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昔、書いてた奴のまとめ 作者:無職童貞

こそばゆい学園恋愛もの感(だいたい、あってる)

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001-7

第六話 私達は変態なんかに負けないっ!

 息たえだえ。腰くだけ状態で軽くビクンビクンと全身を痙攣させて、生徒会長の机に突っ伏す女性。姫宮 龍華。

「ふぅ、堪能させていただきました……それでは、これでもうようは――」

「ま、待て、伏見 聖ッ!」

 止めたのは副会長である二ノ宮 祥子であった。

「どうかしましたか、二ノ宮 祥子。私はあなたに対して何も思うところはありません。私にとって、あなたは何の価値も存在しないのですから」

「ッ!?」

「真剣勝負を認められない。そのような事を抜かすような女に私は興味を持ちません。価値観も違う人間に長い時間をとられるほど暇ではないのです。私は」

「ま、待て……」

 再度、祥子は引き止める。しかし、声は弱弱しい。聖は振り向き、今度は凍てつくような瞳で睨みつける。

「まだ、何か?」

「次は、私の胸をかける。だから、パンツを……」

「お断りします」

「な、何故だッ!」

「ふっ、知れた話を。私には選ぶ権利がある。そして、あなたの胸に価値はない。どれだけ大きな胸であろうと。どれだけ形のよい美乳であろうと。私は貴方という人間に興味を抱いていないのだから」

「な、う、くぅ……」

 俯き、何の考えも思い浮かばない。最早、これまでと祥子が諦めた時。

「なら、私の胸では如何だろうか」

 風紀委員長・風塵 雷子が生徒会室に入ってきた。

「……胸を賭ける云々の話が外に聞こえていたのでだ。興味本位とばかりにのったまで。とはいえ、事情がよくわからぬのでな。ニノ、どういうことだ、一体?」

「……少しばかり時間を頂こう、伏見 聖」

「えぇ、構いませんよ。その間、可愛いお嬢さんと楽しくお喋りをさせて頂くといたしましょう」

「……」

 龍華をおんぶして、隣の客間へ向かう祥子。その後ろに続くポニーテール竹刀少女、雷子を見送る。アヒルはその間、目を虚ろにしながら遠くを見ていた。なんか唐突に始まったおっぱいタッチの時間から空気となるように努力している真っ最中なのである。

「お嬢さん、お名前を伺っても?」

「……ほへぇぇっ!? う、うちぃ!? うちっすか!? ワッツ!? ワァーッツ!?」

 まさか可愛いお嬢さんというのが自分とは思わずアヒルは焦る。焦りすぎてアホになっている。

「ふふっ。自己紹介でもしましょうか、私の名前は伏見 聖。名前でも苗字でもお好きな方でお呼びください」

(えっ? えぇーっ? ま、マジで? 名前呼びオッケー!? まさかの展開!?)

 盛り上がる脳内。しかしながら、計算高い意識高い女は社交辞令をしっかりと読み解く。

「で、では伏見くんと呼んでいいかな」

「えぇ。とても新鮮です」

(アイエエエ!? 間違った? あっ、そっか! お嬢様学校だった! 様づけが普通じゃん、ナァァァニィィィィ!? やっちまったなぁー!)

「ご、ごめんなさい。ごめんなさいごめんなさい。不愉快ですよね、馴れ馴れしいですよね。マジ調子のってすいませんっしたぁーっ!」

「いえいえ、とても嬉しいですよ。くん付けだなんて距離が近い気がします。睡蓮学園では様付けの敬称が普通ですからね。どこか他所他所しい感覚からすれば、とても嬉しいです」

 にこりと微笑。

(あ、アカン。惚れてまうやろーっ! 何なの、この人。私を攻略しにきてるのっ!?)

「それでは貴方のお名前をお伺いしても?」

「ハッ!? す、すいません、自由ヶ丘 あひるって言いますっ! 雌豚でも糞チビでもお好きなようにお呼びください、ブヒィッ」

「ふふっ、ではアヒルさんとお呼びしても?」

「も、勿論でぶひっ!」

 この女、中々にいい根性である。最早、てんぱっているのか、馬鹿にしているのかわからない。

「アヒルさん。直入にお伺いしましょう。ホワイトに所属する気はございませんか?」

「Why?」

「……」

(あ、アカン。何か、地雷を踏んだっぽい)

 細められた両目にびくりと怯える。

「ホワイト……エロのカリスマが立ち上げた組織のことです」

「へ、へぇ……そ、組織にですか」

 アヒルは思う。これって宗教的勧誘的な? 壷買っちゃう的な? ドンペリ追加しちゃう的な奴ですか?

