。」

「っ・・・。」

「モリスが動揺してしまうってことは・・・」


思わず、アーレの眼差しを避けるようにうつむいた。


「お姉様ね!!たしか、ディートルフ商会にランバート侯爵が出資されていて、

嫡男のカイル様がモリスの作った発明品を販売する関係上、モリスのお姉様と縁故を結んでおこうと画策してるって聞いたわ。・・・それを悩んで・・・いるわけじゃなさそうね。何その複雑そうで情けない顔は。」


さぁ、話しなさい? と、ベッドに座り直したアーレに、モリスは諦めたようにため息をついた。


「あのね。エグマール様からのお手紙、これが初めてじゃないの。

 最初は、最初は普通に薬の効果の段階とか、販売していく上でのお話とか、そういう話だったの。だけど、回数を重ねていくうちにお食事を一緒にしたり、植物園を回ったり、街を一緒に歩いたり、とか、してて・・・。」

「そ、それは!!」


目がキラキラ輝くアーレに、うぅぅ と唸りながらも赤くなる顔を隠した。


「は、話す内容もだんだんと薬の話じゃなくなっていって、しかも、私が研究とか研究材料見つけると暴走しても何も言わずに傍で待っていてくれたりとか、あああぁぁぁぁぁ何て言ったらいいのかぁぁぁ!!!」

「うふふふ♪いいじゃない、いいじゃない!・・・あ、もしかして、それでリヒタルフの?」

「・・・うん。恋心って、わからないから。」

「そっか。モリス、初恋まだだもんね。」

「うん。」

「エグマール様は男爵の次男だっけ?」

「うん。」

「それで、モリスのお姉様は貴女が利用されないように、あのカイル様の誘いを躱し続けているのね。」

「・・・・・・・うん。」

「たしか、お姉様、期限を決めて、カイル様に想いを寄せる女性たちを片っ端から紹介・仲介してちょっとしたお祭り状態になっている・・・わよ、ね。」

「・・・・・・。」

「『私よりも惹かれる方がいらっしゃるかもしれませんしぃ。まだ出会っていないだけかもしれませんので、この際、出会ってみればいいと思いますのぉ』」

「・・・・・・・・・・・。」

「そう言ったって、もっぱらの噂よ?私聞いたとき、モリスのお姉様だなぁ、って、納得しちゃった。」

「姉さまが私のことを思ってくれてるのは、とっても、とってもよくわかるんだけど・・・」

「だけど?」

「事件の真相、多分、姉さま知らないの。」

「え゛。」

「あと、エグマール様のこと、も・・・。」

「それは・・・。」

「姉さま、多分もうカイル様のこと好きだと思うの。でも、私を利用しようとしているから って、考えがカイル様の行動を疑ったり不安に思ってるんじゃないかな。」

「うーん。カイル様の想いに頷かないのはそれだけじゃない気もするけど。」


ぼそり と呟いたアーレの言葉に首をかしげたモリスに、アーレは にやり と笑った。


「モリスは、”利用”されてるんじゃなくて、”協力”してるだけなんでしょ?」

「・・・単純だと思う?もしかしたら、利用されてるかもしれないのに。」

「利用されてるのかどうかなんて、本人に聞かなきゃわかんないでしょ。

 利用しているつもりが、だんだんと本気に・・・! なぁんて、物語的展開もあるかもしれないし。」


笑うアーレに、モリスもつられて笑った。


「もし利用されてたら、ふっちゃえばいいのよ。思いっきり!協力するわ。」


悪戯っ子のように、にんまり と目を細める親友に、後押しされたように心を決めた。


「そうよね。まずはこの気持ちに素直になるわ。」


アーレから受け取った手紙は、食事に誘うもので、さっぱりした気分でモリスは出かけた。


「落ち着いたら、お姉様に連絡しなさいよ?早めの方がいいと思うから。」


というアーレの言葉を背に


「あっ!そ、そっちの方が先じゃないかな!?」


と、慌てた。



身近にあるハズの恋心ものを見つけ、手にする姉妹の話はまだまだこれから。




エグマール様、登場予定だったのに、何故か出てきませんね。

あっれー!?(爆)


ちなみにエグマール様。

おじいさんが貴族やりながら商会を立ち上げ、お父さんの代でちょっと頑張っている。

エグマール様も父親を支えて頑張って大きくし中。

長男は貴族業で支援者とかそっちの担当。

エグマール様は実質的な商品とか販売とか担当。


モリスちゃんは、基本的に一人でふらふらと街を徘徊して実験材料とか探したり買い物を楽しんだりします。

あまりに帰りが遅いと、学園寮の寮の管理人さんがアーレに相談して回収にあたります。

発明が商品化されたとかそういうお話もちょこちょこしていたみたいですし。

まぁ、金銭に関してはモリスちゃん、お兄様に丸投げですけど!

品質とかに関しては口出ししてます。



2013/03/31 学園 → 学院 に変更。


※続編できました。

「探していたいと思うのです」

ちなみに↑でエグマール様がまさかの初登場です。

ヒロイン、モリスちゃんのお姉さんのメリルちゃんなのに ←


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