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ドラマチック・ラヴァーズ
作:梶原ちな



第11話 落下するウンメイ



 

 首に巻きつけたマフラーから、自分のものではないにおいがした。
 そんなに寒いわけではないのに、深く顔をうずめた。 
 彼の顔が、浮かんで離れない。




「……マフラー、返さなきゃ」

 終業、チャイム、清掃、放課後。
 未羽は先に帰ってしまったから、たったひとり電車のなか。
 ふいに漏れてしまった考え事に、周りを見渡すが誰も気がついていないようだった。
 あぶない。はずかしい。

 スピードが落ちていって、窓の外の景色がゆったりと流れる。
 耳に響くアナウンスと、乾いた音。
 蒸気を吐き出したかのように開いたドアには群れる人の波。

 大人も子どもも関係ない。
 我先にと、靴音が鳴る。
 降車は混雑するから、いちばん最後に降りる。
 それがあたしのポリシーだ。

 ぼんやりとしていたらドアが閉まる音が耳を突いて、あわてて降りた。
 発車した車両を横目で追う。
 流れる窓の向こう側に、人影が見えた。

 向かいのホームにだって電車を待つ人くらいだろう。
 だけど、どうしてか足を止めた。

 マフラーが風に舞う。
 わずかに、彼のにおいがした。

 最後尾の車両が過ぎ去って強い風を起こす。
 舞い上がる髪の毛が視界を塞いだ。
 乱れに乱れた髪を手グシでほどけば、開けた視界の向こうに目が釘付けになった。

(――ウソ)

 夕暮れ。
 混雑する駅のホーム。
 向かい側で、笑うのは。

 待ち合わせなんてしなかった。
 マフラーを返すために、待ち伏せようとは考えていたけれど。

 実は、少し会いたかった。
 本当は、とても会いたかった。
 彼のことばかり考えていた。

『じゃ、これからだね』

 未羽の甘ったるい声が、反芻する。

 会いたかった。
 そうしたら、目の前にいた。

 顔が熱かった。
 胸が締め付けられた。
 ドラマチックな出来事なんて、起こらないと思っていた。

 だけど、いま。
 この瞬間、起きていることは?












ドラマチック完結記念
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