「い、いえ、それはちょっと」

「そうですか……それは残念」

 軽く肩を竦める聖。どうやら、本気ではないらしい。

「しかし、アヒルさんが言い出したのですね」

「え、何がでしょう」

「男子生徒に犯人が居るということを」

「うぇぇっ、何で!?」

 何故、ばれたしっ! と驚愕に目を見開くアヒル。もしかして、お前のせいでばれそうになっているって怒られるの? し、知んないよ、そんなのそっちが悪いんじゃん! と脳内で勝手に怒られ、反論した。

「ふふっ、簡単ですよ。視野の狭い女性にはきっと、わかる筈がありませんから。まるで居ないかのように男子を扱う女性達に思いつく筈もありません。生徒会長も、サロンのお嬢様方も男がそんな行動を起こすなんて想像していなかったでしょう」

「あ、あのぅ、どうして、あんな馬鹿なことを」

「ふ、ふふふっ、あはははっ。馬鹿な、ことですかっ、あははははっ」

 腹を抱えて大笑いする聖。

「失礼。確かに馬鹿げたように見えるかもしれません。いえ、実に馬鹿なことなのでしょう。ですが、革命とは本来、馬鹿げた事なのですよ」

「革命……」

「当たり前の常識、当たり前の感覚。当然の出来事。その常識でしか考えられない。だからこそ、否定し、排他し、規制する」

「……」

「自分達はセックスをして子供を産んだのに、その行為をまるで汚いものかのように扱う。私には微塵も理解できない。そして、理解できない人間が間違っているのか。それを証明する為に――っと、お喋りがすぎましたね」

 余りに真剣な表情にアヒルは聖の顔を見つめた。多分、今のは本音だ、と直感する。この人はきっと、何かを変えたくてこんな行動をしているのだと。

 けれど、馬鹿だとやっぱり思う。

 だって、そうだ。半裸で走り回るなんて間違っている。それは絶対におかしいことだ。そんなことをしてはいけない。子供でもわかる。

「エロのカリスマは間違っている。私は大いに理解できますよ、彼は間違っている。けれども、痛みをなくして改革は出来ない。彼はその馬鹿げた行動に命すら賭けているのでしょう」

「そ、そんなの駄目ですっ!」

「……」

「い、命を賭けるなんて馬鹿ですよっ! もったいないっ! そんなにイケメンなのにっ! あなたは自分の価値をわかっていないですよっ! いい生まれでイケメンで産まれたのに――」

「私にとって、それらは何も価値がない」

「ッ!?」

 ぞっとするほど冷たい顔だった。

「顔がいいとか、生まれがいいとか。そんなものは本当にどうでもいいのです。仮に私が不細工だったのならば、生まれが卑しければ。そんなことを想像しても何の意味もありません。私は何を成したいのか。私は私の魂に従うだけ。私を止める材料にすら成りません」

「……」

「失礼。お忘れください」

「なんで……」

「?」

「なんで、私なんかに声をかけたんですか? 私こそ、そこらに居る有象無象と一緒ですよ? 普通の女子学生ですよ。そりゃあ、お嬢様学校では珍しいかもしれませんが、睡蓮を出ればどこにでも居る平凡なJKです」

「ふふっ」

「な、何がおかしいのですか!」

「あなたはあなたですよ、自由ヶ丘 あひるさん。あなたは他の何者でもない、あなたでしかないのです。そして、私があなたに声をかけた理由ですか……」

「ッ!?」

「勘です。私の勘があなたと宿命うんめいを感じたのです」

「う、運命……ッ」

 もしもこの時、話す順序が逆ならば、アヒルはホワイトという組織に属することに躊躇いなく頷いただろう。そして、今、再度、尋ねてみれば一も二も無く頷くことだろう。

 しかし聖が勧誘することはない。

 伏見 聖にとって、自由ヶ丘 アヒルという存在は対立であるべきなのだ。彼の勘がそう囁いている。

 伏見 聖にとって、この退屈で救いようがなく窮屈な学園生活において、只、唯一にして敵となりうるのが目の前の少女だと理解している。

(見た目はこんなにも小動物のように見えるが――いや、やめておこう。人を見かけで判断するなど、私が最も嫌うこと。自由ヶ丘 アヒル、あなたの名前を私の胸に刻み込みましょう)

