第46話 だから ひみつ
二日連続の、自主休校という名のサボリ。
イン、屋上。
となりで、横になった未羽がとてもいとおしかった。
「奈緒はどうして昨日休んだの」
「う……、だ、だるかったから?」
つめたい風がむき出しの足を通りすぎて、体温をうばっていく。
くるかくるかとは思っていたけれど、突然ふったその質問に思いのほか動揺してしまった。
疑問系で返事をした自分に、胸の中で頭をかかえる。
ここは、上手にウソをつかなきゃいけないのに。
「そ、うそう! 未羽の幼なじみってどんなひと?」
幼なじみイコール、ナツキ。
わかりきっていることを、未羽にぶつけてみた。
あたしはナツキなんて知らないし、知らないふりを貫き通す。
でないと、この秘密がどこから知られてしまうかわからない。
「……昔はすごく良かったの。小さい頃は兄妹みたいなカンケイだった」
痛みに耐えるように、口を開いた未羽。
その一瞬の間があまりにも含みを持っていて、あたしは口を挟むこともできなかった。
あたしの知っているナツキと未羽の幼なじみとしてのナツキ。
なにがどう違うんだろう。
「中学くらいからおかしくなって、周りにオンナノコはたえなかったし、あたしに対しての態度がつめたくなった。すごく優しいひとだったのに」
消え入るようなその声。
となりを見れば、彼女は目を伏せていた。
すごく優しいひとだった。
未羽はそういうけれどナツキは今だって優しいまま。
つめたくなったなんて信じられない。
「秘密を脅しに使うようなひとじゃなかった。なのに……」
伏せたままの目から涙をこぼした未羽のおでこに手を伸ばした。
小さな泣き声が、胸に突き刺さる。
未羽をしあわせにしてくれると約束したのに。
どうして?
ナツキは、そんなことをするようなひとじゃない。
『俺はある仕掛けをする』
『仕掛け?』
『それは、企業秘密で』
(――仕掛け、って)
昨日の会話が思い出されて、そして納得がいった。
ナツキは、何かを仕掛けたんだ。
未羽を本気で手に入れるために。
だけど、わからないのはその秘密。
未羽を秘密とはいったいなんだろう。
それは、あたしにもいえないこと?
「……み、はねが秘密にしてたことって、」
なに? と最後まではいえなかった。
「ん?」
「なんでもない」
あたしにも、いえないことがある。
いいたくて、でも未羽を失うのがこわいからいわない。
(――あたしね、未羽のお兄さんがすきなんだよ)
未羽のやわらかい髪をなでながら、そう胸の中でつぶやいた。
それは、あたしだけの秘密。
|