第22話 待ち人来たりて
息を吸い込んだ。
吐き出す前に、マフラーを首に巻いた。
残っていた匂いに痛む胸を、目を伏せてこらえた。
「ごめん」
「そんなに待ってないですよ」
時計の針は八時を差していた。
待ち時間からすでに四時間経過。
考えることがたくさんあって、そんなに長いとは感じなかった。
いま、上手く笑えているかどうか。
それだけが不安だった。
「ヘーキです」
駅のベンチから立ち上がると、待ち構えていたように手が伸ばされた。
ひやりとした手がおでこにあてられて、思わず目を閉じた。
「ウソだな。すっかり冷えているじゃないか」
手はおでこから頬をなでて、あたしの手を握った。
感覚は待っている間にマヒしてしまっていて、上手く動かすことが出来ない。
「へ、平気です、よ」
「どこかいこう。何か食べたいものとかある?」
握られた手をそのまま引っ張られて歩き出した。
あたしより大きなてのひら。
握るその力。
相変わらずつめたい手。
どうして、このひとはこんなことをするんだろう。
どんな目的があったんだろう。
気がついてしまった。
もう、目をそらすことは出来ない。
「あったかいもの買って、あっちの公園に行きませんか。この間見つけたんですよ」
立ち止まって、彼の目を見た。
迷宮の出口はすぐそこに。
あたしはあなたのすべてが、知りたい。
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