 一番、重要なことは只一つだけ。

 自由ヶ丘 アヒルは伏見 聖の好敵手である。


~~~~~~~~~~~~~~

 生徒会室客室。三人の女子が肩身を寄せ合い、話あっていた。

「なるほど、そのような事があったのか……」

「えぇ。姫様、もうお身体は?」

「えぇ。もう大丈夫よ」

「しかし、それならば尚のこと、今、向こうは不味いのではないか?」

「何故かしら、雷子」

「うむ。あの男が只者でないことを理解した。見事に男子生徒を寝返らせたその手腕も賞賛に値する。であるからして、最も警戒するべきは離間の計。お主ら二人が目をかけているという自由ヶ丘 アヒルという少女を一対一で対話させるような好機。果たしてよいのだろうか?」

「も、戻るわよ、祥子!」

「はっ、姫様ッ!」

 慌てて、客室から出る二人。その後ろ姿を見送って雷子は呟く。

「しかし、私の胸を賭けると格好良く登場してみたが、何ともまぁ、おかしなことに。しかしながら――伏見 聖。相手にとって不足なし、か」

 獰猛な笑みを浮かべて二人の後に続き、生徒会室に戻る。三人が目にした光景。それは――目がハートマークになっている自由ヶ丘 アヒルと伏見 聖が談笑する姿であった。

「お、遅かったッ……」

「あ、アヒル様ッ! そのような変態からすぐに離れてくださいっ!」

 ぎゅっとアヒルに抱きつき、ひきずる祥子。

「えっ、急になんなん!? 何が起こったん!?」

 運命と囁かれて有頂天になっていたアヒルは何が起きたのか一向に理解できなかった。

「あひるさん……あなたは私の味方? それともあそこに居るは、破廉恥で卑怯な変態の味方なのかしらっ……?」

 頬をピクピクとひきつらせて、問いただす龍華。

(ひ、ひぇぇぇぇっ!? そ、そうだ、生徒会と変態は敵だった!)

「も、勿論、龍華様の卑しき下僕でございますぅぅぅぅっ。あんな男など知りませんよーぅ」

「ふふふっ、先ほど、あれだけ親交を重ねたのにあひるさん、酷いものです」

「え、えぇぇっ!? 伏見くんと少しお喋りしただけっ! う、うちは生徒会に忠誠を誓った生徒会の犬なんだからねっ! わんわんっ!」

「こうして運命に二人は容易く引き裂かれるわけです」

「ぐ、ぐぎゅぅぅぅっ、きゅーん、きゅーんっ……」

 唸り、犬と化し、逃げ帰るあひる。その様子を心底、楽しそうに聖は見つめるのだからいい性格をしている。

「アヒルさん、信じています。あなたが私の味方である、ということを」

「は、はい。勿論です!」

 龍華に両肩をがっしと掴まれ、念を推されるアヒル。

「信じていますから!」

「は、はいっ。いたっ、痛い!?」

「信じていますからっ!」

「い、痛いっ痛いっ痛い! さ、逆らいません! 痛いッ! だから、離してーっ!」

 離間の計を防ぐ手段はまさかの物理的お話し合いであった。

「そこまでにしておけ、姫。流石に自由ヶ丘が可哀想だ」

「……信じていますからね」

「うぅぅっ、信用されてない……」

 そりゃあ、目をハートマークにしていれば当然である。

「さて、伏見 聖。話は全て、聞かせてもらった。故に聞きたい、貴様に胸を揉ませるという条件でパンツを見せて貰えるのか、ということを」

「……」

 聖は顎に手をあてる。そして、考えるような仕草で。

「お断りします」

「「「なっ!?」」」

 龍華、祥子、雷子は驚きに声を揃えた。

「何故ッ!」

「そもそもがあなた方は甘いのですよ。同じ条件を出せば、再度勝負を受けてもらえる。そんな甘い話があるわけがない」

「……ならば、貴様をこのまま拘束し続けるしかないな」

「ふふっ、風紀委員長。それは通らないな。確たる証拠なくして、生徒の拘留は認められていない。学園の治安を乱した生徒の身柄を拘束する権利は風紀委員には確かに存在しています、生徒手帳にも載っていますからねぇ。しかしながら、私が、いつ、風紀を乱したと? これはあくまでも私の善意によって開かれた審問。あまりにも度が過ぎれば退席する権利はあるでしょう」

