生徒会のお仕事 act1-1
長い黒髪を揺らしながら、日向葵は廊下を歩いていく。
心なしか歩調は早い。
しばらく歩き、扉の前で立ち止まる。
プレートには保健室の文字。
髪止め用の白いりぼんがずれてないかを確認し、スカートの裾を正す。
そして、精一杯の笑顔を浮かべ、扉を開く。
「失礼します」
中を見渡すが、誰もいない。
「葵」
名前を呼ばれ、葵は走り出したい気持を抑えながらベッドへ向かう。
「久しぶり、お兄ちゃん」
「ああ」
ベッドには、葵に似た色白の青年がいた。
日向龍巳。葵の兄だ。
「先生は?」
「さあ。俺も、今目が覚めたからな」
「そうなんだ。…具合、どう?」
心配そうな表情をする葵。
だが龍巳は優しく微笑み、
「大丈夫。もう平気だ」
と、葵の頭をやんわりとなでる。
「……うん」
葵も微笑み、照れくさそうに下を向いた。
「生徒会、選ばれたんだって?」
葵はびっくりして顔をあげる。
龍巳は穏やかな表情だ。
「ど、どうして知ってるの?」
葵はひどく慌てている。
「おせっかいな奴がいてな。教えてくれた」
それを聞くと、葵は肩を落としうつ向いてしまった。
「あの、ごめんなさい…。私……」
「葵」
葵の言葉をさえぎるように龍巳が名前を呼ぶ。
葵がゆっくりと顔をあげると、そこにはいつもと変わらない、微笑みを浮かべた兄がいた。
「噂なんか気にするな。葵は、葵が出来ることを一生懸命やればいいんだ。それ以上が出来るなら挑戦すればいいし、出来ないならあきらめればいい。周りが何て言おうが、葵が頑張ったならそれでいいんだよ」
そう言って、もう一度葵の頭を優しくなでる。
「うん……」
葵は恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにうなずいた。
その時、葵が腕に付けている機械から小さなアラームが鳴った。
「あ! もうこんな時間だ!」
「生徒会か?」
「うん。最初の集まりがあるの。じゃあ、私もう行くね」
慌ただしく葵は走り出す。
「気を付けてな」
「うん! ありがと、お兄ちゃん」
保健室の扉を開き、葵は廊下を駆けていった。
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