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正義の学園
作:枕源氏



妖霊万来 「黒蛇」その六


 幽介は立ち止まり、やおらに目を閉じる。そしてほんの少しだけ腕を広げ、そのまま動かなくなった。

「あの、幽介さんは一体何を?」
「んー、たぶん結界を張ってるんだと思うよー。いつもそうしてるし」

 結界とは、主には特定の存在の侵入を阻むためにつくられるものである。鳥居などがその一例だ。

「結界? でも、幽介さんはただ立ってるだけに見えますけど……」

 結界に効力を持たせるためには、やはり念入りな準備が必要になってくる。しかし、結界を張っているという幽介は立ち尽くしたまま動いてはいない。

「結界の張り方も人それぞれなんだよ。あ、そろそろかな」
「え? ……!?」

 立ち尽くす幽介の体から、淡い光が立ち上り始める。煙のようにゆらゆらと揺れながら、じわじわと広がっている。

「あれは……まさか、そんな……」

 やいこは驚きを隠せない。

 確かに人にはそれぞれオーラが見えることがある。だがそれは見ようとしなければ見れるものではない。霊視、あるいは特殊な環境下でもなければ見ることはできない。

 そのはずのものが、肉眼で見えているのだ。

 それは、幽介が尋常ではない質と量の霊力を放出しているということに他ならない。

「瑠璃様、まさか幽介さんは霊力の放出をしているのですか?」
「うん、そうだねー。ゆうくんは霊媒とかの道具を使いたがらないから。自分の霊力だけで結界とかをつくっちゃうんだよ」
「そんな! 霊力と魔力は似ているようで、全然違うものなのですよ!? 下手をすれば命にかかわることなのに!」

 一般的には霊力と魔力は同一視されがちだ。しかし、性質は似ていてもその根本はまるで違う。

 魔力と霊力の元は魂であることに変わりはない。だが、魔力は魂が生み出す余剰エネルギーであるのに対し、霊力は魂を肉体に留めるためのエネルギー。それはつまり、魔力が尽きるのは極限の疲労と心労となり、霊力の枯渇は死を意味するということなのだ。

 慌てるやいことは対照的に、るりは平然としている。

「あははー。これで命の危険があったら、ゆうくん百万回は死んでるかもねー」
「……もしかして、いつもこのようなことを?」
「うん」

 あっさりとうなずくるりに、やいこは軽いめまいをおぼえる。それほどまでに幽介の行為は無茶苦茶なのだ。

「ゆうくんは、無限の霊力を持ってるらしいから」
「無限の、霊力……」

 魂をつなぎとめるエネルギーが、無限。それは一体何を意味するのだろうか。

 しかしやいこはそのことよりも、その時のるりの様子が気になっていた。

 普段は見せない、複雑な表情。悲しんでいるのか、怒っているのか。笑顔しか見せないはずの少女の、悲痛な顔。

 なぜるりがそんな表情をしたのか、やいこにはわからなかった。












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