「……猪口才な」

「それとも問題でも『起こした』ことにして、懲罰房にいれますか? えぇ、構いませんよ、それでも。そうなれば、私も流石に家を頼らざるを得ません。なぜなら、それはルール違反だから」

「……」

「ルールに従うのならば、私もまたルールに従いましょう。むしろ、ルールの中で私が捕まったのならば、全面的に非を認めましょう。その際に家の力を一切、頼らず、すべての罪を認め、罰を受けることを誓います。どうしますか? あなたには選択する権利がある。ここで罪をでっちあげて、私を調べる権利が」

「……ぐっ」

 雷子は黙らざるを得ない。伏見家が出てくれば、もはやそれは睡蓮だけの問題ではなくなるのだ。それこそ日本規模……いや、世界規模レベルの経済戦争にまで発展する。

 雷子は握る竹刀に力を込める。

「あぁ、暴力に訴えるというのもやめておいた方がよろしいでしょう。あなた程度では私に傷ひとつ、負わせることは出来ません」

 その瞬間、放送室での出来事が甦る。圧倒的なまでの実力差。磨いてきた武が通用する姿が一切、思い浮かべなかった。故に、雷子は引いたのだ、足を。一歩。そして、その一歩は踏み出すにはあまりに大きすぎる一歩であった。

「ふふっ、お分かり頂けて、結構です」

「ぐ、ぐぅぅぅぅっ」

 悔しさのあまりに涙すら浮かび歯噛みする雷子。

「……あなたが黒のVパンを穿いていることはわかっているわッ!」

「ほぅ……面白いことを言いますね。姫宮 龍華」

「……なのに、こうして追い詰めておいて逃げられるなどッ」

「ひとつ、あなた方は思い違いをしている。私がこの下に穿いているのは、黒のVパンではありませんよ」

「う、嘘をつかないでっ!」

「嘘ではありません。まぁ、確かめる術はありません、がね?」

「……エロのカリスマ」

「おや、私のことをそう呼ぶのですか? 私はどう答えろと? 認めろと?」

「……今回は生徒会の負け、よ」

「そうですか」

「今回の事、全て、不問にするッ。だから、貴方が黒のVパンを穿いていると認めなさいッ!」

 どれだけ黒のVパンを推すのだろうか。姫宮 龍華はどこに向かっているのか最早、アヒルにはわからなかった。

「そうは、言われましても、ねぇ」

「本日の放送室ジャックの事件。犯人を追跡することは一切、やめさせます。今後、この一件について新事実が露見されたとしても――罪には問わない。それでも不十分かしら」

 姫宮 龍華は敗北を認める。しかしながら、只では起き上がらない。確証が何としてでも欲しいのだ、姫宮 龍華は。伏見 聖=エロのカリスマであるという等式を最低でも成り立たせたい。

 そうすることによって、今後、伏見 聖の動きに警戒が出来る。

「足りませんね。私はエロのカリスマではありませんから……が、風塵 雷子さん。あなたがブラを賭けると言うのならば、その賭け呑まなくもない」

「「「!?」」」

 三人が驚く。アヒルは「やっぱり、変態だったのだ……」と先ほどまでのトキメキが薄れてきた。

「えぇ、構いません。私がこのズボンを脱ぐ。いいでしょう。ジャージズボンを――」

「くっ、私はブラではない、さらしだ! 賭けになるものか」

「ほぅ、別に聞いてもいないことを答えてくれるとは。ですが、よろしい。風塵 雷子、あなたがさらしを賭けるのならば、ジャージズボンを脱ぎましょう」

「……くっ、痴れものめが! さらしの何が嬉しいというのだっ!」

「ふっ、異なことを。そのさらしを鉢巻にして、勉強に気合いれるもよし。自分のとあるナニに巻きつけてさらしの温かさを感じるのもよし。さらしは決して要らない子ではないのですよ」

 あひるは夢を壊されたような気分だった。あんだけのイケメンがなんつーことをやるのだ、と。詐欺である。とんだ詐欺だ。半裸までは許せた。だが、今の発言はアウトである。そもそも私のことを口説いておきながら、風紀委員長のさらしを求めるとはどういうことか、とやきもちもあった。

