第33話 ひみつのはなぞの 1
「アンタが、三波奈緒か!」
事態も事情も飲み込めず、揺さぶられる肩に痛みが走って顔をしかめた。
そんなあたしの様子に気がついたのか、神原夏希と名乗る彼は我に返ったように肩から手を離してくれた。
けれど。
食い入るような視線は外されることなく、あたしをのぞき込む。
なにがなんだかまったくわからない。
そんなに有名人になった覚えもないのに。
「ナツキくん、どういうこと?」
肩にはまだ痛みが残っていて、食い込んだ指のあとをさすりながらあたしは最初の疑問を口にした。
彼はてのひらをあたしにむけて、深呼吸をし始めた。
どうやら、頭の中で整理をつけているらしかった。
「まず、奈緒。俺のことはナツキでいいから」
「はあ」
あのひととまったく同じコトをいう彼は、あのひととまったく違う顔であたしに笑いかける。
つめたいベンチで向かい合うあたしたちを照らす外灯と月明かり。
風はこんなにも冬のにおいをさせて、髪を揺らす。
ナツキの茶色い前髪がその瞳を隠して、そのたびに彼は犬のように頭を振った。
まだ、多少なりとも動揺しているらしい。
「で、どういうこと?」
口火を切ったのはあたしの方で。
そんなあたしの声を聞いてなのか何なのか、大きく全身を使ってガッツボーズをとった。
「よっしゃー!! 俺、マジでツイてる!」
その叫びは夜には似つかわしくなく。
今が一体何時なのかわからないけれど、あまりの声の大きさに耳を塞いでしまった。
ご近所の迷惑確定。
「ちょ、近所迷惑だから。もう少し小さな声で話して」
「あ、ごめんごめん。だって、まさかホントに会えると思ってなかったんだよ。ウンメイの出会いだな、マジでさ」
ひとりで盛り上がっている彼をよそに、ウンメイという言葉がこの胸をひどく痛めつけた。
仕組まれたウンメイにハメられたばかりのあたしには、残酷な響きでしかなかった。
ナツキとのウンメイがホンモノなら。
あたしと彼との出会いはいったいなんだったのだろう。
「でも、これで奈緒が泣いているわけがわかった。アイツだろ。ヒロのせいだろ」
風が、強く吹きつけたような気がした。
起きたざわめきは、木々を、星を、あたしを揺らして音をなす。
どうして。
どうして、ナツキの口からあのひとの名前が出てくるの。
「ど、うして」
「奈緒は、アイツから俺のことは聞いてないんだな。じゃあ、何かがあったわけだ。ヒロの予定外のことが。そうだろ?」
次々と、預言者のように彼はあたしの心をあばいていく。
予定外の出来事。
それはあたしが、あのひとの計画を知ってしまったこと。
それをどうして。
「俺は、ずっと奈緒を探してた。ヒロの計画をぶち壊すために」
彼のこぶしがベンチを震えさせた。
叩きつける音には、いったいどんな感情が込められているのだろう。
痛々しい音は、あたしを揺らして花をふるわせた。
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