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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢トレーディングカードゲーム

作者: (。・x・)

悪役令嬢がイケメンに婚約破棄されるお話が流行っていると聞いて書きました。

でも、何か違うような気がしなくもない。

「よく来てくれた。

 今日、あなたを呼んだ理由はお分かりでしょう。

 僕は、あなたとの婚約を破棄したい。

 これは弁護士に作成してもらった示談書だ」

「そんな……何故ですの?

 わたくしの何処に不満がありまして!?」

「抜け抜けと……僕を騙していたのはあなたの方ではないか!」


 わたくしが乙女ゲー世界に転生して十六年。

 お家断絶の未来を変える為、主人公さんのフラグをへし折る事に人生を捧げてきました。

 苦労の末にようやく手に入れた皇太子婦人と言う未来。

 ですのに、直前で婚約破棄だなんて、信じられませんわ。


「あぁ、わたくしはこれからどうすれば」

「諦めるのはまだ早いですぞ。

 お嬢様、手札をよくご覧ください」

「手札? これは……」


 いつの間にか、わたくしの左手には五枚のカードが握られてましたわ。

 これはトレーディングカードゲームですわね。

 前世で日本刀を擬人(イケメン)化したカードゲームにハマっていた時期がありますわ。

 初めて見るカードですけど、前世の知識を使えば、なんとかなりそうですわね。


「分かりましたわ。セバス、助言に感謝いたします!」

「えっ? なにそのカード?

 さっきまで持ってなかったよね? 手品?」

「わたくしは手札から対抗魔法(カウンターマジック)《無効化》を発動いたしますわ!」

「流石です! お嬢様!」


 わたくしの発動させた魔法カードの能力で、王子の持つ示談書は炎に包まれましたわ。

 やりましたわ。

 これで婚約破棄は無効ですわね!


「あっちぃ! 示談書が燃えてるっ!? なんで!?」

「《無効化》は対戦相手の魔法を打ち消し、ライフに一点のダメージを与える対抗魔法。

 よって示談書は灰となり、火傷により王子のライフは減少します」

「えっ? 魔法? なんで彼女が魔法を使えるの!? ライフって何!?

 てかさ……君、メイドだよね?」

「王子。私の事は審判(ジャッジ)とお呼びください」

「ジャッジって何?」

「カードゲームの対戦において、絶対なる者の事です」

「いや、だから君メイドだよね?

 それが絶対なる者っておかしくない?

 ひょっとして中二病?」

「王子の手札に現在使用できる物はありません。

 ターンを終了しましょう」

「ねぇ、話聞いてる!?」


 王子は動揺しているようですわね。

 このまま一気に畳み掛けますわ!


「どちらかのライフがなくなるまで対戦は続きます。

 お嬢様のターンです」

「わたくしのターン! |山札から一枚引きますわ《ドロー》!

 土地カードをセット! そして、手札から《ゴブリン》を召喚いたしますわ!」


 棍棒を持ったゴブリンが、わたくしと王子の間に現れましたわ。


「ちょっ! お城の中にゴブリンが! 兵士、兵士を呼べー!」

「それは出来ません。

 召喚が出来るのは自分のターンのメインフェイズのみです。

 今は王子のターンではありません。諦めて下さい」

「諦めろって!? 無理だよ!

 だって、お城の中にモンスターが現れたんだよ!」

「《ゴブリン》で攻撃(アタック)ですわ!」

「ゴブゴブー!」

「痛っ! 殴った! ゴブリンが僕を殴ったよ!」


 ゴブリンの振り下ろした棍棒が王子の顔面にヒットしましたわ。

 あぁ、王子の美しい顔が血まみれに……。

 お許し下さいませ。

 これもひとつの愛の形なのです。


「さぁ、王子のターンです。

 まず、山札から一枚引いて下さい」

「こ、これで兵士を呼べるんだな」

「はい。手札から《兵士》のカードを選び、召喚して下さい。

 ただし、ユニットの召喚にはコストが必要となります」

「コスト? 給料ならパパが毎月払っているぞ」

「コストは土地カードを横向きに(レスト)する事で発生します。

 土地カードは一ターンに一枚、手札から戦場(フィールド)に配置できます」

「えっ? 土地!?

 兵士の癖に土地を要求するの? 何様!?」

「コストを支払わなければ、王子がゴブリンに殴り殺されるだけです」

「わ、分かったよ。命には変えられない」


 王子のもとに兵士が一人やって来ましたわ。

 逞しい肉体に惚れ惚れしちゃいそう。

 ですが、お顔はザンネンですわね。


「よし、兵士よ! ゴブリンに攻撃するのだ!」

「それは出来ません」

「またかよっ! 次は何なんだよ!?」

「ユニットは召喚されたターンには攻撃出来ません」

「僕、さっきゴブリンに殴られたんだけど……」

「ゴブリンは召喚されたターンに攻撃可能な《速攻》と言う種族特性を持っています」

「それって卑怯じゃね!?」

「卑怯ではありません。そう言うルールです。

 これ以上、王子に出来る事はありません。

 ターンを終了して下さい」


 王子は兵士(ブサイク)を召喚しただけで、ターンを終了いたしましたわ。

 これはチャンスですわね。


「わたくしのターンですわ!

 わたくしは手札からもう一体の《ゴブリン》を召喚!

 そして設置魔法(エンチャントマジック)《ゴブサーの姫》を設置いたしますわ!