「……よかろう、ならば私はサラシを賭けよう。貴殿はズボンを」

「待った!」

 ここでアヒルは声を上げる。

「自由ヶ丘、どうかしたか?」

「え、えっと、風塵先輩っ!」

「うむ、自己紹介をしていなかったな。風塵 雷子だ。好きに呼んでくれ。君の名前は知っている、生徒会にやってきた新たな知恵者だろう。うむ、いい顔つきだ」

 なんか、この人、喋り方ババアくせぇな、とアヒルは口に出せば竹刀が飛んでくるようなことを思った。

「って、そんなことより。その賭け、二の舞ですよっ!」

「むっ?」

「きっと、伏見くんはズボンを脱ぐ、はい、下には半ズボンがありましたーっ! なんてしてくるに決まってますっ!」

「「「はっ!?」」」

 促されてようやく、思い至る。あひる以外の女性陣は聖を一斉に睨み付けた。

「おぉ……怖い、怖い、なんて目を」

「訂正しよう……お前のパンツを見せるのならば――私のさらしを渡そう」

「……」

 瞑目した聖。そして、ニヤリと笑った。

「見事です、あひるさん。よくぞ、私がハーフズボンを穿いているという可能性に気がつきました。やはり、あなたは素晴らしい」

「ッ~~~~うっさい! 変態!」

「おや、先ほどまでとの口調とは違いますね」

「う、うち……私は生徒会の味方なんだから、変態とは仲良くしないのですっ!」

 ここでアヒルは完全に生徒会側についた。そもそも変態の仲間になろうとしていた過去の自分をぶっ飛ばしたくもある。

「よく言ってくれました! あひるさん!」

「えぇ。あひる様のご英断、感謝いたしますっ!」

「自由ヶ丘、君の選択は必ず良き未来を導くよ、きっと」

 三人にチヤホヤされて「えへへへー」とあっさり有頂天になるアヒル。

「ですが、甘い」

 が、雰囲気をぶち壊したのは伏見 聖。

「あなたはサラシを賭けると言った、風塵 雷子。その言葉をまさか今更、取りやめるつもりはないでしょう?」

「む、無論だ……」

「ならば、私に望むものは? いいでしょう、今回に限り、パンツを見せることを誓います」

「……」

 雷子は黙り込む。言葉の綾を探す、が見つからない。しかしながら、この胸によぎる不安は一体、何なのだ、と自分の心に問いかける。

 まるで、負け戦のよう。

 そう、負け戦に挑む。そんな気分だ。雷子はそこまで考えて、首を振る。目の前の変態がVの黒パンを穿いているのは間違いない。幾ら何でも昼に聞いた男の声と全く同じ人間が別人だなんて思えない。

「……自由ヶ丘、いいと思うか?」

「え、えっとぉ……」

 あひるはまさか、確認を求められるとは思わず言葉につまる。えっと、姫宮様達は伏見くんのパンツが見たいわけでしょ? なら、パンツを見せるという言葉に間違いは無い筈。

「伏見くん。仮にパンツが鞄の中にあって、パンツみーせた! とか無しですよ?」

「ふふっ、そんなことはしませんよ」

「そ、そうよね。うん、流石にそれはないかー」

「ですが、その案は面白い。いつか、使うといたしましょう」

「……」

 聖の子供っぽい一面を見て一瞬ほんわかしたが、変態であることを思い出す。変態、駄目絶対! と心に誓い、再度考える。

(う、うん。うちじゃ、これ以上無理!)

「だ、大丈夫かと……」

「そ、そうか。いや、何。なんというか、まるで負け戦のような雰囲気でな……しかし、自由ヶ丘が言うのなら大丈夫なのだろう……うん」

(あ、さりげなく、うちに責任転嫁しやがった、この人!)

 アヒルは責任という言葉が嫌いである。余計な責任は背負いたくない派閥である。出来れば人の上に立つより、言われたことだけをこなす簡単なお仕事がいいまである。

「では、ここに再び賭けは成立した。あなたはさらしを。私はパンツを見せる。そして、私には全く関係ありませんが、エロのカリスマが行った事件はこの賭けが成立した瞬間、無かったものとなる。いいですね?」

「えぇ」

「あぁ」

 龍華と雷子は頷く。

「刮目なさいッ! これが私のパンツです!」

 伏見 聖がパンツを出した瞬間。一つの真実が浮かびあがる。

 離間計。

 離間計の存在が生徒会長の姫宮 龍華には理解できた。また二ノ宮 祥子と風塵 雷子にも。正しく、それは行われたのだ。

 伏見 聖のパンツの色はストライプッ! ストライプのトランクスッ! 

 大倉 大仁は一切の虚偽を申していなかったッ! つまり、大倉は寝返ってなどいなかったのだッ!

「そ、そんな、ありえないわ……」

「こ、こんなことがっ」

「ば、馬鹿なッ!」

 三者三様。しかし、胸中は揃っていた。驚愕、そして認められない、と。そんなわけがない、と。

「さて、これでもう気が済んだでしょう。あまり、この恰好で女性と接したくないので、ズボンを履かせていただきますね」

 伏見 聖が急いで着替えようとする。

 違和感。

 アヒルには違和感を感じた。

「ま、待って、伏見くんッ!」

「ッ!? な、なんでしょうか、あひるさん」

「……」

 じぃーっと伏見 聖という男を眺めるあひる。いい足である。よく鍛えられている。太ももで挟まれたい。眼福、眼福……と、違和感。

(何がおかしいの……?)

 違和感がある筈である。何かがおかしい。伏見 聖は男性である。すね毛? なくはないが、理想的バランスのすね毛。全然あり。オッケー、むしろ、収集したいまである。なら、何がおかしいの? おかしい点……てん、てん……テント?

(あっ?)

 この時、アヒルに電撃走る……ッ! ちなみに本日生徒会室では三回も電撃が迸っている、最早危険地帯。

「あああああああああああああっ!」

 気づくッ! アヒル。上向き! トランクスにも関わらず、矢印は上! 有り得ないッ! 

「伏見くんッ! トランクスの下に一体、何を履いているのッ!」

「ッ!?!?!?!?」

 この日、初めて伏見 聖に冷や汗が流れた。

「おかしいのよッ! 普通、トランクスを履いていれば下! 重力にさからわないもっこり! けど、あなたのもっこりは上向きなのよッ!」

「……くっ」

 苦々しい表情を浮かべる伏見 聖。

 値千金……まさかの発見ッ……! 自由ヶ丘 アヒル、指摘ッ! 値千金の指摘であるッ! 

「……」

「脱ぎなさい」

「断る」

「脱ぎなさいッ!」

「断るッッ!」

 あひるの脱げという脅しに聖は焦ったような声を出す。あの伏見 聖が追い詰められている……? 好機ッ! 千載一遇ッ! 敗北の中に見つけた一筋の光明ッ! 

「伏見 聖、生徒会長として告げます……そのパンツッ! 脱ぎなさいッ!」

「お断りしますっ! 脱ぐ意味がわからない! 何故、脱がなければならないッ!」

「あなたは下着の下に下着を穿くという異様な行動を取っているわ……ならば、疑うのも道理! ここまで明確に怪しい点があるにも関わらず、調べることを拒否するというのは、あなたに黙秘すべき事項があると考えますッ! 故に、あなたは黒。そう、下着のVパンのようにエロのカリスマである可能性は真っ黒と考えさせて頂きますっ!」

「ッ!?」

 姫宮 龍華、会心のドヤ顔ッ……

「あなたの下着が黒のVパンで無かったのならばッ! 私はブラをさしあげましょうッ! さぁ、賭けなさいッ! 今更、賭けないつもりはないでしょう。下着は既に見せているッ! 見せる、見せないの話ではない。賭けは強制よッ!」

「……ッ! それでは足りないっ。賭けてもらうのは貴方たち四人の上下の下着だっ! パンツとブラ! 全てを賭けて貰う! オールイン、それが認められなければ、私は断じてトランクスを脱ぐことをしないッ! 全てを賭けなければ対等では……ないッ!」