 二体の《ゴブリン》で攻撃ですわよ!」

「ちょっ! またゴブリンがっ! 助けて!」

「相手の攻撃宣言時には、戦場に居るユニットで防御をする事が可能です」

「それだ! 兵士よ、僕を守れ!」

「ハッ!」

「よ、よし……これで、へぶっ!」


 やりましたわ。

 ゴブリンの棍棒が王子の脳天を直撃しましたわ。


「な、なんで? 防御できるんじゃなかったの?」

「攻撃してきたゴブリンは二体です。

 兵士は一体目の攻撃を受けて死にました。

 よって、二体目の攻撃は王子に命中します」

「兵士もう死んだの!? よわっ!」

「ブサイクは罪ですの。ターンを終了いたしますわ」


 王子のライフは残り五点。

 対するわたくしのライフはノーダメージの十点。

 勝負は決まりましたわね。


「ぼ、僕のターン……あれ?

 これは、さっき燃えて灰になった筈じゃ?」

「同名のカードはデッキに四枚まで入れられます。

 それは先ほど燃えた物とは別物です」

「えっ? 示談書って四枚もあったの?

 一枚しか作ってもらった記憶が無いんだけど!?」

「世界に一枚しか存在しないカードが増殖するのはカードゲーム界(この世界)では常識です」

「なにそれ怖い!? でも、ラッキー!

 僕は手札から《婚約破棄の示談書》を使用する!」

「そんなっ!?」


 わたくしの手札には対抗魔法はありません。

 なんて事でしょう。

 一度は阻止した筈の婚約破棄が成立してしまいましたわ。

 あぁ……胸が苦しい。


「更に僕を守る捨て駒として《兵士》を二体召喚しておく。

 ははははは。僕の勝ちのようだな」

「ま、まだですわ……まだ、わたくしのライフは残ってますのよ。

 わたくしのターン、ドローですわ」


 何故でしょう。

 山札に触れた右手がとても熱く感じますわ。


「何あれ? 彼女の右手が光ってるんだけど!?」

「本来、右手とは切り札となる強力なカードを引く時には光るものです。

 これもカードゲーム界ではよくある事です。

 いちいち気にしてたらハゲますよ」

「よくあるの!?」

「よそ見をしている場合ではありませんよ。

 メインフェイズ開始時、《ゴブサーの姫》の効果が発動して、戦場のゴブリンの数が二倍になります」

「ごぶりんっ!」

「ごっぶごっぶごーっ!」

「うわぁっ! ゴブリンが四体に!

 嫌だっ! もう殴られたくないっ!」

「ご安心下さいませ。ゴブリンで攻撃はいたしませんわ」


 四体のゴブリンで攻撃しても二体は兵士に防がれますわ。

 そうなると与えられるダメージは四点。

 これでは王子のライフを削りきれませんわ。


「そうか。では、僕の事は諦めてくれるんだね!」

「はい。わたくし、アナタ様の事はもう諦めましたわ。

 ですから━━わたくしは手札から《ダークアイズ・レイジョー・ドラゴン》を召喚!」

 わたくしは先ほど山札から引いたばかりの巨大なドラゴンを召喚いたしましたわ。

 ドラゴンの頭がぶつかり、天井がぼろぼろと崩れ落ちてまいりました。

 その巨体は、この大きなお城でも収容するには少々狭いようですわね。


「わわわわっ! ド、ドラゴン!?

 田舎の山奥にしか生息しないと言う伝説の生き物が!

 に、逃げないと……殺されるっ!」

「落ち着いて下さい。

 先ほども申し上げましたが、《速攻》を持たないユニットは召喚されたターンには攻撃出来ません。

 それはドラゴンであっても例外ではありません」

「そ、そうか!」

「ですが……あのような大型のモンスターは特殊な能力を保持している事が多いと聞きます」

「ジャッジのおっしゃる通りですわ!

 わたくしは《ダークアイズ・レイジョー・ドラゴン》の起動能力を発動!

 自分の戦場に居る他のユニットを生贄にしますわ」

「ゴブリンがドラゴンに喰われた!? 仲間割れか!

 いいぞ、もっとやれ!」

「そして一体の生贄につき、二点のダメージを相手プレイヤーに与えますの。

 DANZAIのレイジョー・ストリーム! ですわ!」

「あっちっ! 城がっ! 燃えっ!」


 ドラゴンの吐く灼熱のブレスが部屋中を覆い尽くしましたわ。

 王子の姿も見えなくなりましたわね。


「お嬢様、ここは危険です。早々に避難を致しましょう」

「分かりましたわ」

「私もご一緒します」


 執事のセバスと共に崩れゆくお城から脱出いたしましたわ。

 ジャッジをしていたメイドも一緒ですわね。


「あら? 王子はよろしいのかしら?」

「王子は既に息絶えました。

 敗者は死ぬ。これもカードゲーム界の常識ですから」

「そう……なら、仕方がありませんわね」

「心中、お察し申し上げます」

「わたくしは悪役令嬢ですのよ?

 この程度で凹んだりいたしませんわ。

 さあ、新しいお金持ちのイケメンを探しに行きますわよ!」

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[良い点] 今気づいたので読みました これはひどい(褒め言葉 [一言] <取り巻きの援護> 腰ぎんちゃくを召喚する、味方のアタックの際にダメージを増加 <これが証拠だ!> 相手の悪行を暴き立てる、…
[一言] マジック・ザ・ギャザリング……的なルールなんでしょうか? うーん、TCGって一回やってみたいなあと思いつつ結構お金かかるんだよなあと思って断念するんですよねえ……あいはぶのーまにーなう……(…
[一言] そのうちゴブリンと相手フィールドの兵士を融合したり ゴブリンにオークをチューニ◯グしたり ゴブリン二体でオー◯ーレイしたりするのかもしれない(確信)
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