「ッ!? よくも、まぁ、小細工を! 無駄よ! 私達、生徒会役員は固い絆で結ばれているわッ! あなたはその条件を口にすることで、誰か一人でも降りて不和を招くつもりだったのでしょうッ……けど、無駄よッ! 私達の絆は変態なんかに負けないのッ!」

「そうだッ! 姫様の仰る通り!」

「私達は変態なんかに負けないッ!」

(えっ、うちのも? なんで? えっ、強制参加……?)

 アヒル、ここに来て日和る。参加したくない。けれども言い出せるわけもない。まさに痛恨、連帯責任、それどころか指摘した本人であるから自業自得ですらある。

「そうよね、あひるさん!」

「あひる様!」

「自由ヶ丘」

「お、おぅふ、え、えぇ……えぇい。そうよ、伏見くん! 私達は変態なんかに負けないのっ!」

 何だか、色々とフラグを立てている生徒会役員達。

「……ッ! よろしい、ならば最後の賭けだ! あなた達はオールイン! そして、私はトランクスを脱ぐッ!」

「えぇ! 黒のVパンを拝んでやるわッ! この変態ッ! 私達は変体なんかに負けないッ!」

 指をビシィと突きつけて、自由ヶ丘 アヒルは伏見 聖に言い放つ。

「いざ――」

「「勝負ッ!」」

 布が見える。穿いていたッ! 

 伏見 聖は穿いていたのだ……ッ。下着の中にッ! 下着をッ! まさに異端ッ……異端の感性ッ……そして、またッ……自由ヶ丘 あひるも異端ッ……奇策を見抜くッ……



 伏見家令息長男。成績は学年一位。春の体育テストは高校レベルを大幅に超え、新記録を樹立。IQはおよそ一六〇を超えると噂され、余りの美貌に歩く姿を見るためだけに行列が出来るほど、声をかけられた女子生徒は吐息だけで失神。ソフトボールをすればウインドミルで爽やかな風が起きる。バスケットをすればゴール下にいるだけで、相手のドリブルを遠距離から阻止。学食で注文を頼めば翌日の同じメニューが百倍の値段をつけられる。陰口を叩こうとした女子生徒が悪いところを思い浮かぶことができずにひたすら褒め称えることに。イケメンコンテストで登録していないにも関わらず優勝トロフィーが速達で贈られてくる。汗をかき、滴り落ちた場所から花が咲く。水も滴るいい男すぎて、常にずぶぬれらしい。中学時代、もてすぎて女子生徒の抗争がやくざの縄張りで起き、やくざが助けを求めた。女子校の学園祭に行った時、女子校が物理的に崩壊した。水泳の授業にて送られた黄色い声援が太平洋を超え、ブラジルまで届いた。前に人がいて、くしゃみをしそうになり、ハンカチで隠してくしゃみをしようとしたらハンカチを強奪された上に、女性の方から顔面に向けてくしゃみをするように両手で固定された。タクシーを止めようと手をあげたら、タクシーじゃない普通乗用車が止まりはじめて玉突き事故を起こす。恋人という枠が高値すぎて、家族ならと思った女性が大量にわき、自称姉と自称妹が一万人規模で存在する。非公式ファンクラブ会員数が八桁。書店で面白そうな本を手にとるたびにミリオンセラーが誕生。書いた本人じゃないのに売れるあまり作家が印税を勝手に支払う。得意のピアノを弾けば、戦争が止まり、ピアノが止めば戦争が再開される。イケメンって何なのかというディベートでイケメンは伏見 聖と言えばぐうの音の出ないほどの正論と認められた。悪漢に襲われている女性を助けたら女性に襲われた。世界の中心で愛を叫ばずとも、伏見 聖が愛を叫べば、そこが世界の中心になるとされている。ノストラダムスやこれまでの様々な予言師が伏見 聖が没する時、世界が終わると予言した。伏見 聖が「私が神だ」とふざけて言って見れば周りの全員が「うん、知ってた」と即レス。

 そんな伏見 聖はトランクスの下に下着を穿いていた! 自由ヶ丘 アヒルの指摘した通りにッ! トランクスの下に、更に下着を穿いていたのだッ!

(勝った! 第三部、完――!)

 自由ヶ丘 アヒル。ここに盛大にフラグを建てる。
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